CINEMA STUDIO28

2013-10-17

Funny face

 
美しい女優のクラシック映画を全部デジタルリマスタ版で上映してくれる素敵企画スクリーン・ビューティーズ、第1弾はオードリー!秋、観たい映画だらけで時間配分困ってるけど、見逃すわけにはいかない。監督特集ででビリー・ワイルダーものが上映されたり、午前10時の映画祭でローマの休日がかかったりしてたけど、案外オードリー特集ってないから3本といえどもまとめて観られる機会は貴重。
 
今回、一番スクリーンで観て良かった!のが断然「パリの恋人」。リチャード・アヴェドン監修の50年代後半のモードな世界、監督はスタンリー・ドーネン、一部の音楽はガーシュウィンによるもの。当時モデルと結婚してたアヴェドンの実体験が下敷きになった脚本で、アヴェドンの役はアステア!実生活でアヴェドンの奥さんだったモデルは、最初の撮影のシーンで頭からっぽモデルを演じてる人だったかな。
 
 
これだけ豪華な布陣に包囲され、オードリーは彼女の十八番である「年上の男に導かれて大変身する私」を歌ありダンスありで演じて相変わらずキュートなのだけど、いかんせんストーリーが単調で家でDVDで観ているといつも途中で飽きちゃうからあまり期待していなかったけど、冒頭から鮮やかな色の洪水で目がパカッと開いた。映画はやっぱり映画館で観るものだな。デジタルリマスタばんざい!
 
 
そしてDVDで観ていると、パリのカフェ(フロールが舞台?)でオードリーが踊る変な実存主義ダンス・・映画では実存主義は共感主義、サルトルはフロストル教授と名前がもじられている・・しか頭に残らない。オードリーが相手役にアステアを指名して成立したキャスティングで、アステアが憧れの存在だったかららしいのだけど、アステアの前であのダンス踊るのは相当緊張しただろうな。
 
 
そんな実存主義ダンスしかいつも頭に残らない。と思いきや、この映画は大画面で観るとすっかりケイ・トンプソン映画なのであった。ダイアナ・ヴリーランドがモデルと言われるファッション誌の編集長を演じる彼女はそもそもMGMのボイストレーナーとしてアステアはじめ数多のスターに歌唱指導してきた人で、ダンスも演技もうまく華もあるのに、どうして映画にほとんど出ていないのだろう。「パリの恋人」が豪華なのに映画としては弱く感じられてしまうのは、脇を豪華に固めすぎてしまったが故に中心にいるオードリーが色あせて見えてしまったからなのではないかしらん。この映画に限っては冒頭のthink pink! のシーンやら、アステア&ケイ・トンプソンのシーンやら、オードリーが出ていない場面のほうが時間が過ぎるのが何倍速も早く感じられた。
 
 
どの曲も良いけど、ケイ・トンプソン&オードリーが先生と生徒みたいに歌い踊るいっけん地味なこの曲、ケイ・トンプソンがオードリーにボイストレーニングしてるみたいで味わい深い・・!
 
 
長らく魅力を理解できなかったディートリッヒを、何年か前に雷に打たれたみたいに好きになってしまった時、ああ、大人になっちゃったってことねって思ったものだけど、「パリの恋人」でのケイ・トンプソン発見も大人の階段上る出来事。きっとこれから何人も、これまで発見できなかった渋い玄人を発見していくのであろう・・。
 

 

2013-10-16

Grindhouse in Asakusa and SF!!

 
前の日記からもう1ヶ月経ってるのか・・。
 
 
台風がいくつか去った後の東京はすっかり秋。ようやくパジャマを長袖に。夏の最中にjcrewのセールで買ったパジャマ、届いたのは近所のセブンイレブンに行くだけで熱中症で倒そうになる猛暑の極みで、長袖見るだけでまた倒れそうになってたけど、昨日ようやく袖を通してみると肌寒いぐらい。すっかりモノを整理してしまってパジャマに困ってるので、jcrewはいちはやく私のためにフランネルのパジャマを販売開始してほしい。
 
 
前の日記を読んでくださったLAにお住まいのRIEさんが、グラインドハウスのキーワードから、SFにお住まいだった頃にあったグラインドハウスについて書いてくださいました・・!映画はもちろん好きだけど、映画館という場所そのものが大好きなので行ったことない土地の映画館の写真やプログラムを見てるだけで楽しい・・!世界中の面白い映画館の写真を大量に集めた写真集ないのかなってずっと思ってる。
 
 
 
 
STRANDというこの映画館の看板の、NとDの電球切れてるのがツボ。そしてプログラムの画像は可能な限り拡大してじっくり見てみると、日替わりで豪華すぎるラインナップ。これフィルムで毎日上映するなんて熱意を感じる。ありえない価格設定といい、羨ましい経験。メキシカンの男に煙草吹きかけられるのは怖すぎるけど・・!
 
 
RIEさんはパリに旅行された際、私が世界で一番好きな場所と思ってるモンマルトルのstudio 28 について問い合わせてくださって、実際行かれたとのこと。私はこれまでパリに行く友人たち、いったい何人にstudio 28 を暑苦しく薦めたかしら・・(遠い目)。映画見なくてもバーは誰でも入れるし、内装が素晴らしいから是非に・・とオススメしても、やはり異国の映画館はハードルが高いのか、旅行者の時間は忙しく限られてるからか、興味を示してくれつつ誰も行ってはいないので、RIEさんが行ってくださって本当に嬉しかった。パリ最古の映画館という歴史、ジャン・コクトーの内装、「アメリ」にも登場するよ!とオススメポイントは山ほどあり、非常にフォトジェニックな場所なのに、日本の雑誌のパリ特集などでも見かけたことがないのは何故・・(しつこくブツブツ・・)?
 
 
そして前回、映画「グラインドハウス」を観た今は亡き浅草のグラインドハウス、浅草中映、以前書いてた日記から写真を発掘。行ったのは2008年だった。写真が荒いのは当時使ってたSHARPのガラケー(!)で撮ったからで、自分が書いた文字といい、2008年の自分なんて気が遠くなるほど他人!と思いつつ書いたものを読んでいると、浅草中映での最初で最後の数時間をくっきり思い出せた。何でも書き留めておくもんだな。
 
 
まず、グラインドハウスとは・・・どこかからの引用だったと思うのだけど、引用元がわからない。
 
 
『清潔かつ巨大なシネコン劇場で「安全」な映画ばかりが上映されるようになる、そのはるか昔。1960~90年代にかけて、グラインドハウス劇場はあった。20~40年代の映画黄金時代が終焉を向かえた時、劇場の経営者達は何とかお客を劇場に戻すため刺激的なプログラムをブッキングしはじめた。観客を退屈させないための「エクスプロイテーション映画」、つまり観客の好奇心をエクスプロイト(搾取)する映画を上映するようになったのである。いずれも低予算・短尺のホラーやバイオレンスアクション、クンフー活劇にソフトコア&ハードコアポルノなど。それらを2~3本立てで休憩を挟まず延々と上映していた。それが「グラインドハウス」のはじまりである。グラインドハウス劇場の経営者たちが上映に求めるのは、男性客を退屈させない刺激、ただそれのみ!血、暴力、エロと三拍子揃っていれば、物語や演出の不備など特に問題ではなかった。ついでにカーチェイスなんかが入っていれば最高。そういった安物映画にまじって、イングマール・ベルイマン作品も人気プログラムだったが、その理由は女性ヌードが見れるから、ただそれだけだった。フィルムリールの順番が間違ってかかったり、音がまったく出なかったり・・・だがその乱暴さも含めて、一部の観客は大いに楽しんだ。寝床を求めて入館した観客のいびきが響き、ある者はスクリーンに向かって野次を飛ばし、コーラを投げつけ笑った・・・。そんなグラインドハウスにおける暴力的なまでに無秩序な空間は、映画対個人の世界をより純化し、時としてクエンティン・タランティーノのような若者に衝撃的な体験を与えた。』
 
 
この文章、ベルイマンのくだりが最高である。女が脱げばそれでいいのか・・!
 
 
そして浅草中映について2008年の私が書いたのは
 
 
『向かいに馬券売り場みたいのがあって、おじさんたちがモニターに向かって熱い視線送ってる。同じ建物で洋画、邦画とスクリーンわかれてて、洋画は2本立てだけども邦画は3本立て。必ず寅さんか釣りバカ日誌が含まれた感じの。おじさん率高い中、女ってだけで優遇されるのか、女性はオールタイム格安料金。入替制でもなくいつでも出入り自由。トイレの入り口に、ここは女性用で、男性は使用禁止。男が入ったら痴漢で通報しますよ的脅しの文句。こう書かれてるってことはそういうのが多いってこと?と劇場に入ってみたらいきなりレディースシート。いちばん後ろに。ってこの映画館、女子の異様な保護されっぷりにかえって不安が募る。歌舞伎町の古い映画館でもここまで保護されたところはない。と、やや怖かったものの、特段何もなく、映画館自体がとても男臭い世界で、それがグラインドハウスっぽくてちょっと良かった。』
 
 
そうそう、レディースシートがあって、その存在自体がちょっと怖かったんだった。ちなみに新橋中央劇場も女性は料金が安く、女性と同伴なら男性も料金が安くなる。東京の場末の名画座は、女性に優しくせねば!という不文律があるらしい。
 
 
私が書いた1つの日記から、遠くに住む方の記憶が掘り起こされて、それによってまた自分の記憶も掘り起こされて、素敵な記事をありがとうございました。
 
 
記録の大事さを思い知ったし、日記の書き方も思い出したから、今度こそコツコツ書くの再開しよう。おやすみなさい。