CINEMA STUDIO28

2013-07-22

風立ちぬ

 
書いてなさすぎてブログの書き方を忘れていた。
ずいぶんいろんなことがあった1ヶ月で、シェルブールの雨傘を観た自分なんて既に他人みたい。
 
 
2週間ほど前、宮崎駿「風立ちぬ」、いちはやく試写で見せていただいた。ありがとう!ジブリ全く詳しくないので、好き放題感想書くよ!
 
・実在した飛行機の設計士、零戦をつくった人と、堀辰雄「風立ちぬ」が下敷きになったフィクション。主人公のストイックな仕事っぷりと、結核を煩う女性との出会いとそれから。が描かれる。
 
・後半は「風立ちぬ」下敷きパートがメインなのではと思われるほどの恋愛映画になってる。そして描かれ方がクラシック。20年〜30年代のサイレント映画や、どこかしら小津映画・松竹大船調すら彷彿とさせるクラシックさ。
 
・主人公の声を庵野さんなことで話題だけども、サービス精神皆無の声になんともいえない求道者っぽさが漂ってて、役柄に声が似合ってた。好きなことやれれば他は何も要らんす。って潔さが声にあった。男の顔は履歴書というけども、声も然りってことなのか
 
・そんなストイックな声が、こと恋愛パートにおいては途端に甘くなるのが聞きどころ!
 
・声といえばもう1人。後半に登場する上司の奥さん役、登場場面少ないながらピリリと効く声。後で調べると大竹しのぶだった。さすがである。
 
・堀辰雄の小説同様に、ポール・ヴァレリーの詩から"Le vent se lève(風立ちぬ), il faut tenter de vivre(いざ生きめやも)”の一節が引用され、主人公と女性の出会いの場面でも登場する。「山」と言えば「川」と応えるかのごとく、風の強い場面で「Le vent se lève」と女が言って「il faut tenter de vivre」と男が応えるならば、運命と呼ぶに十分でしょう。
 
・関東大震災やら結核やら戦争やらが下敷きの上、物語は大胆に省略され丁寧に説明してくれるわけではなく、耳障りの良い主題歌や、面白いキャラクターが出てくるわけではないので、子供は退屈するかも・・(前の席の子供は退屈したみたいでお母さんと一緒に途中で出て行った) グッズも作りにくそう・・。でもユーミンの「ひこうき雲」はこの映画にぴったりだったな。
 
・この題材で、過去を描きながら、昔は良かっただけでもなく、ピュアで切ないね〜だけでもない複雑な奥行きが素晴らしい。最近、死を身近なところに感じたので、与えられた人生の時間を全うしようとする2人の姿は、無条件にぐっとくるものがあった。
 
 
・トリュフォーの「映画とは過激なまでにパーソナルでなければならない」という言葉が好きで、そのような映画が好きだけども、「風立ちぬ」は実在の人物と小説をベースにしていながら、過激なまでにパーソナルな匂いがした。見終わった後、これを作った宮崎駿のことをもっと知りたくなった。
 
7/20から公開。おすすめします。
http://kazetachinu.jp/