CINEMA STUDIO28

2016-05-05

こども

 
 
こどもの日。子供の出る映画って、どうしても子供に目が奪われて映画全体を見渡せず、そして高め安定の感想…良かったなぁ…子供…と思いがち。小津、清水宏、木下恵介は「二十四の瞳」、ラモリス「赤い風船」、子供の演出のうまい監督はたくさんいるけれど、私が特に好きなのはトリュフォー「思春期」。
 
 
冒頭、高低差の激しい小さな街を少年たちが大騒ぎで徐々に合流して学校に走っていく、登校シーンから胸がいっぱい。「赤い風船」でも思ったけど、ヨーロッパの子供映画、誰かのお下がりなのか、長い間使えるようにということなのか鞄がおじさんが持ってる革の書類鞄みたいで、カジュアルな洋服とのミスマッチ感。「赤い風船」のあの子なんて、パジャマみたいな上下に鞄だけ渋かった。「思春期」でもそんな子供たちの大群を目撃できる。
 
 
ちょっとした恋が生まれかけたり、映画館の場面が出てきたり(映画館の場面がある映画はだいたい良い映画)、危険な動きをする赤ちゃんを見守ったり、ちょっと複雑な家庭の子が出てきたり。
 
 
最後の場面、ヴァカンス前の学校で担任の先生が語る長いセリフにトリュフォーの言いたいことは全部入っていたように思う。トリュフォー自身の思春期をきっと投影しただろう物語でもあり、私は小さい頃の自分をトリュフォーが抱きしめてくれる映画のように思えた。
 
 
 
 
撮影中のトリュフォー。ゴダールより断然トリュフォー派!トリュフォーが書いた原作の山田宏一さんによる翻訳版「子供たちの時間」は、映画を観た後に、あの先生の長ゼリフを何度もちゃんと読みたくて古書で購入。和田誠さんの表紙も素晴らしい。