美しい女優のクラシック映画を全部デジタルリマスタ版で上映してくれる素敵企画スクリーン・ビューティーズ、第1弾はオードリー!秋、観たい映画だらけで時間配分困ってるけど、見逃すわけにはいかない。監督特集ででビリー・ワイルダーものが上映されたり、午前10時の映画祭でローマの休日がかかったりしてたけど、案外オードリー特集ってないから3本といえどもまとめて観られる機会は貴重。
今回、一番スクリーンで観て良かった!のが断然「パリの恋人」。リチャード・アヴェドン監修の50年代後半のモードな世界、監督はスタンリー・ドーネン、一部の音楽はガーシュウィンによるもの。当時モデルと結婚してたアヴェドンの実体験が下敷きになった脚本で、アヴェドンの役はアステア!実生活でアヴェドンの奥さんだったモデルは、最初の撮影のシーンで頭からっぽモデルを演じてる人だったかな。
これだけ豪華な布陣に包囲され、オードリーは彼女の十八番である「年上の男に導かれて大変身する私」を歌ありダンスありで演じて相変わらずキュートなのだけど、いかんせんストーリーが単調で家でDVDで観ているといつも途中で飽きちゃうからあまり期待していなかったけど、冒頭から鮮やかな色の洪水で目がパカッと開いた。映画はやっぱり映画館で観るものだな。デジタルリマスタばんざい!
そしてDVDで観ていると、パリのカフェ(フロールが舞台?)でオードリーが踊る変な実存主義ダンス・・映画では実存主義は共感主義、サルトルはフロストル教授と名前がもじられている・・しか頭に残らない。オードリーが相手役にアステアを指名して成立したキャスティングで、アステアが憧れの存在だったかららしいのだけど、アステアの前であのダンス踊るのは相当緊張しただろうな。
そんな実存主義ダンスしかいつも頭に残らない。と思いきや、この映画は大画面で観るとすっかりケイ・トンプソン映画なのであった。ダイアナ・ヴリーランドがモデルと言われるファッション誌の編集長を演じる彼女はそもそもMGMのボイストレーナーとしてアステアはじめ数多のスターに歌唱指導してきた人で、ダンスも演技もうまく華もあるのに、どうして映画にほとんど出ていないのだろう。「パリの恋人」が豪華なのに映画としては弱く感じられてしまうのは、脇を豪華に固めすぎてしまったが故に中心にいるオードリーが色あせて見えてしまったからなのではないかしらん。この映画に限っては冒頭のthink pink! のシーンやら、アステア&ケイ・トンプソンのシーンやら、オードリーが出ていない場面のほうが時間が過ぎるのが何倍速も早く感じられた。
どの曲も良いけど、ケイ・トンプソン&オードリーが先生と生徒みたいに歌い踊るいっけん地味なこの曲、ケイ・トンプソンがオードリーにボイストレーニングしてるみたいで味わい深い・・!
長らく魅力を理解できなかったディートリッヒを、何年か前に雷に打たれたみたいに好きになってしまった時、ああ、大人になっちゃったってことねって思ったものだけど、「パリの恋人」でのケイ・トンプソン発見も大人の階段上る出来事。きっとこれから何人も、これまで発見できなかった渋い玄人を発見していくのであろう・・。