イメージフォーラムでのフレンチ・フィーメイル・ニューウェーブにて。フランスの若き女性監督特集。全部観るって決めてた。まずジュリー・デルピー監督作「スカイラブ」から。sky loveだと思ってたら違って、skylabはアメリカの人工衛星。役目を終えたskylabは、1979年、地上に墜ちてくると騒ぎになった。方角的に墜ちてこないとも言えなくもないブルターニュにおばあちゃんの誕生日祝いに集まった大家族の夏の一日の物語。
以前の監督作「パリ、恋人たちの2日間」の満足度をまったくもって裏切らないし、もはや己の語り口をしっかり見つけたような安定感。ジュリー・デルピーって人は綺麗な表皮の下に生まれつき内なるおっさんがいて、若い頃から美貌ゆえに「化粧品何使ってるの?」とか「恋人は?」とかしょうもないこと聞かれまくり内なるおっさんが「アホか、もっと面白い質問せえや!ケッ」って叫ぶのぐっと飼い慣らしてるうちに、頭いいから、そっかー美貌ゆえにいろんな監督から声がかかるんだもん、映画の勉強だと思って利用しない手はないわ!と腹を括り、アメリカ渡って映画の勉強して、リチャード・リンクレイターやらと組んでるうちに徐々に内なるおっさんが暴れだし、ナチュラルに老けはじめ二の腕や腰まわりがでっぷりした昨今、ようやく美貌への評価も落ち着きはじめて、こっからが俺の出番やで。って内なるおっさんが喜んでる頃なのだと思う。物語の端々に散りばめられた下ネタや政治ネタを思い返すに、確信を強くする。
役者の豪華さ。どんな老けかたしてるのか想像できなかったけど、声と話し方ですぐわかってしまったベルナデッド・ラフォン!(ママと娼婦のママ!)、「愛 アムール」とは同一人物と思えるような思えないようなエマニュエル・リヴァ!ジュリー・デルピーのリアルパパは俳優さんで、前作に続いての登場。その他、フランス映画でしょっちゅう見かける俳優ばかり。自身も出演しつつ、どう見ても曲者揃いの彼らを指揮するジュリー・デルピー・・!
食卓のやかましさに一抹の関西ぽさ漂い、どことなく懐かしさを覚える私、どういう嗜好かわからないけど、野外で人々がテーブル出して食事してるシーンのある映画が大好き。この映画の少なくとも3分の1はそんなシーンで占められており、あと5時間は画面を眺められる。家族がそれぞれ喧嘩したり、奇妙な人間とつきあうのも家族活動のうちと悟ったり、幼い娘が恋に出会ったり、そして破れたり、時々スカイラブを思い出して騒いだり、また忘れたりしてブルターニュの夏の日は暮れる。ああ、人生というのはこのように生きるものであるな、と、しみじみ。
雨が降ったのでみんなでテーブル椅子を屋内に移動させたの図。
前作「パリ、恋人たちの2日間」をパリの映画館で観たとき、場内ぎゃーはっははっはとパリ人のアホ笑いに包まれ、あージュリー・デルピーってのは、ウディ・アレン的に原語をしっかり理解してないと本来の面白さはわかりませんよって人なんだろうな、と思ったけど、スカイラブもきっとそうなんだろう。めらめら語学習得意欲を掻き立てられる。たとえ習得した先に理解できたのがおっさんくさい下ネタだったとしても・・。