CINEMA STUDIO28

2016-11-30

Tampopo



LAからのシネマレターに同封されてた、アメリカで順次公開されているらしい「TAMPOPO」…そう、伊丹十三「タンポポ」、このビジュアル、お友達がinstagramにアップしてるの、素敵!と思って観ていたので手元に届いて嬉しい。日本の映画って思わぬビジュアルで海外で紹介されていたりするよなぁ。滔々と流れるラーメンの河で溺れそうな登場人物たちよ!


「TAMPOPO」、なんと4Kリマスタされたらしい。4Kで日本に里帰りしてほしい。


こちらに記事を発見(日本語)。
http://cinefil.tokyo/_ct/17006276


シネマレターをたくさん書き終わってからも、あちこちに締切、提出物があって身動きとれないのだけど、今日ひとつ終わらせて次の段階に進めそうだから、英気を養うべく、今日のところは眠る!眠るぞー!オーッ(気合)!

2016-11-29

Cinema letter from LA



フレデリック・ワイズマンの何年にもわたっての特集上映がLAでスタートし、本人登壇のレクチャーもあったとのこと、LAのお友達のinstagramで知ったのが、今年の映画に関する羨ましかったことランキング上位。ワイズマン、現役のアメリカの監督で最も好きだし、ドキュメンタリーの監督としても最も好き。東京には東京の、LAにはLAの素敵な上映がある。


何年か前のレトロスペクティブで買った、こちらの冊子がそれまでのフィルモグラフィを丁寧に網羅した素晴らしい内容で、大切にしてる一冊なので、お友達もこれを読むべきだわ…!と、古本で1冊調達してLAに郵送。その後、お互い同じ冊子を手にしてパラパラめくりながらSkypeでたっぷりワイズマン話して幸せだった。


そして昨日届いたシネマレターは…フレデリック・ワイズマン・トート!ワイズマン物々交換というレアな行為を達成!




そう、去年届いたゴダール・トート(こちら)を描いたのと同じイラストレーターのシネマトートシリーズ!



ワイズマン、最近、日本では美術館やバレエカンパニーを撮ったものが文化村で上映されるイメージだけど(文化村マダムの好みに合わせて…?)、アメリカの現実の前にさっと透明なカメラを置いて撮ったようなテーマの映画こそワイズマンと思うので、古いのも新しいのももっと定期的に公開されないだろうか。去年特集上映(こちら)があった時、ハードなものを観られる気分じゃなかったので「臨死」や「DV」をパスしてしまったのが、仕方ないとはいえ残念。しょっちゅうワイズマン映画がかかってる映画館がある街なんて、とても素敵だと思う。


Cinema letter from LA、ありがとうございました!

2016-11-28

2016/11/28



シネマレターを朝、投函。


手書きでたくさん書いたからか、今日は寝違えたみたいに首が右にまわらなかったけど、ペンとお箸以外は左だからさほど困らず、切れた電球も無事交換。タイプライターが登場する前の物書きは皆、手書きで手を痛めていたのかなぁ。


帰宅するとポストにアメリカからの小包。映画好きの友人からのシネマレター!ポストに手紙が届くって、嬉しいことだなぁ…と、私が実感。


昨日は書くのと書くのの隙間に、ささっとフィルメックスでモーニング・エドワード・ヤンしてきたのだけど(=朝にエドワード・ヤン映画を観ること)、部屋に物を置かずガラガラっぽくして、薄暗い中に小さな灯りがついているのが好き、という嗜好は、エドワード・ヤンによってもたらされたのだろうか。




「恐怖分子」だと、こういう感じ。目を悪くするはずである。


昨日観た「タイペイストーリー」、来年リバイバル上映されるとのこと。監督が亡くなって、来年で10年になる。


http://filmex.net/2016/program/specialscreenings/ssc07

2016-11-27

Cinema letter



little shop of memorandom、大人ガチャのお手紙、書き終わりました。明朝、投函します。PCで下書きはしていたのだけど、手書きで一気に、昨夜、今朝、今日の午後とずっと書いていたので、手が攣りそう…。もう今年の手書き残存エネルギーはゼロになったわ…。





ガチャガチャ回してみて、偶然当たったカプセルを開け、中の手紙を読み、書かれているメールアドレスに観たい映画のイメージ、リクエストを送ると、私の記憶のアーカイブから映画を選び、選んだ理由を添えて手紙で届くプロジェクト。映画を誰かに薦めるのは身近な相手でも難しく、お会いしたことのない方にはなおさら難しい。難しいのは、私は私だし、あなたはあなただから、かもね?


メールから推察可能な範囲で好みに合わせることもできるかもしれないけど、この企画この先もうないかもしれないし、受け取る方も知らない人から映画を薦める手紙が届くなんて二度とないかもしれないから(考えてみると酔狂だわ)、こんなことがなければ出会わないかもしれない映画を敢えて強気に選んだりしました。好きな映画に新しめの映画を教えてくれた方には敢えてモノクロのクラシック映画を選ぶ…など。迷った時は大胆な方を選びがちな性格が反映されたセレクトになってますが、何故この映画なのだろう?!と深読みしながら、思わぬ出会いを楽しんでいただければ嬉しいです。あなたのことを見知らぬ私に教えてくださってありがとうございました。


ようやく夏が終わった気分…もうすぐ12月だけど…。

2016-11-26

Filmex closing!



フィルメックス、早くもクロージング。


コンペの作品を1本も観ていないのでセレモニーは眺めるだけだったけど、韓国映画好きのお友達が、とても良かったと言っていた「私たち」という映画が、観客賞とスペシャルメンションを両方獲得し、日本公開も決まったらしいので、忘れずに観に行きたい。監督は昨日、韓国の青龍賞新人賞を受賞し、今日フィルメックスでも受賞の報せがあって、急遽来日したのだそう。2度めの登場時には「また 来ました」と日本語で挨拶していて素朴でキュートな印象。映画、楽しみだな。


http://filmex.net/2016/program/competition




オープニングで辛辣な挨拶で会場を沸かせた審査委員長(こちらに書きました)、クロージングの挨拶は…



「オープニングでどうやら私は、SHINZO ABEについて何かを喋ったようですが、全く記憶にございません。不謹慎な発言がありましたら、以後慎みます」から挨拶を始め、審査の協議内容も率直にコメントした後、最後に「始まる前から参加しましたがフィルメックスは、作品も登壇者も観客も、NOT COOL JAPAN! クールジャパン的なものがなくて、良かったです」とまったく慎んでなくてクスクス笑ってしまった。パンク!ファンになったので、また映画祭の審査に来てもらって、挨拶トーク聞きたいなぁ。東京国際の華やかさも嫌いじゃないけど、フィルメックス、登壇者もデニムなどカジュアルな服装の人が多く、ちゃんと映画が主役という感じがするのが変なストレスなくて良い。



クロージングの香港映画は、???な部分が多かったので、審査委員長トークがクロージングのハイライトだったかもしれない。

2016-11-25

2016/11/25



肌寒い晩秋の夜、部屋に篭って手紙を書くの…悪くない。シネマレター、この週末に書き終わる予定。


マイペースかつファン心理皆無な性質なので、誰かが薦めていたのを読んで影響されて映画を観るということが、これまでほとんどなく、あったとしても身近にいる映画好きの友人(映画の好みがある程度シンクロする人)が先に観て面白そうだったのを観に行ったり…という程度で、よく見知った間柄でも、誰かに映画を薦めるのは難しいことだと思っているのに、お会いしたことのない人に、映画を薦めるなんて難しい…難しすぎる…ということを、改めていただいたメールを読み直し(プリントアウトしてキーワードに線を引くなど受験生のように)、映画を選び、自分なりに薦める理由を並べてみても、はたしてその方の心にヒットするのか、はたまたかすりもしないのか、さっぱりわからない…と思いつつも、とりあえず書き進めてる。ああ、永い言い訳みたい。


という気弱さを、素敵なレターセットを使うことで鼓舞してる。Smythsonのブルーの封筒、クリーム色の便箋にはグレーでこのプロジェクトのロゴをプリント。万年筆はペリカンのデモンストレーター(太字)、パイロットのカクノ(細字)、インクはブルーブラック。


封筒も便箋もなくなりそうで、Smythsonのサイトを覗いてみたら、送料50ドルとあって、これを買った時の自分は貴族か何かだったのだろうか…と思い出してみれば、何年か前のホリデーシーズン、送料無料のプロモーションがあった機会に乗じて買ったことを思い出した。あのプロモーション、今年もやってくれないかな。はるばる英国から届くとはいえ、50ドル追加で払う勇気は出ない。


http://www.smythson.com/us/stationery/paper-plain-stationery.html

2016-11-24

2016/11/24


今日の東京はどうしちゃったの。朝、オフィスの私の席から。雪…!通勤時間、雪は降ってたけど積もるほどじゃなく、ダイヤはちょっと乱れてたけど、遅延というレベルではなかった。





最高気温2℃!さすがにウールのコートを着た。この気温差にビクともしない健康体を手に入れたい。


11月に東京で積雪するのは1962年以来、54年ぶりとのことで、ピンとこなかった私は、1962年って…(カチャカチャ)…とグーグル先生に尋ねてみた。


1962年、市川崑は「破戒」を撮り…(いい映画だけど暗いので1度しか観ていない)



1962年、黒澤明は「椿三十郎」を撮り…(あまり縁がなくて、1度しか観ていない)




1962年、小津安二郎は「秋刀魚の味」を撮っていた。遺作。




画像をチェックしてみて、撮った監督も俳優たちも、岩下志麻以外みんな亡くなっている。1962年ってずいぶん久しぶりのことなんだなぁ…異常気象だなぁ…。雪の日の終わりに、ようやく実感。

2016-11-23

coat problem



昨日に比べれば今日は寒いけど、今夜から明日にかけて雪が降るって、23区内でも積もるかもしれないって、いったいどうしたことかしら。狐につままれた気分でiPhoneの天気アプリで、謎めいて低い明日の最高・最低気温を眺めてる。


桜の季節の終り頃、無情に雨が降るように、銀杏の見事な晩秋、雪の重みが銀杏を散らすのかしら。まさかね。


手元の洋服を整理した結果、冬のコートが1着のみ、という事態に陥っており、あれこれ探してみたけど、気に入るものがない。今年たくさん出ているボタンがなく軽く羽織って共布ベルトでウェストマークするガウンコート、好きな感じだな、といくつか着てみたけど、分量がたっぷりしすぎており、小柄な私は重みに負けた…。このデザインで分量を減らして素材も軽ければ、丈ももう少し短かければ…と思ったけど、流行とは恐ろしいもので、ほとんどのコートはたっぷりしすぎている。


探す時間が潤沢にあるわけではない現在、コート選びを早々と放棄し、3月頃から着られるトレンチコートを手に入れることに頭を切り替えた。


映画の中には、魅力的なトレンチコートがいくつも登場する。まず思い浮かぶのは「シェルブールの雨傘」のドヌーヴ。着倒してクタクタ気味なのがいい。




それから「MADE IN U.S.A」のアンナ・カリーナ。オーソドックスなタイプ。アンナ・カリーナって静止画より動いてる方が魅力が増す人だと思う。逆に動いてるより写真の方が綺麗に思えるのはグレース・ケリー。最近心ざわつかせる静止画より動いてる方が魅力が増す女優・筆頭はガッキーよね。ガッキー、アンナ・カリーナの系譜。


ドヌーヴ、アンナ・カリーナのトレンチは男性もののサイズをコンパクトにした正調の魅力がありつつも、トレンチってエポーレット(肩についてる、あの…)とか装飾が多く(軍用の洋服だったから用途があってついていると知りつつも)、正調のは素材もしっかりしてて、肩の細い私にはちょっと荷が重い…と調べていたら、これぞというのを見つけた。





ホリー・ゴライトリーのトレンチ!肩周りもすっきりして、素材も柔らかそうで着やすそう。go lightlyの名前に相応しく、デザインも軽いのがいい。よし、心はホリー・トレンチにうまく傾いたので、冬のコートが1着しかない問題から目をそらし、早くも早春を想うことにする。明日は雪らしいけど。どちらにしろこの冬は、あまり外に出かける余裕もなさそうだし。

2016-11-22

銀杏並木



午後、快晴が気持ちよく、打ち合わせに歩いて向かう。途中、人だかりにぶつかって、何事ぞ?と見渡すと、あ、銀杏並木。部屋と仕事を黙々と往復しているうちに、こんな季節になっていたのか。



夏、ガチャガチャに詰めたもの、今週は手紙を書く週です。


http://cinemastudio28.blogspot.jp/2016/08/little-shop-of-memorandom_21.html


めっきり季節は変わったけれど、忘れた頃に不意打ちみたいに届いたな。って、受け取った方は思うかしら。恋愛体質っぽい見知らぬ女性に、身体ごと掴んで持って行かれるような激しい恋の映画を勧める手紙を書くうちに、徐々にテンション上がってきた。

2016-11-21

すし



土曜社、土曜文庫の「移動祝祭日」を買ったと書いたら、何人かからあの本気になる…と反応が。装丁が素敵なので皆さん買いましょうよう(回し者ではない)。文庫、同じ装丁でシリーズ化してもらって、本棚にずらずら並べたいと思っていたら、続々刊行予定が。


土曜社のサイト、静かにじわじわ面白い。それぞれの本に「読者対象」が書かれている。


http://www.doyosha.com/


「復興亜細亜の諸問題」は「アジア史研究者・学生|外交担当者|商社マン」と普通だけど、A4手帳は「能率手帳がNOLTYに名称変更したことを残念に感じた成人男性。英フィナンシャル・タイムズ社製「FT手帳」のサーモンピンク紙に魅力を感じつつ、より汎用性と手軽さを求める向き」を対象とする。



刊行予定のもので断然気になっているのが、「すし通」という本。対象は「通人 すしを愛する人」。すし好きだから、対象範囲だな。目次も、鮨は三食の外、鮨の鯖を読む事、「鮨は玉子焼から」の論、「鮨は小鰭に止め刺す」説……今すぐ読みたいんですけど…予約しておこうかな。


映画の中ですしと言えば、断然「秋日和」。主人公(司葉子)の親友アヤちゃんの実家が寿司屋。司葉子が話しに行ったら、アヤちゃんがお母さんにちょっとみつくろって!って下から寿司桶が運ばれてくるという贅沢。それなのに頑なな司葉子ったらプンスカ怒って手もつけず帰り、残されたアヤちゃんが、なにサ!とやけ食いする場面、とっても好き。アヤちゃんと寿司が同時にあるのに、感情任せに立ち去る司葉子が信じられない。わかってんの?アヤちゃんと寿司だよ?葉子に食わせる寿司はねぇ、代わりにあたいを呼んどくれヨ!とスクリーンに野次を飛ばす瞬間である。

2016-11-20

2016/11/20




本日、打ち合わせ。 



「生活の設計」というタイトルの汎用性の高さ。ルビッチ、名付けの天才!と思っていたけど、これはもともとお芝居を映画化したものだからタイトルもルビッチが考えたわけではないのだな。手元の「ルビッチ・タッチ」著者ハーマン・G・ワインバーグは映画の方は「いつもの妙技の再現はならなかった」と、お芝居の方を褒めている。映画については、



「私の脳裏にはこれぞ”ルビッチ・タッチ”と呼べる一瞬がよみがえる。それはミリアム・ホプキンスが絶望を装って長椅子に身を投げ出すところ---そのとき、その見せかけの演技を見透かすように、長椅子から一陣のホコリが舞い上がるのだ。」


私もあの場面好き!無理な願いだけど、こんなこと書かせるなんて、お芝居の方はどんなに素晴らしかったのだろうか。30年代にタイムリープして劇場に行きたいよ。

2016-11-19

Filmex!




2週間以上のブランクの後に映画館に復帰(涙)。東京フィルメックス、オープニングは日劇。スクリーンも大きく、シネコンだから観やすくて(比較対象:朝日ホール)ありがたい。



オープニング作品はキム・ギドク「THE NET 縄に囚われた男」で、監督から、幸せな週末の夜に重い映画を観せてしまって…とコメントがあったように思うけど、会場の大半が、キム・ギドクの映画を観る覚悟なんてとっくに決まってる人々だろうから、何を今更おっしゃる?と思いながら聞いていた。



映画はとても素晴らしかったのだけども!今夜はそれ以外に要素が多すぎる。審査委員長(イギリスの映画評論家)の挨拶。何年か前に東京国際映画祭に参加した時は、SHINZO ABEが、少年のようなアイドルグループのメンバーに囲まれて、COOL JAPAN!と挨拶していてとっても奇妙だったけど、フィルメックスはそんなところがなくていいね!と、まさかの東京国際下げ、フィルメックス上げコメント、パンクであった。写真中央の方。




それからキム・ギドクの登場時に抱きついてプレゼントを渡し、あまりに興奮した様子に退場時はスタッフが制止するほどの激烈なキム・ギドクファンが会場にいて、あまりのパッションに呆気にとられた。会場の、彼女の周りだけがジャニーズ・コンサートのような熱気を帯びている。行ったことないけど。キム・ギドクがそんな愛の対象になる人だとは想像もしていなかったけど、対象になるんですね、失礼しました。ファン心理というものを今ひとつ理解していない、そんな感情が限りなくゼロに近い私は、自分にないものを大量に持っている人を目の当たりにし、あまりのことに何の感情も湧かない、心が空白という事態に陥った。誰に会ったら、あんな気持ちになるのだろう。触れただけで崩れ落ちそうな…ハーバート・マーシャル?故人である。川口浩?…故人である。



フィルメックス、あれこれの都合をつけて何本か観る。
http://filmex.net/2016/

2016-11-18

映画祭




映画祭が終わってからやるべきことを片付けるのに珍しく家に篭ってるけど、明日からフィルメックス。久しぶりの映画!今年はあまり観られないな…と思いつつも、チケットは4枚買った。よき気分転換になりますように。



サイレントシネマピアニストの柳下美恵さんのインタビューを興味深く読み(こちら)「ベニスから北へ一時間程行ったポルデノーネでもう35年も続いている老舗の無声映画祭」に反応。調べてみたらwikiにも記述があり、サイトも見つけた(イタリア語で読めず)。友達のシネフィル・イタリアンをそそのかして行けたら最高だなぁ。


映画祭といえば、国内でいつか行ってみたいと思ってるものがたくさんあって、真冬のこちらもそのひとつ。寒さに耐えられるか、という問題をはらんでいる。

2016-11-17

H.K.2016



そういえば今年はH.K.の映画をほとんど観ていない。H.K.って誰かって?そんな質問、野暮ったらありゃしないッ!ヒロシ・カワグチに決まってンじゃないのッ!いけない、H.K.のこと考えると、つい大映口調になっちゃう。


1本だけ観たのは、市川崑映画祭の「おとうと」の上映。あの映画とはずいぶん久しぶりの再会で、今年最もデジタルリマスタの威力を思い知った上映だった。マイ・宮川一夫・ベストワーク。角川シネマ新宿の、大きな方のスクリーンで観たという体感も大きい。


映像に圧倒され、そしてこの映画はやっぱり岸恵子ばかり観てしまい、川口浩の印象が薄い。川口浩あっての岸恵子の演技とも言えるのだけど、ただでさえ線の細い岸恵子が、撮影前に「骨と皮になるまで痩せてくれ」と監督に言われたとかで、カピカピに痩せており、地味な着物の裾から鶏ガラのような脚が覗くたび、お姉ちゃんの健気さに思い入る。


上映後、岸恵子さんがトークで登壇され、真っ赤なお洋服の岸さんは、鶏ガラほどではないにせよ、80代の今もスラリとしていた。年齢を感じさせない人を見るたびに、余計な脂肪をつけないことこそ年齢不詳の秘訣、と思い知らされる。撮影時のエピソード、森雅之と田中絹代という大御所との共演で緊張し、浩くんとばかり喋っていたこと。あの頃はみんな撮影が早く終わると車を飛ばして銀座の喫茶店でお茶をしたり。浩くんは、ひとみちゃんと一緒で。と、岸さんが話したので、好きな男子が可愛い女子とデートしてたってよって聞かされた13歳の自分に瞬時に引き戻された。…私も岸さんみたいに親密さをはらんだ口調で浩くんって呼びたいッ!



2016年H.K.は、1本のみになりそう。

2016-11-16

土曜文庫



トーマス・ルフを観た後、快晴が気持ちよく、竹橋から新御茶ノ水まで歩くことにして、神保町すずらん通りを抜けると、東京堂書店のウィンドウに飾られたランキング本に、見慣れない装丁の文庫があり、思わず入店して確認。なんとなくその場は買わずに出たのだけど、帰宅してやはり気になり、出版社のサイトを調べ、amazonでも買えるけど、出版社から直接買うこともでき、送料も無料だったので、そちらで買ってみた。


ヘミングウェイ「移動祝祭日」。ずいぶん前に一度読んだことがあったように思う。


「もしきみが幸運にも青年時代にパリに住んだとすれば、
 きみが残りの人生をどこで過ごそうともパリはきみについてまわる。
 なぜならパリは移動祝祭日だからだ。」


当時の妻と、20年代のパリに暮らしたヘミングウェイ、ウディ・アレン「ミッドナイト・イン・パリ」と同時期、あの映画にはヘミングウェイも登場していた。




主人公が出会う20年代のヘミングウェイ。


土曜社という小さな出版社。注文したら秒速で返事が来て、封筒には象のスタンプと手書き文字。この装丁で文庫をあれこれ出してもらって、本棚にずらっと並べたい。


http://www.doyosha.com/


2016-11-15

Cinema memo : Howard Hawks!



シネマヴェーラ、年末年始はクラシック映画特集が恒例。今年は山田宏一さんセレクションのハワード・ホークス!


見逃していた「教授と美女」きた!去年のbest actressバーバラ・スタンウィックの代表作だけど、未見なのであった。小股の切れ上がった女バーバラ・スタンウィック!


http://cinemastudio28.blogspot.jp/2016/02/cinema-studio28-award-2015-best.html#links


そして併映は・・?とチェックしたら「バーバリー・コースト」はミリアム・ホプキンス主演!



ルビッチ映画以外でミリアム・ホプキンスを観たことがなく、なんとなーくルビッチ映画でのみ輝く女優なのでは?と想像してる。アンナ・カリーナがゴダール映画でのみ輝くように。ハワード・ホークスで検証。


映画納め、この2本立てで決まりかな。


ラインナップ、モンローもあるよ!
http://www.cinemavera.com/preview.php?no=182


スケジュール
http://www.cinemavera.com/schedule.php?id=182

2016-11-14

選ぶ



近代美術館のコレクションの中から、奈良美智さんが選んだ作品群の展示を観て、何をつくるかだけではなく、何を選ぶか(そして選ばないか)にも、その人が出るなぁ…と思った。きっと、つくる人だけに限った話でもない。


「永い言い訳」公開にあわせて、西川美和監督のあれこれがタイムラインに流れてくる日々、前作公開時の、選択の記事。


http://top.tsite.jp/entertainment/cinema/i/31542515/


ベルイマン「ある結婚の風景」を選ぶあたり、西川作品のイメージを裏切らないなぁ。ホラーの顔をしていないけど、中身は完全にホラーという映画はたくさんあって、「ある結婚の風景」はサイコホラーであった。ずいぶん前に一度観たきり、時間が長いこともあって2度目を観る気力を持てないでいる。時間が長いことには理由があって、テレビシリーズとして作られたものを映画版に再編集したから、らしいのだけど、スウェーデンでは放映時間、街から人が消え、シリーズ終了後は離婚率が上がった、というエピソードが興味深い。スウェーデンの人々って…。




同じ夫婦がベッドに並ぶ場面を持っていても、トリュフォー「家庭」とはずいぶん違う映画になるものですね。当たり前か。

2016-11-13

右脳左脳




クリスマスカードや年賀状を書く時期が近づくと発売される海外グリーティング用差額切手をチェックするのが毎年の恒例。だってとっても可愛いんだもの。左から寿司、天ぷら、ラーメン、すき焼き。一昨年と去年の。そして今年は蕎麦、親子丼。蕎麦!好物キタ!と、2シート買った。低額切手を豪勢に買うの、ちまちました楽しみ。



右脳を使うことと左脳を使うことが同時進行で立て込んでおり、時間も足りず、隙間時間をいかに切り替えてどちらかを選び少しでも前に進めること…に注力し…ヨレヨレしているところ…。



昨日行った杉本博司展についてメモしておくと、




3階と2階の2フロアをフルに使った渾身の展示で、特に3階、<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない>シリーズ、壁面までびっしり埋め尽くされた世界観には圧倒されつつも、情報量が多すぎて混乱。



文明が終わる33のシナリオ 「《理想主義者》《比較宗教学者》《宇宙物理学者》など33 のシナリオがあり、私が選んだ作品と様々な物で構成されます。」



地球上に存在する様々な職業に扮し、それぞれの職業に合わせた文体、筆跡で綴る「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」から始まる33の文章と、それぞれの職業に似合う骨董品の展示、一部、杉本博司の写真も。妄想力ここに極まれりという内容で、私は33の文章をすべて杉本博司が筆跡も文体も様々に全部書いていると勝手に思い込んでいたので、器用な人よ…と思っていたけれど勘違いで、豪華執筆陣が多数参加して書いたらしく、杉本博司は編集的な立場ということなのかな、と思うと同時に、京都で今年観た「趣味と芸術」の展示のほうが、すっきりと観やすかったのはあちらは何もかも杉本博司がひとりで手がけていたからかもしれない。今回の東京の展示、情報量が多すぎ散漫な印象があったのは、1つ1つが独立したディストピアSF映画を観ているようで、それを33も観ればさすがに疲れるでしょう?という私の集中力が散漫なだけだったのかもしれない。



フラフラしながら2階に降りると、そちらは静謐な空気が流れており、楽しみにしていた<廃虚劇場>はじっくりと落ち着いて観られた。キャプションが床面にある展示デザインも美しく、廃虚劇場で上映された映画のあらすじも、おそらく杉本博司によって説明されている。会場を出ると図録に並び、劇場シリーズを網羅したらしき洋書がありめくってみると、映画館のある場所についての説明はあったけど、写された光が何の映画かの説明がなかった(多分)ので、買わずに棚に戻した。コンセプトは素晴らしく、写された光は映画そのものではあるけれど、はたして杉本博司は映画を愛しているのだろうか。


2016-11-12

Thomas Ruff



東京は見事な秋晴れ。昨夜遅くに仕事がひと段落し、ぐずぐず眠っていたかったのだけど、ぐずぐずするだろう自分を想定してか、過去の自分がスパルタ的に朝早くから美容院の予約を入れていたので起き上がり、髪を切り、恵比寿の写美で杉本博司展に駆け込み、竹橋のトーマス・ルフ展にも滑り込み。会期ギリギリに展覧会に走っていく悪癖は今年も治らなかったね・2016。


http://thomasruff.jp/


トーマス・ルフ、あれだけの規模で写真を観たのに、写真を観たという体感が薄い。写真家と呼ぶのにも軽く抵抗があるけれど、面白くないわけではない、というのが面白かった。写真ではなく、コンセプトをひたすら提示されたような。各シリーズの説明、禅問答のようなキャプションがついていたけど、あの文字数で説明を考えた人を尊敬。観終わった後、常設を観に行って(東京で一番好きな美術館は、近代美術館の企画展ではなく常設の方かもしれない。いつも空いてるのもいい)、ようやく美術館に来た!という体感を取り戻す。




新聞から、この写真が何を表すのか、文字情報を排除し、写真のみ取り出して引き伸ばした(?)ニュースペーパーのシリーズ、妄想好きの私は面白く、そしてこれ、ルビッチ「極楽特急」の一場面!映画館で会える好きな男性番付・西の横綱ハーバート・マーシャルが写ってる。いつも映画館で会う人に美術館でばったり遭遇したみたい、オー!ダーリン!ハーバート!あなたこんなところで何してるの?って気分。




今回の展示、撮影可能だけど、場所(近代美術館)、展示名、作品名を記載するという条件付き。ハーバート・マーシャルの写真は、こちらの下のほうが作品名です。


http://thomasruff.jp/works/05_zeitungsfotos/


他に、夜の写真シリーズ、土星の写真シリーズは作品の成り立ちがロマンティックで好きだったな。グッズもあれこれ売られていたけど、トーマス・ルフグッズではなく、ルビッチ・グッズとしてハーバート・マーシャルの写真のポストカードやトートバッグがあったら買ったのだけど…。


トーマス・ルフ展、明日まで。奈良美智が選ぶMOMATコレクションの展示も素晴らしかった。意外なセレクトもあれば、ふかふかした犬の絵など、らしいチョイスもあって。配布されている小冊子がさりげなく豪華。


http://www.momat.go.jp/am/exhibition/nara_selection2016/

2016-11-11

2016/11/11



そろそろ、11月末までに手元に届くように、と約束したmemorandomのガチャの手紙を書く準備をしなければ。ピンときて、これかな?と思った映画は、ずいぶん長い間、再見していないので、手紙を書く前に観ようかな、と借りたまま放置している。秋になるとこの映画を思い出す。ボストンには、ワンダーランドという駅が実在するらしい。我が心の「映画で観た、行ってみたい場所」の筆頭に永らくある。


だいたいの映画は、本国のビジュアルの方が素敵だけど、アメリカ版のこのビジュアル、思てたんとちゃう感が凄い。日本のものの方が映画のイメージに近い、という珍しい例。

2016-11-10

Cinema memo : Veronika!



夜、ちょっと遠くの川べりの街で仕事が終わり、ホームから水面を眺め、心細い気持ちに。寒さゆえ。


やることとやることの間にホン・サンスの感想をサクッと書こうとしたけど無理だった。サクッと書けない。明日以降。


行ける可能性が限りなく低い…という眼差しで各所の映画イベントを眺めてるのだけど、思わず二度見した名前。フランソワーズ・ルブラン?


アテネフランセで・・
http://www.athenee.net/culturalcenter/s/c/FL_master.html


藝大で・・
http://geidai-film.jp/2016/10/778/


アンスティテュで・・
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1611091630/


広島国際映画祭にも・・(この映画祭は毎年ラインナップが素晴らしいので、いつか行ってみたいと思ってる)
http://hiff.jp/


「ママと娼婦」の娼婦的なヴェロニカ役の女優なのだけど、それ以外の出演作をあまり知らない、と思っていたら今年フランス映画祭でかかったウニー・ルコント「めぐりあう日」にも出ていたのか。なんといっても「ママと娼婦」の印象が鮮烈だったので、今でも濃いめのアイシャドウを塗る時、マスカラが流れ落ちそうな時、ヴェロニカのことを思い出す。

2016-11-09

Adieu, R.C.




大統領選の結果で世界が騒めく中、ラウル・クタールが亡くなったとのニュスがひっそり流れてきた。92歳。




映画の前に舞台挨拶があったり、上映後にQ&Aがあったり、そんな贅沢な場にずいぶんたくさん居合わせてきて、誰を見たのが一番嬉しかった?と聞かれることもあるけど、これぞハイライト!と今になって思うのは、パリのシネマテークで、ラウル・クタールの舞台挨拶の後に「突然炎のごとく」を観た、あの夜ではなかろうか。



ヌーヴェルヴァーグ作家の評伝を書いているらしき映画評論家らしき男性と一緒に登壇し、ラウル・クタールの紹介にあたって、数多の映画は彼の前で生まれた、ドゥミ、ジャン・ルーシュ、そしてゴダール!ゴダール!ゴダール!とゴダール連呼した後にトリュフォー映画の上映が始まるオチにはトリュフォーかい!とツッコミを禁じ得なかったけれど…





ゴダールとラウル・クタール




トリュフォーとラウル・クタール

私が見たのは80代のラウル・クタールで、カフェで隣に座っても絶対気づかないよね…という物静かそうな老人だったけど、ラウル・クタールの写真って口が半開きなのが80%ほどで、登壇した80代のラウル・クタールも80%ほどの時間は口が半開きだったから、あ!本物だ!と、その点で識別可能であった。そして翌日、興奮して周りに、昨夜シネマテークでラウル・クタールを!と話したのだけど、女優俳優ならともかく、監督ならまだしも、撮影監督って表に出る存在じゃないので映画好きというわけではない周りには誰にも通じず、ラウル?どういうスペルなの?Raoul..Coutard…と答えてるうちに、名前を覚え間違えずに書けるように…。


ヌーヴェルヴァーグは彼の目の前で起こった出来事の総称。挨拶が終わると、客席に降りて、上映の最初をちらっと見届けて出て行ったラウル・クタール。短い刹那でも「突然炎のごとく」がかかる場所で、撮った人と人生の時間が重なった幸せな夜だった。

2016-11-08

TIFF2016 / ディアナを見つめて





東京国際映画祭で観た映画メモ。インドネシア映画、中篇2本だて「ディアナを見つめて」は、「舟の上、だれかの妻、だれかの夫」と併映、2本で合計100分ほどだった。見慣れない国の映画を観る時、長篇1本よりこれぐらいの中篇2本って観やすくていいなぁ。それぞれ監督と俳優のQ&Aがあって、上映→Q&A→上映→Q&Aという流れだったので、なんだか授業みたい。



「ディアナを見つめて」、あらすじはこちら



あらすじを読んだ段階から、これは観たことのない種類の映画だな、と思い、実際、観たことのない種類の映画だった。いろんな国の映画を観て思う。嗚呼この世界にはいろんな家族関係、夫婦関係があるものだなぁ、人間が2人以上集まるとただでさえ一筋縄でいかない事案が生じてくる上に、その国固有の文化や思想も上乗せされて。



「ディアナを見つめて」は第2夫人を娶りたいと告げられる主婦(第1夫人)を追う物語。子育て中の専業主婦で、家の中、家の周りしか映らないので、なおさら彼女が煮詰まっていくように見える。中東の富豪が夫人を何人も従えて…というのは、ファンタジーのような現実として知ってはいたけども、この映画は富豪でも何でもなく、ごく一般的な家庭の若い夫婦の間にそれが起こる。



また、夫が妻に別にもう一つ家庭を持とうと思うと告げる場面が…ノートPCを開き、話があるんだけどと妻に画面の前に座らせ、それではこちらをご覧くださいとばかりにパワーポイントのスライドが次々とめくられ、2つの家庭を持つにあたり夫がこれからどう時間やお金を配分させていくか、例えばお金は夫の稼ぎをそれぞれの家庭に40%ずつ、残る20%は緊急用に留保。ビジネスプレゼンですか?という緻密な冷静さでスライドが流れていくのを、呆然と見つめる妻を観客は見守るしかない。



さすがに第2夫人を娶るという慣習?は古風な、もしくは一部の選ばれた人々のものだということなのか、夫がその父親にお前は何様だとなじられる場面もあるけど、夫は考えを変えず、一切の妻の感情を無視し、さっさと自分で決め、もう一つの家庭に通う生活を黙々と始めてしまう。妻から詰め寄られた夫は、君は文句ばっかり、あいつ(第2夫人)はあれ買ってこれ買ってと金ばかり使わせる、俺は一体どうしたらいいんだ!と逆上する始末。器に見合わないことされると周りが迷惑、というのはどの国でも同じだなぁ…と、全面的に妻に同情しながら観た。最後は少し晴れやかで、さっさと別れて子供と生きていくという選択肢もあるのかな?それは社会的に許されないのだろうか…と考えているうちに、短い映画は終わった。



登壇したのは監督と主演女優。監督はクレバーな語り口の若き女性監督だった。人口の大半がイスラム教徒であるインドネシアでは、一夫多妻の家庭は存在するが、人々はそれを積極的に話題にしない。話題にしないけど、存在する、という温度感とのこと。このあたりは「舟の上、だれかの妻、だれかの夫」でも不倫にまつわる伝承を、人々は知らんぷりするけど、現実に不倫がないわけではなく、ただ語らないという温度感と似ているように思った。



そしてインドネシアの一夫多妻制について、法律上では許されないが、宗教上のルールでは許される、第4夫人まで許されるというダブルスタンダードが存在する複雑さがあるらしく、どちらにせよ傷つくのは女性のほうだということを描く映画、という説明は女性監督ならではだな、と思い、夫の理不尽さと、その理不尽さもそれを許容する思想の上に成り立っているのだ、と映画を通じて考えてた私は、監督の狙い通りの観客ということかもしれない。






今、初めて観た。このトレイラー、シンプルでいいな。

2016-11-07

Cinema memo : あれこれ



夏の思い出。六曜社、地上のほう。



映画祭を振り返るのに、あれこれ調べていたら、これから撮影されたり公開されたりする映画の情報が。



カラックスの新作が撮影開始で、アメリカで初英語作品を撮っててミュージカルだとか。しかもルーニー・マーラ出演!!



http://variety.com/2016/film/news/adam-driver-rooney-mara-annette-leos-carax-1201908918/



ルーニー・マーラ(興奮)!この人が出るならどんな映画だろうと観に行くランキング、誰だろ?と考えてみて、ルーニー・マーラ、ぶっちぎりで首位かもしれない。無事に公開に至ることを祈るばかり。



そして「シェッド・スキン・パパ」のニュースをチェックしていたら、主演2人があれこれトークしている記事があって、



http://www.cinematoday.jp/page/A0005253


この記事の見どころは、なんだかものすごい迫力のジョニー・トーの写真。マフィアじゃありませんってキャプションもついてる。ジョニー・トー、DVDの特典で自作解説をしてる姿をよく見るのだけど、見た目も話し方も、町内会長っぽさあるな、といつも思う。町内会長っぽいということは、ちょっとマフィアっぽいってことなのかも。俺の縄張りを主張されそうというか…(思考の飛躍)。


さらに、知らなかったことに、ジョニー・トー新作、1月に公開されるのね。タイトルは「ホワイト・バレット」、1月7日、リニューアルした新宿武蔵野館にて。リニューアルにより場内に傾斜が生まれたと聞いており、映画館の傾斜をこよなく愛する私としては、ジョニー・トーも傾斜も愛でる新年にしたいと思う。


http://www.cinematoday.jp/page/N0086113

2016-11-06

TIFF2016 / 舟の上、だれかの妻、だれかの夫



東京国際映画祭(TIFF)で観た映画メモ。2本目、インドネシアの中篇「舟の上、だれかの妻、だれかの夫」。CROSS CUT ASIAというシリーズ、国際交流基金と連動して、毎年1つの国をピックアップした上映企画…だと思う。TIFFでは毎年、タイ映画の新作を楽しみにしているのだけど、今年は好きな監督の新作もなかったし、こちらの特集から選んで観ることに。


エドウィン監督の2013年の映画。写真と、あらすじを読んで選んでみた。


http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=323


「人妻ハリマは家庭を持つ船乗りスカブと道ならぬ恋に落ち、消えてしまう。ある日、ふたりは村に戻ってくるが、まもなくハリマは幸せそうに死んだ」という100年前の伝承を調べにサワイを訪れたマリナは、この伝承を知る住人に誰一人として会うことができない。やがて彼女はスカブと名乗る旅人の青年と出会う…。


これを読み、反射的に池澤夏樹の短篇「連夜」(短篇集「きみのためのバラ」に収録)を思い出す。沖縄を舞台に、女医と本土からやってきた青年が偶然出会い文字通り連夜、情事に耽る。その日々は唐突に始まり、唐突に終わった後、女医は人生でそのような出来事に陥った意味をユタに問いかけるうち、やがて琉球王国時代の悲恋に辿り着く…という物語。思い返してみても、なんとなく似てる。


「舟の上、だれかの妻、だれかの夫」は、そんなテンポではこの悠久の物語を語りきれないのでは…とハラハラするほど、ゆったりしたリズムで進行する映画だった。そして1時間に満たない映画のうち、3割ほどは海の中を撮影するなど、ひたすら風景描写が占める。伝承を調べるうちに出会った男女はやがて伝承をなぞっていくのだけど、行く末は語られない。女性が伝承を検証すべく尋ね歩く海辺の集落は、伝承の舞台であるはずなのに、口裏を合わせたように誰もそれを語らない。不倫の物語を語ることはタブー視されているのだろうか…と考えたけれども、海面と海中と男女とそこに暮らす人々の営みを物語を追うでもなくぼんやりと眺めていると、このような場所で男女が出会って交わることなど、晴れが続くとやがて雨が降るような当たり前の自然の営みとして、取り立てて語るまでもない、というムードが遥か昔から現在に至るまで滔々と続いているのではないか…その流れは男女が家庭を持っていようと独身者だろうと、瑣末なこととして呑みこむのだろう、という気分になってくる。


映画と「連夜」は別の物語だけど、案外「連夜」は、こんな映像に仕立てるのが正解なのかもしれない、と思った。性愛とは、をふと考えるとき、答えに近いものが含まれる物語として「連夜」を好きなのだけど、この映画もその意味において、私にとっては好ましい1本になった。


上映後、監督と主演俳優が登壇。女優さんが素敵だったから来日して欲しかったな!



追記。こちらにQ&Aの記事。


http://2016.tiff-jp.net/news/ja/?p=41888

2016-11-05

TIFF2016 / シェッド・スキン・パパ




忘れないうちに、東京国際映画祭で観た映画について。1本目はコンペから、中国・香港合作(という言葉の違和感)「シェッド・スキン・パパ」。原作は日本の佃典彦「ぬけがら」だそうで、Q&Aにも登壇しておられた。ロイ・シートウは演劇の世界の人だそうで、映画はこれが第1作とのこと。私の目当てはジョニー・トー監督作品常連のルイス・クー(現在、香港で最も稼ぐ俳優なのだそうだ)とフランシス・ンが共演し、来日すること!


あらすじはこちらに
http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=25



父親がどんどん脱皮し、蝉の抜け殻の人間バージョンみたいなのが周りにどんどんたまっていくという奇想天外なアイディアは原作がそもそも面白いのだろうな。脱皮するたびに若返る父親に対し、息子は現在進行形で生きていて、脱皮前は痴呆気味でもはや会話もままならなかった父親の、若い頃の姿が目の前にどんどん現れ、友達のように一緒に行動するうちに、父親の半生、家族の歴史、そして香港の現在から過去が、時系列を遡り物語られていく。ルイス・クーは終始、受けの演技で、これはフランシス・ンの映画なのだと思った。若返っていく父親は、その年齢の頃に流行った服装や髪型をしており、香港の人々が観たら懐かしくてしょうがない映画なのだろうな。


「大陸から夢を求めて香港に到着した人々が奮闘し根を張るまで」という物語は香港映画のひとつのジャンルで、ピーター・チャン「ラヴソング」がその筆頭として、ジョニー・トー「スリ」も少しその要素があって、「シェッド・スキン・パパ」は、日本の原作に、そのようなとても香港らしい味が加えられた映画だと思った。



映画祭のコンペで観るというより、俳優のファンの人々が、今は亡きシネマート六本木の片隅で観るのが似合いそうだったな。などという私のボンヤリした感想は、上映後登壇したルイス・クーの謎めいたデザインのスーツの印象によって上書き保存された。よく動く子役の少年が一緒に登壇していたけど、フランシス・ンの実の息子だとか。フランシス・ンが役作りということなのか、撮影前にルイス・クーの父親と食事したと言っていたのも、素敵なエピソード。


映画祭の公式チャンネルがあるのね。記者会見の様子はこちら。ルイス・クー、あのスーツ着てる!部屋に「野良犬」「自転車泥棒」「ゴッドファーザー」のポスターが貼ってあった理由についても監督が語ってる。純粋に好みの映画で、黒澤明も大好き。「自転車泥棒」は特に「シェッド・スキン・パパ」と同じく親子の情の物語だから、とのこと。




俳優のことばかり書いたけど、ママ役の若い女優さん、満島ひかりっぽさもあって可愛い人だった。

2016-11-04

休憩



先日「七人の侍」を観た時、長い映画なので途中休憩があって、その時のスクリーン。良きフォント。休憩時間もずっとあの映画の音楽が鳴っていたのも粋な計らいだった。


消防法か何かの関係で、日本では規定の時間を超える映画は、必ずインターミッションを入れなければならない…と昔、何かで読んだ記憶があるのだけど、私の記憶違いのようで、wikiによると「映画館が勝手に上映を中断して休憩を入れているわけではなく、映画の制作者側が休憩を入れること、および休憩を入れる箇所を決めている」とのこと。最近、「ママと娼婦」(220分)の上映時に休憩がなく、あれ?と思った。行けなかったけど昨日の「牯嶺街少年殺人事件」(236分)も休憩なしの通し上映だったらしい。


昨夜映画祭が終わり、仕事その他の慌ただしさで薄情なほど即座に頭が切り替わった。11月は映画を観るのもしばし休憩になりそうだけど、フィルメックスのチケットはしっかり3枚購入。気分転換に観に行こう。東京国際のチケット騒動を経て、チケットシステムに恐怖の念を抱いているけど、あっけなく買えた。


http://filmex.net/2016/

2016-11-03

TIFF2016 / 走り書きメモ4



ピカッと晴れた東京、文化の日。東京国際映画祭も最終日。朝から観客賞の授賞式&上映へ。コンペ、今年は3本しか観られなかったので、賞予想もできなかったけど、評判のよさから「ダイ・ビューティフル」が観られたら嬉しいな、と思っていたら観客賞を獲った。嬉しい!



観終わり、午後のグランプリ上映のチケットは取れず、夜のを取ったのでいったん帰宅。配信で各賞発表を観る。ARIGATO賞という謎の賞をもらったため登壇するゴジラ。





尻尾が長いので動きが滑らかではなく、他の登壇者がクスクス笑う中、役割を全うしていたゴジラ。視界がシュール。


各賞発表を見届ける。私が観た中では「サーミ・ブラッド」は確実に賞に絡むだろうな、と思っていたので順当、という印象。


http://2016.tiff-jp.net/news/ja/?p=41377





夜、再びヒルズへ。本日の2本。左が観客賞、フィリピン映画。右がグランプリ、ドイツ・オーストリア合作。「ダイ・ビューティフル」が選ばれるとは東京の観客は攻めてる!と思い、「ブルーム・オヴ・イエスタデイ」が選ばれるとは、審査員も攻めてる!と思った。観終わった後、どちらもその国の歴史や文化も踏まえた上で、新しい一歩を踏み出す映画だったことにとても満足。去年のグランプリ「ニーゼ」はいい映画だったけど、かつて実在した人物の評伝的映画で、映画祭では新しさを感じる映画を観たい私としては不満が残った。「ニーゼ」以外に新しさを感じた映画がいくつかあったから。今年のコンペ、合計5作しか観られなかったけど、逃した中に、受賞した映画より、私がより新しさを感じる映画はあったのかもしれない、と考えると、全部観る時間はないことは知りつつ、映画祭よ…終わらないで…。


帰り道、TOHO CINEMASのポスターは全部、映画祭のものからロードショーのものに変わっていて、ブリジット・ジョーンズの日記の最新作のポスターを横目で眺めつつ、祭は終わったね…と寂しい気持ちに。

2016-11-02

Tokyo nightview



19時ごろ、外出先で真っ暗な会議室に入って電気を点けようとしたら、窓の外、隣のビルの眺めがこんなで。四角い窓からびっしり働く人々が見えて、標本みたい。虫眼鏡で観察したくなる。


人間が蠢く屋内の断面図をスパッと見せるポツドールの舞台セットみたいでもある。「何者」、予告篇を観た時、あ、ポツドールっぽい(三浦大輔っぽいと言うべきか)と思って、まだ観られていないけど、観たい理由のひとつ。


エドワード・ヤンの「ヤンヤン 夏の思い出」の東京の場面で、丸の内なのかな。オフィス街の夜が映るショットがあって、観るたびに泣きそうな気分になるのは何故なのか、自分でも解明できていない。



明日は映画祭最終日。

2016-11-01

2016/11/1



映画祭で会ったお友達にいただいたパン。…ペンギン…!!!!




パウンドケーキのスライスに貼られたシール…!ぱんやのパングワン。パングワンはペンギンのフランス語読み。ペンギン、パン持ってる…。歴史が長いね?と思ったら、パングワンと化す前は精養堂という名前だったらしく、大正14年創業なのだとか。


季節ごとのペンギンパンのバリエーションも。私がいただいた黒は定番でクリームパン、黄色は季節ものでかぼちゃパンだった。店の中もペンギンだらけ。天国って三茶にあるんだね!


http://matome.naver.jp/odai/2140566519255515701


あっという間に映画祭大詰めなれど、平日は立て込んでいて去年のように夜遅くの上映にも行けない。最終日、観客賞とグランプリを観に行くつもり。観客賞は発表と上映がほぼ同時だった気がするので、本当に会場に行くまで自分が何を観るのかもわからない。観客賞とグランプリの間にいったん帰宅し、その間中継で各賞発表を観て、グランプリを夜にまた観に行く…という去年はその流れだったのだけど、今年もそうなるのかな。見逃しているフィリピンの「ダイ・ビューティフル」という映画、観たいから受賞して欲しい。日曜に観た「浮き草たち」「サーミ・ブラッド」どちらも素晴らしくて数日置いて2度目を観るのもまるで問題ないので、それでもいい。今年は見逃している方が多いから、何が選ばれても楽しみだな。


東京国際が終われば、あっという間にフィルメックスが始まる。映画好きの秋は慌ただしい。

http://filmex.net/2016/