CINEMA STUDIO28

2016-01-31

Today's theater

 
 
1月、こんなに映画を観るつもりはなかった。のんびりするはずだった。後半、怒涛の(大袈裟)渋谷通いになったのはオリヴェイラのため。特集自体は金曜まで続くけど、都合がつかないので私はひとまずオリヴェイラ納め。
 
 
ユーロスペース、昨日ずっと満席立ち見だったせいか、今日はさすがに大きなほうのスクリーンに移ってた。満席じゃなかったけど、9割がた埋まってたかな。オリヴェイラ、あまりソフト化されていない(過去に出たDVDが値段高騰してる)ものが35㎜フィルムで観られるし、まとまった特集上映がありそうでない人だからかな。何かしら映画好きを熱狂させる要素をたくさん持ってる人だと思うので連日満席の人気も納得。今日は「過去と現在 昔の恋、今の恋」「春の劇」を観た。今回のプログラム、「階段通りの人々」だけ未見なのが心残りだけど、川崎に巡回した時につかまえられるかなぁ。夏にあるという第2弾、今から楽しみ。
 
 
最終週、あえてお薦めを書くとすれば、「カニバイシュ」で唖然として、トリの1本「アブラハム渓谷」で、うっとりしっとりと特集を締めくくるというコースを推奨したい。
 
 
オリヴェイラの写真を探すと、どれも素敵で迷いながら選ぶことになる。映画はもちろん、本人もフォトジェニックな人。

 

2016-01-30

Today's theater

 
オリヴェイラとゴダール。考えたことなかったけど並ぶと、似てる…!
 
ユーロスペースのオリヴェイラ特集、平日の上映時間が会社員には厳しいので週末頼みなのだけど、今日行ってみると小さいほうのスクリーンに移っており、「神曲」「カニバイシュ」、両方とも最終的に満席立ち見になってた。行かれる方には早めのチケット確保をおすすめいたします。最終週に入るので平日でも油断できないであろう。
 
 
何年かぶりに観た「アブラハム渓谷」の余韻が長く続いており、再見ながら今年のベストに入るかも…まだ1月だけど…と、うっとりしていたけれども、「カニバイシュ」よ。今年の珍品大賞かも。まだ1月だけど!これが同じ監督の、5年しか間がない映画とは、そしてキャストもほとんど同じ。オリヴェイラの映画、どんな内容でも必ず、目を疑うようなシーンが存在するけど「カニバイシュ」のラスト何割かはそんなシーンのごった煮であった。心が触れすぎて、回復には時間を要する。

 

2016-01-29

election 黒社会

 
 
この間、心が軽く冷えたので、こいつぁ良くねえ、ガツンとあれが必要だ。と、さっさと世界との接続をオフ、部屋を暗くしてキメてやったわ…ヤクザ映画を。エモーショナル、センチメンタルが苦手なので、ちょっといい話など全然役立たずで、よくできたヤクザ映画ほど癒されるものはない。
 
 
ジョニー・トー「エレクション 黒社会」、最高であった…。香港版アウトレイジのような物語だけど、アウトレイジよりこちらのほうが先だから、むしろアウトレイジが日本版エレクションということか。黒社会の最有力組織の会長は2年に一度、選挙で選ばれる。穏やかで冷静な男、武闘派だが商売は上手い男がその座を狙う。
 
 
レンゲ(中華を食べるときに使う陶器製のアレ)をバリバリ食べる、凶器は銃ではなく鉈を多用、他に丸太、スコップなど。スターウォーズでも、ミッションインポッシブルでも、散弾銃に空中戦、大がかりな攻撃方法がいくらでもあるのに、見せ場は原始的な方法(殴り合い、ライトセーバー等)で1対1なのね。映画的緩急ってやつだな、と思っていたのだけど、この映画は銃が登場せず(キタノ映画との大きな違い)、身体を接近させた生々しい暴力ばかり登場する。
 
 
どの男もいい顔してるなぁ!どうやったらそんな風にお腹だけ太れるの…?というおっさんの体型すら視覚のアクセントとして機能しており、特にレオン・カーフェイ…あまりに久しぶりだけど「愛人 ラマン」の面影はどこに…?という変貌ぶりで、シャツ、パンツ、ジャケット、髪型、靴、歩き方…すべて特徴があり、それぞれの個性がぶつかり合いまとまりに欠くかと思えば…強い存在感がすべてを凌駕し異様な調和を生んでいた。いるいる、こういう人…大阪を歩くとしょっちゅう…東京だと浅草界隈。着こなしがうまいって、むしろこういう人なんじゃないかしら。
 
 
夜の香港。ネオン、路地、屋内でも照明が絶妙で、男たちのフォルムをこれでもかと美しく強調していた。リアリティなど排除し、光を加えたい場所に衒いなくスポットライトが注がれる。自然光で撮られた白昼のシーンとのコントラストも見事。
 
 
 
 
田宮二郎の香りがするルイス・クーが冒頭、大学で経済学の講義を聴く場面いい!穏やかな中に時折、獣らしさを滲ませるサイモン・ヤムの姿と猿の群れを往復する最後のシークエンス。古めかしい儀式しかり、掟、掟と強調するくせに、抗いがたい獣性の発露で、均衡が崩れていくの、たまらない。長くない映画にギュッと見どころを配置し、見事な娯楽映画だった。続篇も早く観たい…のだけど、さまざまな人に「ミンチ肉がしばらく食べられなくなる」と忠告をいただいており、むしろ興味が募るわ…。

 

2016-01-28

Today's theater

 
 
写真は土曜に撮ったもの。仕事帰りにオリヴェイラ。長篇デビュー作「アニキ・ボボ」、晩年の「レストロの老人」、それぞれ1942年、2014年の映画…この2本の間に72年の年月が流れてるけど、どちらも同じ人物が撮ったもの。
 
 
オリヴェイラに強烈に惹かれる理由を考えてみるのだけど、やっぱりよくわからない。しかし「アブラハム渓谷」の記憶が残った瞼で「アニキ・ボボ」を観ると、オリヴェイラは猫を投げがちな男である。猫に恨みでも…?

 

2016-01-27

2016/1/27

 
冬の夜空に浮かぶ月が、今夜はちょうど猫の目の形をしていて、とぼとぼ夜道を歩く帰り道、巨大な黒猫に片目で凝視されているようだわ、と思うと、不意に猛烈な心細さに襲われ、早く春にならないかなぁ。家に着くとポストに届いていたポストカードは国芳の猫。偶然。
 
 
心細いので⁈借りてるDVDの中から、ジョニー・トーの香港黒社会ものを観てから眠ろうっと。夏に遊びにきたシネフィル・イタリア人に「ヤクザ映画は何を観ればいいのだ?」と唐突に尋ねられた。まるで詳しくないけどヨーロッパでも観られそうなのだとフカサクの「仁義なき戦い」とかタケシキタノの「アウトレイジ」などが良いのでは?ヤクザ映画に興味あるの?と答えると、「せっかく日本に遊びに行くのだからヤクザ映画で予習しようと思って適当に借りてみたら「エレクション」っていう香港映画だった!間違っちゃった…けど、めちゃくちゃ面白かったから最後まで熱狂して観たよ」と言っていた、噂の「エレクション」を観る所存。

 

2016-01-26

雪の女王



雪が降ったら観ようかな、と思っていたアニメを先週、東京に雪が降ったので観た。「雪の女王」と言っても、アナと…ではなく、1957年ロシアのアニメ。小規模ながら新訳版が公開されてソフト化もされたのは、宮崎駿が若き日に観て心酔したアニメだから、らしい。


誰にでも好みというものはあるもので、ジブリに詳しくないけど、宮崎駿は、大切なものを守るために裸足で戦う少女が好きなのだなぁ、と思う。仲睦まじい幼い少年少女(恋の香りはするけども、彼らはきっとまだ恋という言葉にすら出会う前のような)、吹雪の日、少年が雪の女王に遠くに連れ去られてしまう。離れ離れになった少年を追って旅する少女のロードムービー。


少女が旅に出るのは春。よそゆきの服を着て、赤い靴を履いて出かけるのは春だから、ということもあるだろうし、好きな少年を探しに行くからお洒落して、ということもあるだろう。小川でひとり船に乗った少女が、履いていた靴をあっさりと川に流してしまう場面が印象的。とっておきの靴のはずなのに、靴を放った川の水面に、少年のところに誘ってねと願掛けしながら、あっさり手放すのだ。旅のはじまりはそんな場面で、靴を吸い込んだ水が波打ち、少女を勢いよく次の場所へ連れて行く神話めいた展開。


道中、裕福な家に立ち寄って雪の道をゆくのにぴったりなふかふかした装いを一式プレゼントされもするけど、山賊の娘にそれを奪われても惜しむそぶりもない少女は、動物の首に縄をかけ、お前たちは私のものよ!と生き物も物のように暴力的に支配していた山賊の娘にも変化をもたらす。そうやって少女の身の上の装身具が減り、増え、また減るのを物語の筋書きよりも興味深く眺めた。私は女がどんどん身ひとつになっていく映画が好きなのだ。


川島雄三「女は二度生まれる」は、囲われていた男にもらった時計をはずし、いよいよ手ぶらになった場面で終わる。スタージェス「パームビーチストーリー」は、夫婦喧嘩の末に身ひとつで家を飛び出した妻が、酔狂な射撃軍団に出会ったり億万長者に求婚されたりした末に夫のもとに戻ってくる。「ヴィクトリア」だってヴィクトリアは最後ほぼ身ひとつになった。彼女たちが持ち物ひとつ手放すたび、内面に変化が訪れる。もしくは内面が動いたから持ち物を手放していく。


「雪の女王」は無垢な愛がつめたいものを溶かす筋書きではあるけども、私には大切なものは物質ではないから、身ひとつでも大丈夫とずいぶん幼くして知っている少女の物語に見えた。


靴を川に流すあの描写だよなぁ!と思っていたら、宮崎駿氏のコメントも…


「そういうのって理屈がないんだよね。これから歩いていくのに、なぜ裸足で行こうとするのか。裸足になるっていうのは必要なんです。主人公はものに守られていたらダメだって。素裸にならなきゃダメだって。どんどん失くしていく。失くしていって、初めてたどり着ける場所や、手に入れられるものがあるんです。」


ロシア語の響きについても触れているけど、 幼い子供が話すロシア語って(変な他意はまったくなく)私の耳には、ちょっと白痴美のような美しさがあるな、と思った。言葉そのものが持っている密度が、少し間延びしているというか、歌のように聴こえて、例えば中国語の持つみっしりした密度と真逆の美しさがあった。




そして雪の女王。2人の無垢な愛の小道具のように使われてるけど、タイトルは私やねんで、と言ってるような。宮崎駿だけじゃなく、小林幸子にも影響を与えたのではないかしら、と年末の風物詩感を漂わせるルックス。


特典で収録されている「鉛の兵隊」も哀しくも美しい愛のお話。「雪の女王」にも「鉛の兵隊」にも、ちょこまか動く小さいおっさんが登場する。「雪の女王」では小さいおっさんは物語の語り部的な役割を担うのだけど、最後に登場して2人は幸せに暮らすでしょう。みなさんも幸せにお過ごしください。と、唐突にこちらの幸せを願ってくれたので意表を突かれた。

2016-01-25

2016/1/25

 
 
昨夜、眠る前に借りておいた市川崑「ぼんち」を半分まで観て、そこで0時になったのでストップして眠った。市川崑映画祭で観たかったのだけど、時間が合わなくて。何度も観ているけど、ずいぶん久しぶりだから細部を忘れており、こまごま発見がたくさんある。
 
 
船場の足袋問屋の何代目か、それまで女ばかり生まれて番頭が婿に入る形で何代か続いたのが、久しぶりに生まれた男の後継ぎが市川雷蔵演じるきくぼん。女優陣はしっかり覚えていたけど、男優の印象がまるでなくて、雷蔵の父親役が船越英二だったとは。そして臨終の間際にきくぼんに言うのが「きこんじょうのあるぼんちになりや。ぼんぼんで終わったらあかんえ」という言葉なのだけど、この2つの言葉にそんな違いがあることを、生まれてこのかたずっと関西人だけども初めて知った…!おんなじやと思ってた…。なんでも、放蕩を重ねても帳尻の合った遊び方をするのが「ぼんち」らしい。ぼんぼんはそこには至らず帳尻の合わない遊び方をする男、ということでしょうな。「あほぼん」のぼんは、ぼんちのぼんやなくて、ぼんぼんのぼんやねんな(話が「ちゃうちゃうちゃうんちゃう」みたいになってきた)。
 
 
朝の連ドラ「あさが来た」を毎朝楽しみにしており、あの「〜だす」という語尾、使ったこともないし、使ってるのも聞いたことないなぁ。と思いながら観ているのだけど、「ぼんち」で中村玉緒が〜だす〜だす、言っており、船場では今でも使われているのか、「ぼんち」の時代ぐらいまでの話なのか、言葉ちゅうもんはほんま、馴染みのある言葉でも知らんことばっかりやな!びっくりぽんや!と、これから残り半分を観るところ。

 

2016-01-24

Today's theater

 
 
本日の映画/映画館。早稲田松竹、私の知る史上最も混んでいた。朝10時の回からすでに満席。寒い朝だったのに、みなさん侯孝賢のために早起きして集ったのだなぁ。私は侯孝賢のあまり良い観客ではなく(必ず眠ってしまう)朝イチということで入眠警報を自分に鳴らしていたのだけど、最前列で観たせいか、会場の熱気もあってか初めて眠らずに最後まで観られた。どれだけ家で観る環境を豪華にしようと、家ではきっと最後まで観られないだろう。そういう映画もたくさんある。
 
 
この番組は金曜まで。悲情城市は35㎜フィルム上映!
 
 
昨日のユーロスペースといい、この週末に行った映画館はどこも満席立ち見だった。映画館、もしや冬の季語。

 

2016-01-23

Today's theater

 
 
ガス問題は駆けつけてくださった東京ガスの皆様のおかげで早々に解決。山本さんありがとう!おかげで暖かいお風呂に入り紅茶も飲め、健やかに眠って起きて、渋谷へ。魅力的な特集上映があちこちであって映画好きが選択を迫られる今週、あらためてサイトを見ているうちに、オリヴェイラを観ないなんて愚の骨頂という気分で満たされた。
 
 
ユーロスペースで今日から2週間!追悼特集、これがパート1で、夏にパート2があるらしく、全国巡回するみたい。期間が短くてうまく観られなかったものは、別の街でつかまえられますように。
 
 
今日は「アブラハム渓谷」を。15時からの上映、13時過ぎに到着してチケット確保。整理番号41だった。何年か前に同じスクリーンで観たのだけど、その時も満席立ち見で、私はギリギリ隅っこに座席を確保できた。3時間以上ある映画なので立ち見は辛い。平日あと2回上映あるけども、観る予定の方は早め到着をおすすめしたい。
 
 
35㎜フィルム上映「アブラハム渓谷」、最初に観た時とまた印象が違い、複数いる女性たち、あれは1人の女の異なる面を何人かに分散させただけなのではなかろうか。最初はとにかくエマばかり観ていたので、そのようには思わなかったけど。
 
 
しかし「アブラハム渓谷」を観た後、すらすら言葉が出てくる人なんているのかしらん。当分は心の底に彼女たちを抱えて暮らすことになるだろう。
 
 
外に出ると、ひゅるりら、という擬音が似合うつめたい風が吹いていた。

2016-01-22

2016/1/22

 
 
映画グッズは集めようとするとキリがないけど、手ぬぐいがあれば購入を検討する。という基準に基づき、スターウォーズグッズ、こちらの手ぬぐいを購入。左の上から3つめが愛しのBB-8。こうやって描かれると家紋のようで、手ぬぐいに似合う!すごく日本っぽいグッズだけど、世界中でその国らしいスターウォーズグッズが売られてるのかな。
 
 
 
寒波到来に怯える金曜夜、帰宅してお湯を沸かしたまでは順調で、お風呂にお湯をためていたら、あれ…なんかおかしい…ガスの燃焼マークが点滅したまま止まらない。東京ガスに電話してみて、コンロの火はつきますか?と聞かれたので、試してみると、つかない。さっきまでついてたのに…!寒波のせい…?もしくはガス管の中に宙吊りのトム・クルーズが…?あるいは宇宙にいる父からの暗号メッセージ…?毎日のように停電していた90年代後半の北京や、何世紀前に建てられたかわからないパリのアパルトマンでも様々な苦難を乗り越え機嫌よく暮らしていた私なので、こういう時の対処は素早いのだけども(まぁ、すぐ電話かけるぐらいだけど)、そういえば一昨年の今頃、東京に記録的な大雪が降った頃、ちょうどタイミング良く?エアコンが壊れ新しいのがとりつけられるまで数日エアコンなしだったなぁ…あの時は「カレーは防寒具」という名言を生んだのだった。と、懐かしく思い出しながら、今、足立区の外れにいるから到着まであと30分ほどです。という東京ガスの皆様をお待ちしているところ。カモン熱湯!

 

2016-01-21

Today's theater

 
 
本日の映画/映画館。2日連続で夜に出かけて大丈夫かな…と思ったけど「THE COCKPIT」は64分の映画、観終わってもまだ20時過ぎだった。デジタル化が進んでから長い映画が増えてるように思うけど、そもそも集中力が続かないほうなので短いの大歓迎。64分でも普通の長さの映画分の密度があり、短さを感じさせない。
 
 
ヒップホップの1曲が生まれるまでの2日間。今世、女に生まれたことに何の意見もないけど、生まれ変わるなら男の人生を経験してみたい。この映画を観てまたそう思った。彼らにおおいに嫉妬もした。
 
 
また近々書きます。Bonne nuit!

 

2016-01-20

Today's theater

 
 
本日の映画/映画館、TOHOシネマズ六本木、大好きなスクリーン7にて。公開から1ヶ月遅れではあるけど…ついに…!年明けから夜の外出を控えていたので、新年初・夜の映画であった。予告編を観た時から、BB-8!可愛い子!と、ときめいていたのだけど、観終わって今、BB-8‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎(声にならない叫び)という余韻に浸っておる。

 

2016-01-19

Fantastic Mr.FOX

 
 
週末、友達から借りた「ファンタスティック Mr.FOX」をDVDで観た。私が鳥類(ペンギン)の話をしていても、それよりも狐!狐!と、これを観てから友達は狐に夢中。観終わったら絶対 狐>鳥 になってるから!と言われたので、どれどれ…と。ウェス・アンダーソンが監督したアニメ。DVDパッケージによると「構想10年、撮影期間2年、総カット数125280 CG時代にあえて挑んだこだわりのストップモーション・ピクチャー!」人形をちょこちょこ1カットずつ動かしながらアニメにしていくのだ…ということも知らずに観たので、はぁ素敵な映画だった…と、流れでメイキングを観てみて驚愕。ウェス、どれだけこだわりの男なの…。
 
 
狐の夫婦、盗みで生計を立てていたけど子供が生まれたことをきっかけに、まともな職業に就く。しかし徐々に野性の本能が疼き出し、盗みまくる狐と、怒った人間のバトルに発展していく、という物語。狐パパもママもかっこいいのだけど、かっこいいパパや有能ないとこにコンプレックスを抱く思春期真っ只中の息子の描写が良かったな。特にこの、僕は小さいから!の場面。
 
 
 
そしてエンドロールでようやく、狐パパの声はジョージ・クルーニー、ママの声はメリル・ストリープだったと知った。はぁぁ、ぴったりのキャスティング。かっこいいはずである。メイキングで楽しかったのは、普通、アニメの声は一人一人がマイクに向かって自分のパートの声入れをするのが、この映画はキャストが集って演技しながら声を撮っていること。狐パパがバイクに乗るシーンの声、ジョージ・クルーニーは実際にバイクに乗ってるし、みんなで穴を掘るシーンは、みんな頭を揃えて穴を掘ってた。きらめくオスカー俳優が揃いも揃って片田舎で演技してるけど、その姿は映像としては使われない…という贅沢でユニークなつくり。映画館で観ればよかったなぁ!と思ったけど、すぐ特典映像のメイキングが観られるのはDVDの良さだわ。
 
 
これまでのところまったく縁のないハロウィンのイベントに今後、万一参加することがあれば、狐ママのコスプレをしたい。
 
 
狐の魅力はよくわかったけど、観終わって狐>鳥にはならなかったし(鳥とは長いつきあい)、狐パパがかつて鳥泥棒をして生計を立てていたという点については、!鳥に何すんの、狐!と思ったことを返却の際は友達に伝えたい。

2016-01-18

ルビッチ顔

 
 
土曜、いつぶりかわからないほど久しぶりに庭園美術館へ。今、映画館に通ってるぐらいの頻度で美術館に通ってた時期があって、その頃、庭園美術館、とても好きだったな、と思い出しながら。リニューアルした庭園美術館は新館が近代的になり展示スペースもあった。
 
 
 
特に調べずに行ったら「ガレの庭」という展示の初日だった。これって先週、ふらっと行っていたら何もやってなかったってことだよな…くわばらくわばら…。エミール・ガレは自宅の広大な庭に何千種と植物を植え、植物学者としての顔もあり、花や虫への興味と詳しさがそのままデザインに活きている。とても柔軟な人だったようで、ジャポニスムが流行れば日本の植物を庭に植え、伊万里焼そっくりの陶器をデザインしたり。でもそのままそっくりは嫌だから、一面だけデルフト焼っぽく西洋の風景が描かれていたり。日本の影響を受けて西洋でつくられた陶器やガラスの作品が、西洋に影響を受けて日本で建てられた館に並ぶ、庭園美術館ならではの展示で、思いつきで来たのに堪能…。
 
 
 
去年、文化服装博物館に、文化学園のコレクションから、それを着た人がはっきりわかっている着物、洋服、小物類の展示を観に行った時、朝香宮様の際立った洒落者っぷりに驚いた。旅のトランクに入ってる香水瓶や小物のひとつひとつにモノグラムが入ってたりする。庭園美術館の凝りっぷりから考えるに、お家だけではなく着るものにもこだわりはあったのだろうな、と思っていたけど、こんな人だったとは…洋服ってその人を想像以上に物語るものですね。と、Google先生にさらに詳細を尋ねてみたら「パリの皇族モダニズム」という書籍を発見した。庭園美術館の家主、朝香宮様が20年代、パリに何年か暮らした時、あれこれの買い物の領収書を綴ったものが、どのような経緯で巷に流れたのか、古物商が持っていたのを何年か前、庭園美術館が買い戻したらしい。「領収書が明かす生活と経済感覚」というサブタイトルどおり、レストランや仕立屋の領収書から生活を推測したり、当時の庶民の物価水準と照らし合わせてみたり、という内容なのだけど、その内容が質量ともに尋常ではないことが面白い。到着した日に高級レストランに牡蠣を食べに、翌日にはオスマン通りのヴォワザンに三揃えを誂えに、馬術道具はエルメスで。異国生活にウキウキの様子が伝わってくるお買い物っぷり、1枚のドレスが庶民の生活費の何百倍もしたりもして、その頃東京は震災で.と考えると物議を醸し出しそうな内容ではあるのだけども(だから慌てて買い戻したのかしら…)対価を払う人がいてこそ文化は存続し、今こうやって私が庭園美術館を楽しんだりもできる、とも考えもしたり、興味深い研究を紹介した本なのだった。
 
 
そして朝香宮様は鳩彦さま、というお名前らしく、鳩さまと心の中で呼びながら読み進めていたのだけど、鳩さま、ルビッチ映画に出てきそうなお見た目である。ルビッチ・アメリカ時代じゃなく、ドイツ時代の…例えば「思ひ出」の、あの俳優みたいな…。
 
 
 
あ、「思ひ出」はローマの休日の男女反転版のような物語で、王子様の物語なのだった。ルビッチ顔、というより王子顔、ということなのかもしれない。

 

2016-01-17

Mission:impossible rogue nation

 
 
先週ギンレイホールで観たミッション:インポッシブル ローグ・ネーション、最高だった。ジェイミー・レナー、サイモン・ペッグとのチームの協力体制、前作が壮大な前振りとして機能していて、予習して良かったな。サイモン・ペッグが特に好きで、彼はさりげなく3から出てた。ウィーンでのオペラのシーン(タキシードにボウタイ、メガネ姿にまず萌えて)、PCになるパンフレットって…!最後の強敵を倒す場面がちょっと呆気ないかな…とは思ったけれど。
 
 
1からコツコツ見ていると、20年の時間が経過しているので、PCがどんどん薄くなり、興味深く見ていたマスク製造機も、今観ると3Dプリンター的な性能ね。と、すんなり理解できるし、M:Iシリーズに流れる時間の分だけ現実の世界も進化してるな、と思うのだけど、それにしてもトム・クルーズの身体能力よ。冒頭の飛行機シーンといい、映画の神様が映画ファンのために特別に創りたもうた人間。トムも人の子である以上、年齢相応に身体機能も衰えてるはずだと思うのだけど何を食べてどう身体を準備すればそれが可能なのか教えてほしい。
 
 
ローグ・ネーションの監督クリストファー・マッカリー(ユージュアル・サスペクツの脚本でお馴染みの人)とトム・クルーズのコンビは、何年か前の「アウトロー」でも組んでいて、国際フォーラムであったジャパンプレミアに誘ってもらい、トム来日の舞台挨拶も観たのだけど、トム・クルーズって日本人が親近感を覚えるほど小柄な人で、通訳として隣にいた戸田奈津子さんがわりと大柄な女性ということもあって、なんだか腹話術師(戸田さん)とその人形(トム)みたいなバランスだわ…という感想を持ったことが嘘のように映画のスクリーンに映ると大きな存在感があるのがいかにもスター!ちなみにそのプレミアでは、監督、トム、ヒロイン役のロザムンド・パイクが登壇し、監督もトムも素敵だけど、ロザムンド・パイクが誰よりも男前…この女優さん、興味深い…と思っていたのでその後「ゴーン・ガール」でのゴーン・ガールっぷりには拍手喝采であった。
 
M:Iシリーズは監督が作品ごとに変わる楽しみもありながら、シリーズとしての一貫性もあり、イーサン・ハントの個人史が回を追うごとにきちんと積み上がり徐々にアクション、スパイものの楽しみの他に1人の働き者のスパイの人生を見守る楽しみも増していくのが素晴らしい。トム・クルーズが製作も兼ねていて、007のように定期的に主演が変わることもないからかしら。
 
 
 
 
ヒロイン役の女優さん、毎回、それほど知名度は高くないながら(レア・セドゥも起用された当時はさほど有名ではなかったような)、アクションもできてミステリアスでもある良いキャスティングだな…と思うののだけど、今回のレベッカ・ファガーソンはシリーズのヒロインの中でも随一の素敵さだったと思う。ドレスアップしたオペラのシーンより、この写真のようなシンプルなお仕事スタイルがシックで。特に靴がいつも素敵で、登場すると足元からチェック!
 
 
既に続編も製作に入ってる?と聞いたので、新作は必ずやロードショーで大画面で観なければ。

 

2016-01-16

市川崑映画祭

 
 
市川崑監督の生誕100年記念映画祭、本日初日の初回、チケットをとっておいた「おとうと」を観に行く。これも「浮雲」を観たのと同じ頃に一度観たきり。画面の大きさやデジタルリマスターの美しさのせいもあるのか、発見するところが山ほどあった。他の役柄から受けるイメージとは違う役作りの岸恵子がいい…!と思いながら観終わり、本人がトークで登壇された。
 
 
鮮やかな赤の洋服に5㎝ほどのヒールをあわせた岸恵子さんは時空を超えたルックス、活動的で明るく、他の女優さんたちへの賛辞もふんだんに、いつも忙しそうだから滅多に会わないけどたまに会ったら話が面白くて止まらないような、理想の女友達!という印象の方だった。「細雪」の吉永小百合についてのコメントが、ああもう私もそう思ってるけどその点についての話し相手がおらんよ!と思ってることズバリだったので、喫茶店で岸恵子さんと待ち合わせて「細雪」の吉永小百合についてトークで盛り上がる…(私が「すみません、岸さんとお会いしてるのに、吉永小百合さんのお話ばかりして」と10分に一度ぐらい謝る)という妄想にしばらく耽った。
 
 
本日の岸恵子さんはこちら。年齢の概念とは。
 
 
映画とトークについては追って。角川シネマ新宿で観る「おとうと」は最高だったとひとまず記録。

 

2016-01-15

2016/1/15

 
 
鈴木理策さんの雪の結晶、写真と映像。夏に観た時は真逆の季節を感じて涼やかな気分になったけど、半年経つときちんとまた季節は巡ってくるもの。東京の冬は今週ようやく始まったように思う。週末は久しぶりにしっかり出かけ、家に帰ったら冬らしいロシアのアニメを観るつもり。Bon week-end!

 

2016-01-14

浮雲

 
 
体調も戻ってきたし、そろそろ大丈夫か…そろりそろりと「浮雲」を観てみたら、さすがに名作っちゅうもんは侮れんもんやねぇ。という感じで2時間あっという間だった。ずいぶん前に一度観て以来なので二度目なのだけど、物語のトーンやスピードや音楽は忘れていないもんですねぇ。
 
 
戦時中に仏印で出会い、戦後、日本に戻ってからもずるずると関係は続く。一組の男女の場所を変え時間をかけて痴情はもつれる話ではあるけれど、戦後の何もない、何も持たない(ただし男は妻を持つ)2人の人間がいかに生き延びていくかの、縋るようなやるせない選択と生活も描かれていて、ああ、こんな背景があるから2人は離れられないのか、もしくはこんな背景がなくても2人は離れないのか、途中からわからなくなり、わからないから最後まで集中が途切れない。
 
 
高峰秀子に森雅之が素晴らしいなぁ。吐き棄てるような言葉を唇から押し出し、しかし目の隅では情を滲ませるような細やかな演技。そして2人に絡む伊香保の女・岡田茉莉子!伊香保の場面は半分ほどはセットではなかろうか。脱衣場の籠に準備された着替えの描写よ…!
 
 
 
 
…と、ここまで褒めておきながら何ですが、森雅之が原稿用紙に文章を書いていて、農業雑誌用の原稿らしいのだけど、「熱帯の果実の思い出」というタイトルが書かれていて。それが目に入った時、こんな甘ったるいタイトルで物を書くとか…やっぱりこの男、私は嫌いだな、と思ったのであった。

 

2016-01-13

女性に関する十二章

 
 
週末から始まる市川崑特集、スケジュールをチェック。若尾文子映画祭と違う点は、私がすでにほとんどの映画を観ていること。ユーロスペースのオリヴェイラ特集も同時にあるのでそちらにも行かねば、と思っておるし、市川崑監督ならもうちょっとレアなのを観たかったようにも思う。一度だけ神保町シアターでかかったのを気まぐれに観に行って、もう一度観たいな、と思ってるけどなかなかかからない「女性に関する十二章」など。
 
 
津島恵子や有馬稲子が出演するラブコメで、伊藤整が「婦人公論」に連載していたエッセイがベースになっている。書籍化され当時ベストセラーになったらしく、私は2005年限定復刻版を、恵文社で偶然、古本で手に入れた。1950年代の女性への生き方指南書。映画は永すぎた春ゆえ結婚前に倦怠期を迎えてしまった男女の顛末をオリジナルストーリーに仕立て、ところどころ伊藤整自身のナレーションが挿まれ、出演シーンもあった記憶。有馬稲子がカメラ(=伊藤整目線)に「先生?」と話しかける凝った演出もあって、古いフィルムでバチバチ音の鳴るコンディションながら、最後まで見飽きなかった。
 
 
電話の普及が珍しかった当時、恋人からの電話が喫茶店にかかるのを待ってたり、50年代のデート風景も楽しく、そして何よりラストシーン…!2人で死のう、と海に入るのだけど、水面に月が煌めいて、死ぬにはこの世は美しすぎる…って引き返す場面がとっても素敵で。そしてそして2人はついに…結ばれるのかと思えば結婚前にそれはまだ御法度なのか、ついに…接吻…!なのが、結婚前にどこまで進むのがいつまででいつからなのか問題を私に植え付けるきっかけになった。
 
 
本のほうは映画とはまた違う趣があり、さっきちょっと読んでみると、結びの言葉に痺れた。
 
 
「理性的に生きることと、本能的に生きたりすることの、両方ともをやれるように自分を作ることです。その時によって、この二つのうちのどちらかを生かして使える人もまた、生活の練達者であり、人間らしさを保って行ける人のように思われます。」


「私たちの足もとにいは常に深淵が口をあいているようなもので、女性は常に、この旦那さま、この愛人と別れる日がいつ来るかも知れない、と考えるべきです。愛が人間の全部ではなく、男女の愛や肉体は永続するものではありません。そしてそれを一度よく考えてからそれを忘れて、その日、その時の生活の楽しさを十分味わって生きることがよい、と思われます。食うこと着ることについては明日を思いわずらったほうが利口ですが、愛については明日を思いわずらうことは有害です。明日には明日の愛があります。今日は今日の愛で満ち足りているべきです。いま、この人を私は愛し、私はできるだけのことをしている、と思うことのできる人にとっては、毎日がまた一刻一刻生命に満ちたものとなるでしょう。」
 
 
一度よく考えてからそれを忘れて…って、とっても難しいように思うのですが…先生?

2016-01-12

2016/1/12

 
 
眠ってる間に東京に初雪が降ったそうで、起きて外に出たら冬だった。冬ってこんな寒さだった、とようやく思い出すような冷気にあてられて目が覚めた…わけでもないけど、1週間ほど優れなかった体調もキリッと回復してきた。休養も栄養もじゅうぶんなはずなのに不気味に巨大な口内炎ができ→発熱→だるさが続く…と症状だったのだけど、何年か前、口内炎が30個ほど大量発生し、紹介状を書いてもらって行った大病院で、入院する…?自宅で静養していてもいいのだけど、家にいると何かと動いちゃうでしょ?と言われた日のことがフラッシュバック、あの時ほどの大事に至らずとも体感に似たものがあったので、せっかくの連休、ここで静養せねば私の今年が吹っ飛びかねない。と腹を括って休んだのが功を奏したもよう。ギンレイホールにだけは行ったけど。
 
 
家でもある程度の環境で映画を観られるようにしちゃったから、身体も気が抜けちゃったのかな…と、手元にある未見のDVDは、
 
「浮雲」
伊香保に行ったので借りてみたけど、暗い話を観るといろいろ吸い取られそうなのでパス。関西人気質?なのか何なのか、暗い話に耐性がなさすぎる。
 
「隠し砦の三悪人」
学生時代、黒澤明を映画館で一気に観た時、これが一番好きだったのだけど、それ以来観ていない。スターウォーズ予習復習をしたから観たくなったのだけど、体調の優れない時にミフネの生命力は脂っこすぎる気がしてパス。もっとお粥みたいな消化のよさそうなやつを…
 
「ファンタスティック MR.FOX」
ハマった友達がDVDを購入し貸してくれたのだけど、ウェス・アンダーソンの緻密が画面をうっとり見渡すには目の体力がなさすぎる、と日和ってパス。
 
 
…観るものないやん!と思い、さっさと寝たりしていた。低空飛行な時に最適な映画って何かしら。明日はそろそろどれか観られるかな。
 
伊香保のゆるキャラ いしだんくん(胴体が石段のフォルム)

 

2016-01-11

Don't bother to knock

 
 
年末年始恒例、シネマヴェーラの映画史上の名作特集は、通えないまま終わってしまいそう。ルビッチやスタージェスの映画がない今回、楽しみにしていたのはモンロー主演「ノックは無用」だったのだけど、見逃したので家でDVDで。かつてDVDで観たことはあって、未だ映画館では観たことがない。
 
 
1952年の映画。ホテルの回転ドアを通ってモンローが入ってくる。顔見知り(後に叔父とわかる)のエレベーター係の口聞きで、式典のため留守にする夫婦の部屋に残される少女の子守りとして紹介される。モンローが心を病んでいることが徐々に明らかになり…。密室もの、サイコサスペンスだけど、サスペンス部分はさしてドキドキもせず、素材は揃ってるのに料理人の腕が今ひとつ…なところはヒッチコックが撮ってたらな、と思うけど、ヒッチコックはきっとモンローには興味なさそう。しかしモンロー映画を観る時、私は8割がたモンローを注視することに集中しているので、細部の甘さはさして気にならない。
 
 
「お熱いのがお好き」や「7年目の浮気」の役柄のイメージからか、モンローといえばちょっと頭は足りないけどキュートさ3000%の女、というイメージは強いのだろうけど、私は「ナイアガラ」やこの「ノックは無用」など暗くて影のあるモンローも好きで、とりわけ「ノックは無用」の神経症的な演技は素晴らしい。回転ドアを通って物語に登場する場面から目は虚ろ、歩き方もぎこちなく、服装は地味な上に手ぶらなのが不気味さを増幅している。終始、肉体を誇示する素振りはなく、彼女の肉体や顔、それらが周囲に与える影響が物語の中心に据えられていない珍しいモンロー映画。モンローが心を病む原因が、パイロットだったらしい恋人の死によるもので、空軍を除隊した後のアメリカの青年は他にできることがなくて消去法的にパイロットになった…という設定、52年って戦後さほど時間が経ってないものね。窓辺で身を乗り出す少女の背中に手を添える場面、「ローズマリーの赤ちゃん」の電話ボックスの場面(好き!)ばりに緊張した。
 
 
この映画のモンローを興味深く観るのは、不安定なエピソードばかり目にするモンロー自身の晩年に重ねるからだろう。本当はこんな人だったのではないかしら、という欠片を表情や仕草のあちこちから勝手に見つけ出してしまうけれど、もちろんただの邪推に過ぎない。

2016-01-10

Today's theater

 
 
本日の映画/映画館。体調が低空飛行気味で、こんな2本立てに耐えられるかしら…と危惧し、早めに着いて、いつでも退出できるように通路側の席を確保。見終わったらむしろ体調ちょっと回復してた。ギンレイホール、私の知る限りで一番混んでおり、チケット買う人の行列(=ギンレイ会員ではない人)ができていたので、マッドマックスを観るために上映してる映画館ならどこでも行く!という熱いファンが多かったもよう。感想は来週中に…!この豪華番組の上映は15日まで。
 
 
ギンレイホール、これからのスケジュールも、それ観たいと思って逃してた!というものばかりなのは何故かと思えば、秋の映画祭サーキットで忙しくしてた間にロードショーされてた映画が名画座にまわる時期だからか。

 

2016-01-09

花嫁・新妻・新婚日記

 
 
2015年ベストの前に、年が明けて1月、これまで観た映画の記録。若尾文子映画祭アンコール上映、これは観る!と決めていた番組。
 
 
「花嫁のため息」「新妻の寝ごと」 で一番組
「新婚日記 恥しい夢」「新婚日記 嬉しい朝」 で一番組
 
 
それぞれ40分ほどの中篇、2本連続でかかって、映画としては独立してるけど、それぞれ前編・後編。公開時も2本抱き合わせで公開されたのかなぁ。どちらも1956年の映画。「青空娘」が1957年だと思えば、若尾さんのほっぺぷくぷくの初々しさ、想像できるかと。そんな初々しさで新婚ものだなんて…!
 
 
「花嫁のため息」
東京の庶民的な界隈の路地。大家さん夫婦、下宿人の若者のところにお嫁さんが来るから張り切って結婚資金も預かり魚屋から鯛を買ったり。近所の奥様がたも集まり結婚式の料理の準備をしている。やがて雨が降り、料理が濡れ、花嫁姿の若尾さんが登場し、着物は濡れ、大わらわで婚礼は終わる。いよいよ初夜…なのだけど、酔った新郎の友達が押しかけてきたり(船越英二の図々しいこと!)、田舎からお世話になった人たちが押しかけてきたり(当時の後楽園遊園地が映る)、なかなか2人きりになれない…ため息ばかりだよ!という筋書きなのだけど、当時のご近所関係の濃密さに驚きしきり。大家さんはほとんど親代りで、お風呂もそこに借りに行く。花嫁さんはゆっくり入りなさい…という台詞があるのは、来るべき初夜を暗示しているのだけど、こんなご近所が固唾をのんで初夜を見守ってるなんて…!「キッスぐらいはしたんだろう?」「とんでもない…!」という台詞があって、結婚前は手を繋ぐ程度だったらしい。新郎は根上淳。
 
 
「新妻の寝ごと」
続編。若尾さんの友人が、旦那さんが芸者と浮気したとかでプンスカしながら新居に押しかけてくる。その友人が…岸田今日子!やがて物語は若尾さん実家を巻き込み、実父の浮気相手も芸者らしく、温泉宿を舞台にひと騒動持ち上がる…という物語。男性の浮気相手といえば玄人筋、という描かれ方ってこの時代に多いけど、いつ頃まで続いたんだろう、という新たな興味が。タイトルどおり若尾さんの寝ごとが肝になるのだけど、ほっぺぷくぷくの若々しさながら、声はもう若い時からずっと艶やかな人で、寝ごともなまめましくて聞いてるだけで照れてしまう。
 
 
「新婚日記 恥しい夢」
こちらのシリーズの旦那さんは品川隆二。電電公社にお勤め。周囲の反対を押し切って結婚した2人は経済的に困窮しており、電電公社の安月給では東京に部屋は借りられず、恩師の留守宅の留守番をする形で暮らし始めるが、珍しくもその家に電話があり、電電公社の職員たるもの、この恵まれた環境を近所の皆様に活用していただくほかにない。と、貼り紙をしたものだから、常に誰かが家に上がって電話中、2人きりになる隙もない…。そんな中、なんとか2人の時間を捻出しようと旦那さんが無理矢理、早退して帰ってきたりするなど必死。湯たんぽが小道具として使われてるのだけど、ブリキ製の、私も愛用している、昔ながらの、そのまま直火にかけられるタイプのもので、火にかけたまま2人が盛り上がってしまい、家中が靄になる中「しっとりした夜ねぇ」と若尾さんが言うのが楽しい。
 
 
「新婚日記 嬉しい朝」
続編。恩師の留守期間が図らずも早く終わってしまい、お金のない2人は運良く隣の部屋の2階を貸してもらう。しかし給料はカツカツで、旦那さんは残業を希望し、電電公社職員の残業は…夜間電話工事。若尾さんは若尾さんで家計を助けるべく調理師として働いていたのだけど、やがて炊事係にまわされる。ということを、お互い言い出せず秘密にしているという物語。ここでも男の浮気相手は玄人筋問題は継続し、お隣さんは藤間紫(この人が出てくるとぐっと玄人ムード漂う)で、二号さんだったのだけど、もう二号さんはイヤよ、と立場を返上し、パパさんに借りてもらった?一軒家の2階を貸すことで自活の道を歩み始める、という設定。訪問販売という仕事がたくさん存在したようで、アタッシュケースのようなものに商品を入れて一軒ずつまわりながら売ったり、冷蔵庫や箪笥購入の仲介をしたり、この時代は買い物ひとつとっても手間がかかるなぁ。
 
 
どちらのシリーズも新婚もので、どちらかの親と同居という設定ではないので夫婦2人のはずが、隣近所を含めた第家族のようなコミュニティがナチュラルに形成されている。あんなに老若男女揃った環境じゃ、いつも誰かが周りにいて、2人きりになるのは難しく、2人きりになりたい新婚さんの悩みは尽きぬよ…と、現代では存在し得ない種類の映画だった。東京のどこの設定なのか、庶民的な界隈だから、まだ道路もたいして整備されておらず、炊事も青空の下で居住空間が路地に拡張している。観ることを決めていたのは、ソフト化されていない(はず)なのと、滅多にかからない映画だから。映画としては「花嫁・新妻」シリーズのほうがコメディタッチも軽快で出来が良かったように思う。

 

2016-01-08

TIFF2015 神様の思し召し

 
 
東京国際映画祭の記録、最後の1本はコンペからイタリア映画「神様の思し召し」。最終日は観客賞、グランプリの発表と上映がほぼ同時で、チケットは前々からおさえておくのだけど、何を観るかは当日行ってみないとわからない…という闇鍋鑑賞。2014年、初めてそうしてグランプリを観たのだけど(ヒルズに早めについて小腹を満たしてる間にスマホでグランプリを知った)、目の前に置かれた映画は何でも美味しく味わいましょうとも。という感じが楽しく、グランプリも自分では選ばないけど観てみると興味深かったので最終日のこのシステムを気に入っている。2014年のグランプリ「神様なんてくそくらえ」は現在、東京では公開中。
 
 
 
観客賞の会場に到着、ヒルズのある港区のお偉方のお話を聞いた後に発表される。法被を着て感謝の辞を述べる監督…シュール。時間が合わなくて観られなかったけど、評判が良いようだったので気になっていた「神様の思し召し」が選ばれてラッキー。
 
 
優秀だが傲慢な外科医が家族の問題を抱える中、カリスマ的に人気のある神父と出会い2人とその周囲に変化が訪れる…。
 
 
ずいぶん時間が経った現在、思い返すと何にそんなに笑ったのか忘れちゃったのだけど(えええ!)、私の想像するイタリア・コメディらしく明るい笑いに満ちながらも、神の存在を問うようなセリフも織り交ぜ、脚本家出身の監督らしく、精緻に練り上げられた映画だった。神とは?という問いに、カリスマ神父(ちょいワル風)が木を指差して答える、秋になってあの木に実がなる。そして実が落ちる。神とはそのことだ。というようなセリフがあったような気がする(うろ覚え)のだけど、それって私自身の神的な何か、のイメージと酷似していたので、敬虔なカトリック教徒の多い国の、神父という役柄の人が、こんなセリフを言うのだな…ということが驚きだった。私自身が自然豊かな神話的風景の一帯の生まれということもあるのかもしれないけど、あの山が神様です、あの木が神様です。春の次に夏が来る、それは神様の仕業です。ということなら腑に落ち、仏像やキリスト像、人の形をしたものを崇めたり拝んだりすることには未だに違和感を感じるので、イタリア映画の、こんなテーマの、そしてこんなタイトルの映画で、そんなセリフが許されるのだな…ということが不思議な疑問として残ったので、今後の考える種のひとつにしていこうと思う。
 
 
夜にグランプリ受賞の「ニーゼ」を再び観て(鑑賞中は疲れで椅子にずぶずぶ沈みながら)、東京国際映画祭は終了。また次の秋に!

 

2016-01-07

TIFF2015 家族の映画

 
 
昨日午後からの発熱は、朝も下がりきらず仕事始めから3日目にして病欠。仕事がまだ本格的に立ち上がってないので無理はせず。今年は健康第一で、ちょっとこれは…という予感の時は無理せず休もうと思っておる。年末年始の名残で家の中にふんだんに食べ物があって困らなかったけど、どうしてもアイスクリームとヨーグルトを食べたくなり、さっと着替えて買いに行くと、キャベツが謎の破格値で思わず買ってしまうと、レジ係の方が、今日はありえないほどキャベツが安いですね!うちは2人だけど1玉どうやって食べようかしら。当分はキャベツ料理ばっかりね!と話しながらの会計で、なんだか可笑しかった。ここ数日、ロールキャベツを食べたい予感がしていたのは、予知夢のような何かだったのですか。
 
 
東京国際映画祭で観た映画について、残り2本分を記録しておかねば。最終日の前日の夜、1日4本観る日の最後の1本は、チェコ映画「家族の映画」。この日は小栗康平監督→ホン・サンス新作→大自然もの、と観た後だったので、体力的にもう壮大壮絶な映画の入る余地は身体にありません…というヨレヨレしたテンションで、最後がこれで良かった。それでいてさすがコンペ作の見応えもあった。
 
 
チェコに暮らす裕福と思われる家族、両親が念願だったヴァカンスに犬を連れて出かけ、不在の間、姉と弟のみの暮らしになる。当然、両親不在の家は同級生たちの溜まり場になり、思春期らしいあれこれも勃発し、その頃ヴァカンスを過ごす両親は災害に巻き込まれつつも九死に一生を得る。しかし犬は行方不明のままで…。作品解説はこちら。
 
 
まず犬!犬の演技!監督によると、同じ犬種の犬を3匹使って撮ったとのことで、犬の集中力が続く時間が限られているからだとか。最後のショットを犬の演技の成功に委ねるというなかなかリスキーな演出ながら、セリフ?の前の溜めといい、見事な演技だったわ。この映画はいっけん普通の家族を描きながら、自然災害によって家族の秘密が明らかになる。そして常に誰かが不在、親のヴァカンス中、親の世界に子供は不在で、子供にとって逆も然り、犬は取り残されて彷徨う…と、家族が集合しながら抱える問題を解決していくわけではなく、それぞれの場所でそれぞれの問題を引き受けながら、小さな共同体が不均衡も取り込みながら維持される、ということを描いていた。こんな映画のタイトルが「家族の映画」とシンプルでストレートなのがいいね。
 
 
 
軽く観られたわりに余韻は長く続いたので、できればもう一度観たいぐらいだけど、公開はされないのだろうなぁ。お姉ちゃん役の女優さんが来日していて、エマ・ストーンとズーイー・デシャネルを合わせたようなコケティッシュな魅力のある人で目が釘付けに。リトルブラックドレスに厚底のスニーカー、個性的なレギンスを合わせててとても似合っていた。
 

 

2016-01-06

2016/1/6

 
 
今年のお正月は何なのか、新年早々、滅多に起きないことが起きる。apple IDが使えなくなって(パスワードを何度も聞かれ入力しても拒否される)appleのサポートセンターのお世話になったり、10年以上使っていた銀行のキャッシュカードを落としたらしく(伊香保で…?)使用停止してサポートセンターのお世話になったり…しかし昨今のサポートセンターは素晴らしいなぁ。電話をかけていただく時間をwebで予約できたり。不穏だわ…けど、天気は最高で私は健康だから、まぁ大丈夫かな、と思っていたら午後から38度以上の発熱。初熱!さっさと帰宅しておとなしく休んでいるし、とりあえず無理はしない。
 
 
ミッション:インポッシブルシリーズを観ているのは、今年はギンレイホールにもっと通おうと思っており、現在の番組がマッドマックスとミッション:インポッシブルの新作の2本立てで、お正月ぽくていい!両方観たい!と思ったけど、ミッション:インポッシブルは一度も観たことがないから予習。今のところ2まで観終わったけど、1本ずつ独立した物語だから、何も知らずに新作を観に行ってもいいのかもしれない。
 
 
監督も1作ずつ違って、トム・クルーズが主役という設定以外、その監督の色が色濃く出るのも面白い。2の監督はジョン・ウーで、もう演出が完全に香港黒社会もの。徐々にトム・クルーズがチョウ・ユンファに見えてくる。面白かったけど、ジョン・ウーの作風って、アジアの顔が画面にあふれてこそ似合うようにも思えた。
 
 
熱がすぐ下がって、週末には元気に映画館に行けますように…。
 
 
 

 

2016-01-05

2016/1/5

 
 
仕事始め。お年賀でいただいた羊羹、素敵!この間、伊勢丹に行ったらランジェリー売場、見渡す限り赤のランジェリーで埋め尽くされていて…お正月→めでたい→赤!という発想なのかな、と思っていたら、申年に赤の下着を身につけると縁起良く健康に過ごせる、という説があるらしい。
 
 
年末「007」を一緒に観に行った友達から年賀状が届き、007の影響で「強くなりたい…」と思い、2016年はブラジリアン柔術デビューしそう。と書いてあったので爆笑。綺麗な女性なのに、ボンドガールのレア・セドゥに影響されてコスメカウンターでいっぱい買っちゃった!とかじゃないのが私の友達っぽい…。彼女は鉄道好きでもあって、観終わったあとに「スペクターも電車シーンあったねぇ」と言ったら「007は電車を破壊しがちで心が痛む。その点、ウェス・アンダーソンは電車の撮り方に愛情が感じられる」とコメントが返ってきたので、なるほど!と思った。人の数だけ観方がある…!
 
 
スターウォーズ日程がなかなか決まらないので、ミッション・インポッシブルシリーズを観始めた。日記は明日から再び、東京国際の残り2本を書き、その後2015年ベスト10を書こうと思っておる。

 

2016-01-04

伊香保 / 浮雲

 
 
伊香保へ温泉に浸かりに。朝晩3回浸かって心身ふやふやである。初めての伊香保、未だに群馬、栃木の位置関係があやふやな自分のために記録しておくと、伊香保は群馬県である。群馬の他の特徴として、富岡製糸場、蒟蒻、水沢うどん、温泉は他に草津などが挙げられる。ぐんまちゃんという馬のゆるキャラが水のペットボトルにイラストが描かれていたり土産物屋にぬいぐるみが並んでいたり幅を利かせていた。しかし伊香保のゆるキャラは「いしだんくん」といい、胴体部分が石段のフォルムをしている。こうやって記憶が脇道にそれ、そのうちきっと伊香保=群馬、というそもそも記憶したかったことを忘れるのが私の常である。
 
 
 
 
宿の窓から見えた景色。山山山!
2016年お正月、気持ち悪いほど気温高く連日の晴天だったと記録しておく
 
 
 
 
噂の石段がこちら。365段あり、最上部に伊香保神社がある
高齢化するこれからの日本に不似合いなハードさ
 
 
伊香保で一番の娯楽は射的
誇張ではなく本当に3メートル置きに射的の店がある
 
 
射的の他に、わなげ、手裏剣、大弓なども
射的屋を見たのは初めてだったはずなので、ただの温泉街のファンタジー
だと思っていたら現実に存在したので驚いた
 
 
石段の途中、大量の黄色い鳥類が供えられる風景に軽く狂気を感じ
現代美術か何かかと思えば、どうやら射的の残念賞がひよこのようで
日に日に増殖していた…
 
 
石段の周りを大きな温泉旅館が取り囲み、どれも等しく建物は老朽していた。与謝野晶子の歌碑があったり、夢二と縁があったり、かつての文化人たちが逗留した形跡があちこちに感じられ、湯は各種の病に効能があり、そして石段も情緒がある。そして娯楽は射的。忙しき現代人にはこれぐらいなにもない場所に敢えて行かなければ心身のコリもほぐれないというもの…と思うほど、なにもない場所だった。そしてこれだけの古い温泉街だもの、何か映画の舞台になったりしているのでは…と調べてみたら、まさかの名作キタ!成瀬巳喜男「浮雲」に伊香保が登場するらしい。忘れてたけど…あらすじを改めて読んでみると、腐れ縁の2人(高峰秀子・森雅之)が療養にやってくるのが伊香保。宿代に困った2人は加東大介に気に入られ店の一部屋を間借りする。加東大介の年若き妻が岡田茉莉子で、やがて森雅之は岡田茉莉子に手を出し、高峰秀子がそれに気づき… そうそう、記憶の遥か彼方にあったけど、そんな話だった気がする(適当)!そうか…あれは伊香保だったのか…
 
 
セット?かもしれないけど石段も表現されており、
 
 
湯に浸かる2人
湯に浸かっていても湿っぽい表情の森雅之…
 
 
 
金太夫という旅館がその舞台らしい。原作者の林芙美子も、名前を隠して取材でここに泊まったのだとか。 泊まった宿の近くにあったので写真を撮った。かつては老舗高級旅館だったのが経営破綻し現在はホテルチェーンが経営してるのだとか。「浮雲」的に切ない話…。
 
 
成瀬の「浮雲」、湿っぽいメロドラマという私の苦手な要素揃いで、名作とは知りながらも、それほど好きな映画ではない。最後、林芙美子の「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」という一文が映されて終わったと思うのだけど、は?それを2時間かけて表現したんじゃないの?最後に文章かぶせてどうすんの?無粋だわ…と、ケッと白けてしまって後味も悪い。しかし苦手な要素揃いなのに最後まで集中して観てしまうのは、監督と俳優の力としか言いようがない。
 
 
そして映画の舞台に行ってみて思ったのだけど、映画の当時、伊香保は現在ほどには鄙びてなかっただろうし、むしろ温泉観光の王様の貫禄すらあったのかもしれないけど、地形的にも娯楽の少なさはさほど変わらなかったのではないかしら。温泉入って食べて寝る、長期逗留するなら延々その繰り返しで、画家や作家には適した環境かもしれないけど…腐れ縁の、関係も微妙な男女が2人でこんな山間の温泉地にただ篭ると…痴情がもつれてもしょうがない。というか、痴情がもつれるぐらいしか他にすることがないのではないか。痴情のもつれすら暇つぶし、退屈しのぎになりそうな、子供の娯楽は射的、大人の娯楽は痴情のもつれ!そんな展開がいかにも似合う場所のように感じられた。伊香保を去った後の展開の哀しさを思うと、もっとカラッとしたとこ行けばよかったね…太陽が降り注いでトロピカルな果物が美味しい南の島とか…(森雅之に似合わなさすぎる)…など、ありえない浮雲・別の結末バージョンを妄想して、暇つぶしをした私であった。射的、するべきだったかしら。