CINEMA STUDIO28

2014-07-18

l'Origine du Monde

 
今日、オルセーにあるクールベの「l'Origine du Monde(世界の起源)」が、今はオルセーにない。という日記を読んで、

 
 
 
 
オルセーの作品なんてしょっちゅう世界中に貸し出しされてるだろうから、私がオルセーであの絵を観られたのはラッキーだったのだな、と思った。絵に動揺したわけじゃないけど、撮った写真は全部ピンボケしてた…。
 
 
この間この絵を思い出したのは、ホン・サンスを劇場で観てから、私的ホン・サンス祭(=DVDで過去作を狂ったように見る)を開催した際に見た「アバンチュールはパリで」を見た時だった。
 
 
DVDのパッケージを見ていると、パリでロケした軽妙で爽やかなロマコメのように見えてしまうこの映画、中身はパッケージを大きく裏切り、相変わらずのホン・サンス節。映画監督が何かの事情で妻を置いてパリに逃げ、おそらく郊外にある知人の家に身を寄せ非生産的な時間を過ごす。もちろんパリでも女をたぶらかし、韓国とパリの距離を隔て展開する身勝手でだらしなく最低なホン・サンス映画独特の男の恋愛模様なのだけど、だらだら過ごす男もオルセーには行っておかねばと思ったのか、オルセーロケの場面があった。
 
 
わああ。ホン・サンス映画で、オルセーロケときたら、あの絵が登場するに違いない。と想像してたら案の定、「l'Origine du Monde(世界の起源)」が登場し、けっこうな時間、男がこの絵を覗き込んでいたので心で大笑いしてしまった。期待を裏切らないホン・サンス。


パリを再訪したとして、大きな美術館を再訪する気になるかはわからないけど、「l'Origine du Monde(世界の起源)」をまた観られるなら、行ってみたい気もしている。絵の前に立ったときの心のざわつきは、あの絵にしか引き起こせない種類のざわつきだった。

 

2014-07-16

Jacques Demy!!

 
 
夜に知ったニュース!8月の終わりから、フィルムセンターでジャック・ドゥミの展示が始まる!さっそくドゥミ好き友達に共有、ベルばら上映の日はお互い予定を今からブロック!トークの日も皆勤賞で通いたい。
 
 


この鼻息荒さは、この展示がパリのシネマテークからの巡回で、心底パリで見たかったけど仕事のアレで行けなかったから。そしてしぶとくパリ在住の友人の一時帰国時に図録輸入を熱烈要望。友人はピアニストで、パリから日本まで図録を運んでくれただけでなく、日本に戻ってからも東京にたどり着くまでの各地ツアー先にも荷物として運搬してくれていたらしく、ようやく東京の我が部屋に辿り着き、荷解きしつつひとこと「めっちゃ重かったわ!」と…。分厚い友情つきのずっしり重いこの図録、一生大事にすると決めてる数少ないもののひとつ。仏語なので死ぬまでには全部読みたいと思ってる。
 
 
 
 
豪華なことに、シェルブールの雨傘のフィルムもついてる。何のシーンかわからないけど、ドヌーヴのシーン。

2014-07-14

思い出のマーニー

 
 
先週末のこと。1年ぶりに、よみうりホールへ。去年「風立ちぬ」の試写会以来。
 
 
 
 
この夏のジブリ。2年連続でジブリを試写で見させていただいた。夏休みは親に連れられてアニメを見に行く習慣のある少年少女がどれぐらいの割合でいるのかわからないけど、私の幼少期はそんな習慣はなかったので(父が好きなハリウッドクラシックを家で一緒に見る子だった)、2年連続ジブリは新鮮。
 
 
千と千尋…も、もののけ姫も見てないぐらい疎遠なので、ジブリの印象といえばナウシカ、ラピュタまで遡ってしまうけども、記憶の中のジブリは、青い空、お菓子みたいな白い雲、高いところから俯瞰で見る大地、正義感の強い女の子、と、一緒に戦いながらちょっと恋の香りがする男の子…みたいなイメージだったので、去年の「風立ちぬ」は老人性もう好き勝手撮らせて系の異形の映画(そういった男性監督が年老いて徐々に我儘に暴走する映画が大好物な私としては、今後宮崎駿の映画は何を差し置いても見ねばなるまい。と思っていたら引退してしまった)だったので例外として、今年の「思い出のマーニー」は私の希薄なジブリイメージからずいぶん程遠いなぁ。これが現代というものか。と、物語よりそちらの違和感をスルメみたいにしがしがしながら見た。
 
 
小学生の頃、父に買ってもらったお菓子づくりの本を今でも持っており、たまに眺めると、ケーキの型の大きさ、砂糖の多さに時代を感じる。最近のお菓子本は身体に優しそうな素材で、少ない家族でも食べきれる量の小さな型でつくるものが多いことを考えると、現代の幼少期の過ごし方も、私の小さい頃とはきっとずいぶん違うのだろうなぁと想像したりしている。
 
 
「思い出のマーニー」の主人公の女の子は、学校で仲間に馴染めず、休み時間は校庭でスケッチし、同級生にからかわれると過呼吸になる。これまでのジブリのヒロインとはずいぶん違った彼女のストレスの原因が複雑な家庭環境にあることが徐々に示され、都会から静養に移動するのは夏でも曇った空の湿原地帯で、青い空も美味しそうな白い雲もなかった。そこで出会うマーニーという金髪碧眼の少女との物語は、なるほど異国の児童文学が原作、と納得する展開。始まって8割がた、暗い物語に面食らいながら見ていたら、残りの2割でしっかり感情移入。少女が自分自身に出会う過程を丁寧に追った大人の映画。大きな何かと戦わず、ひたすら己の内面と向き合う少女の物語に登場するのはもう1人の少女で、ちょっとだけいい感じの雰囲気になる、一緒に戦う少年はもはや登場の余地すらない。主題歌も英語だし、流行るのかしら…と心配になったけど、去年「風立ちぬ」も流行るのかしら…と思ったのがとんだ杞憂で大ヒットだったので、ジブリブランドは強いなぁ。これもきっと大勢の人が見に行って、あの少女の夏を静かに見つめることになるのだろう。
 
 
いつも美味しそうなものが登場するジブリ、今回は四角いピクニックバスケットから出てきたジュースとクッキー、かわいらしい2人の少女にぴったりで、とても美味しそう。
 
7月19日から公開
 
 
 
 

 

2014-07-08

新橋のグラインドハウス

 
 
昨夜知った衝撃のニュース。世にもかっこいい新橋のグラインドハウス、8月いっぱいで閉館。最近、吉祥寺バウスシアターが閉まった時はそれほど感傷的にならなかったのはほとんど思い出がなかったからだろうけど、新橋のこちらは去年、瞬間最大風速的に煮詰まった時、世界で一番スカッとする映画「デスプルーフ」をかけてくれる最高の映画体験をもたらしてくれただけに、記憶の中で聖地認定されている。消えてしまいたい気分の時、さりげなく一番好きな曲をかけてくれた男の人を好きになってしまう。みたいな夏の夜だった。
 
 
「待ち合わせのレストランは、もう潰れてなかった」って短い言葉で東京を表す見事な歌詞だと思ってるけど、普段は好きな東京のそういった一面が、同じ牙で自分の聖地を奪っていくなあ。閉館までに一度は行けるだろうか。併映が「ニューシネマパラダイス」なのは気分が乗らないけど、あの場所で「日曜日が待ち遠しい!」なんて観てしまったら映画愛に咽び泣いてしまいそう。