CINEMA STUDIO28

2014-04-22

Jacques Tati! : Mon oncle

 
 
イメージフォーラムで。ジャック・タチ1958年の長篇「ぼくの伯父さん」。説明不要の名作。この映画を観るのは人生できっと3度目だと思うのだけど、いくら私が記憶力が良いほうとはいえ、ほとんどの場面を覚えているのに驚いた。それだけ引き込まれて集中し、細部まで観察しながら観てたってことなのだろう。
 
 
 
 
未来的建築のこちらのお宅で、緩く電源繋がれているものの、手で持つ必要はなく勝手に動いてくれる掃除機が使われている。ルンバのはしり…!そして今回は、お隣のご婦人がカーペットみたいな分厚い布を肩にかけて登場する場面で大笑い。
 
 
 
それでもやっぱり遊びに行きたいのはこっちの家だな。ムッシュー・ユロの住む最上階の部屋は、窓が大きくて気持ち良さそう。そして室内はほぼ映らないのが、想像力を掻き立てられていい。きっと洗濯機なんてあるはずもないアナログな部屋なんだろうな…。
 
 
岡本仁さんがinstagram で引用されてた、ご自身が昔書かれた文章が素晴らしかった。伯父的人生について。考えてみれば私の人生では、父親がまるで父親的世界観を持つ人ではないので、父親的人生というものを身近に知らない。そうやって育った私の周りはじゅうぶんな大人になった今でも伯父的人生を歩む登場人物に塗り固められており、自分もまたそうなのだろう。ムッシュー・ユロのことも遠い世界の人物というより、愛すべき隣人としてクスクス眺めている。

 

2014-04-21

JacquesTati! : Dégustation maison

 
 
イメージ・フォーラムで。1978年の短編「家族の味見」はタチではなく、タチの娘ソフィー・タチシェフ監督作。ソフィー・タチシェフはきっと健在だろうと思っていたら2001年に55歳の若さで亡くなっていた。14分という短さながら、観終わった後のほのぼの感が長く後引く可愛らしい映画。

小さな村のパティスリーが舞台。恰幅のいいマダムがじゃんじゃんお菓子を焼いて、その娘が売り子をつとめる小さな店は、何故か常連客はみんな男。お菓子をぱくぱく食べ、ゲームに興じ、またお菓子をぱくぱく食べ… いい大人の男がそんなお菓子ばかり食べるもんじゃありませんよ。途中、マダムがお菓子を買いに来るものの、変なお菓子ばっかりね。って呆れて手ぶらで店を出るシーンがあるのだけど、この店のお菓子には秘密があって…。という秘密が明かされるのが、店を出た男が乗るもののまっすぐ走れない自転車だったりして、秘密に気づかない観客もいそうなささやかさ。こんな可愛らしい短編ばかり集めた特集があったら楽しいな。半日ほどぼんやり画面を眺めていたい。

 

2014-04-20

Jacques Tati! : Parade

 
 
 
イメージフォーラムで。ジャック・タチ「パラード」、1974年、タチ最後の長篇。ほとんど映画館にかからないのでは…私は初めて観た。この特集の目玉、後から思い起こすと「パラード」だったな、って思いそう。スウェーデンのテレビ局の招きでテレビ用に製作された作品で、サーカスの座長がタチ、自分も時々芸を見せながら、観客を巻き込んで曲芸あり音楽ありのショーが始まって終わる。そういった情報をインプットせずに観たので、これはドキュメンタリー?フィクション?って考えながら観たけど、観終わってもその境界線は曖昧なまま。どっちだっていいじゃないか、という気分になる。
 
 
曖昧な気分にさせられる最大の要因は、観客が素人とは思えないほど突然、ステージに巻き込まれても達者なリアクションを見せるからで、実際のところ撮影は3日間あったらしいので、あの達者なリアクションも演出のうちなのだろう。この特集で再見する予定の「フォルツァ・バスティア78」を観た時、ドキュメンタリーのはずなのに映ってる素人が徐々にタチ映画の緻密に計算された登場人物にしか見えなくなる瞬間があり、何がどのように映っているかよりも、誰がどんな視点で世界を切り取ったかこそが映画だなぁと改めて思い知らされたことを、「バラード」でより強く認識した。
 
 
そして何より目玉はタチ本人による芸。当時66歳のタチの、それまでの人生が仕草のひとつひとつに滲み出てるような軽くて重みのある芸は、軽快で洗練されているのに同時に、末広亭で見た昭和のいるこいるの漫才や、なんばグランド花月で見た吉本新喜劇の、私が小さい時から何一つ変わらないベテランたちの予定調和なギャグを、お弁当つまみながらずずずと水筒やペットボトルから緑茶をすすりつつのんびり眺めているような親近感もあって何やら妙だった。幕間、舞台裏で談笑中、一座の若手からリクエストされロンドン、パリ、南米の警官の動きをパントマイムで見せるシーン、素敵だったなぁ。


そしてムッシュー・ユロを演じている時よりきっとタチの素に近いだろう衣装は、popeyeのスナップ特集にシティボーイが何十年か先の未来たどり着きたい目標としてのヨーロッパの渋い親父として登場しそうなこなれ感で、芸を見たり衣装を見たりで目が忙しい。ベージュのスーツに、赤のタートル、靴下も赤!のバランスは、枯れた見た目、エレガントな仕草、特徴ある姿勢の長身とあいまって、洋服はやはり西洋のものだし、タチは本当に洋服が似合う人だなぁと思わされた。タチの代表作は過去に何度も見てるけど、今回の特集は時間の都合で長篇1本しか見られない、という方には是非「パラード」をオススメしたいthis is Tati!な一本。

2014-04-18

Jacques Tati! : 35mm film free gift!

 
 
小雨降る肌寒い金曜日。休日出勤が続いてたので、休みを取ることにして、ジャック・タチを観に渋谷へ。今週、先着1000名にプレゼントされたタチ作品の35mmフィルム3コマ、もう残ってないかな…って思ってたら思いがけずいただけて感激。パンフレットといい、フィルムといい、企画された方に感謝。映画好きのツボを的確に抑えていらっしゃる。
 
 
しかも引きの強いことに、ムッシュー・ユロが映ってる。どの映画だっけ?最後まで特集を観たら、このシーンに出会えるかしら、もしくはもう見過ごしちゃったかな、と考えてたら、ちょうど今日観た「ぼくの伯父さん」の、ハイテク一軒家に招かれたムッシュー・ユロが、全自動キッチンで不思議な素材のコーヒーサーバーを訝しげに眺めるシーンだった!ガラス製に見せかけて空気を含んだボールみたいな素材なのか、キッチンの床に落としてみると跳ね返ってくる。その後にあるオチに大笑い。こんなプレゼント、本当に嬉しい。宝物にします。
 
BON WEEK-END!

2014-04-17

Jacques Tati! : On demande une brute

 
 
イメージフォーラムで。ジャック・タチ脚本、出演の短編「乱暴者を求む」1934年。監督はシャルル・バロワ。タチ演じる売れない俳優が、劇団に雇われる当てが外れ、生活を憂いた妻により面接に向かう。強気に行けという妻のアドバイスに忠実に強気に出たらトントン拍子で採用に至ったものの、仕事は野獣みたいなレスラーとの試合。さらに負けると逆に金払ってもらうぜ、というあり得ない契約だった…。という物語。
 
 
とても野獣には勝てそうもないタチのひょろっとした体躯がリングの上でひょこひょこ動くさまも見ものながら、冒頭の食事シーンから始まる一連の独特な夫婦関係、ふたりの力学はもっと見もの。30年代、女は髪型も洋服もバリエーションは少なく、とても女らしく見えるのだけど性格は勇ましく、その勝気であればむしろ妻が野獣と闘うほうが俄然勝てそう。女の服装含む見た目と中身の組み合わせは、現代でも完全一致するとは限らないけど、この妻は現代であればどんな洋服を選んで着たのかな?と、タチそっちのけでそんなことばかり想像していたら、あっという間に終わってしまった。

 

2014-04-16

Jacques Tati! : trafic

 
 
 
イメージフォーラムで。ジャック・タチ「トラフィック」71年の長篇。タチの長篇をまとめて観たのはもう20年近く前、「プレイタイム」が強烈って記憶しか残ってなくて、久しぶりの「トラフィック」こんなに面白い映画だったのか!って染みたのは、満席で熱気ある会場だったからか、デジタルリマスターだったからか。
 
 
パリの自動車会社がアムステルダムで開催されるモーターショーに新作を出品するために移動し始めるけど、あらゆる災難に見舞われて一向に到着しない物語。ムッシュー・ユロは自動車のデザイナー。出品されるのがキャンピングカーとは最初に明かされるけど、どんな仕掛けがあるか分かるのは中盤。車とテントが一体になっていて、ガスコンロやらシャワーやらシェーバーやら…生活の道具が車のあちこちに仕込んであってキャンプ先でも文明的な生活は保てますね!という仕様。撮影されたのは60年代の終わり?70年代の初め?画面いっぱい終始クラシックカーが溢れ、車好きな人にはたまらないんじゃないだろうか。併映の「陽気な日曜日」の流れで「トラフィック」を観ると、数十年の間に人間の欲望に沿うように自動車も我儘に進化していったのがよくわかる。
 
 
途中、何度も車が故障したり、修理したり、事故があったり、衝撃で外れた部品が道路を転がるのをホテホテ追う人間が映ったり、最先端な道具を使いこなしてるはずの人間が、人間のコントロールを些細なきっかけで外れてしまった道具を直す段には牧歌的で子供みたいな動きを見せるのが面白い。
 
 
ムッシュー・ユロと一緒に移動するプレス担当美女はフランス語が堪能ではなくしょっちゅう英語が混じる。「プレイタイム」でもパリに観光に来た若いアメリカ人女性が登場したけど、彼女たちがムッシュー・ユロの世界に紛れこんだ時のlost in translation感が、タチ映画の現実からちょっと浮いたところで展開する世界にしっくり似合ってるなぁと初めて思った。
 
 
この映画のラストの雨は、タチ映画で唯一の雨のシーンらしい。そのため、ムッシュー・ユロがいつも持ってる蝙蝠傘が開くレアな場面が見られる。自動車会社を解雇されたムッシュー・ユロが、偉い人から手切れ金もらって電車で帰るべく駅の階段を降りはじめるけど、ささやかすぎるアクシデントで降りられず、芋を洗うごとく駐車場にびっしり並ぶ車車車の景色に紛れてゆくラストは、良かろうと悪かろうと後戻りはもうできない文明化の流れのようで余韻が残る。
 
 
途中、この映画ほんとうに観たことあったっけ?って自分を疑うくらい何も覚えてなかったけど、カーステレオのボリューム上げて音楽が高鳴るラストは記憶の彼方に残ってて、確かに昔の私はこれを観たっけな。って思い出せた。昔も洒落た終わり方だなーって唸った記憶だけがあった。記憶って面白い。

 

2014-04-15

Jacques Tati ! : Gai dimanche!

 
イメージフォーラムのジャック・タチ映画祭で。1本目は1935年の短編「陽気な日曜日」。タチは脚本&出演、監督はジャック・ベール。
 
 
パリ近郊の田舎街で身長の高低差ある凸凹コンビが駅に到着した観光客から稼ぐために出鱈目なお城見学ツアーをでっち上げる。背の高いほうのひょこひょこ歩く男がタチ。2人が格安で購入するガタガタのバスが子供のオモチャみたいなデザインでキュート。お城の前に立ち寄ったレストランの爺さんなど脇役も効いてる。
 
 
 
そして子供、犬。僅か22分でも、監督してなくてもタチエッセンス満載。 この日記を書くためにパンフレットを読んで初めて監督がタチじゃなかったって知ったぐらいタチ映画だった。日本の劇場では初公開らしい。「トラフィック」と併映なのも、車映画繋がりで楽しめたので、これから観る残り5回の上映も、まだ見ぬ短編とかつて観た長編がどんな繋がりで番組になってるのか妄想しながら楽しみにしてる。

 

2014-04-12

Image forum

 
 
246沿い、スタバを曲がったあたりから異様な熱気。長い長い行列。あんなに混んでるイメージフォーラム見たことない。ジャック・タチ映画祭と、話題のアクト・オブ・キリング初日が重なり、30分前に到着したら13時半からの回は満席立ち見のみだったので16時からの短編&トラフィックのチケットを購入。今日は4回ある上映、すべて満席とのこと。これからご覧になる方は、平日融通のきく方は平日、休日のみの方は早めに整理券を確保するのが良いかもしれません。4週間あるから、そのうち落ち着くのかもしれないけど。
 
 
久しぶりに観るタチに胸がいっぱいで、感想は後日。短編長編組み合わせ計6回あるうち、選んでいくつか観られればいいや、と思ってた自分のバカ。タチなんて全部観るに決まってるでしょ?ということで全部観るべく通うつもり。
 
 
 
 
パンフレットがポストカード12枚セットの凝ったつくりで、とても満足。 買いやすい値段、コンパクトなサイズ、映画好きなあの人も気に入るかも?と2セット購入。プレゼントにぴったりすぎる。今年のパンフレット大賞の予感。去年の大賞は「タイピスト!」だった。
 
 
ここのところ映画館に行けない日々が続いていたので、何の予告編も観てなかったけど、アクト・オブ・キリングも必ず観るつもり。なんちゅう映画なの。

 

2014-04-11

vivement demain!

 

 

 

 

 

染井吉野は散ったけど八重桜は咲いてるし、いくつか映画を見逃しても明日からジャック・タチ映画祭始まるし、東京って本当にいい街だなぁ。

 

 

パンフレットがポストカード形式で可愛いので絶対買う。プレゼントにもいいね。

http://www.jacquestati.net/

 

 

タチオマージュみたいなsoftbankのCM、ウェス・アンダーソンによるものって最近ようやく知った。

 

 

Bon week-end!!

 

(オフィスのデスクから、口内炎治療にチョコラBBドリンク飲みながら。

今日の終了は日付変更線など軽々と超えるだろう・・)

 

2014-04-10

AAA

 
 
ロンドンのBFIで「秋刀魚の味」が5月、上映されるらしく、そのアートワークが素敵。岩下志麻さん、こんな赤いスカート履いてたっけ。BFIが出してる小津DVDシリーズのデザインも素敵。例えば「晩秋」。
 
 
 
 
去年からの小津特集にはまるで行けなかったけど、3月、フィルムセンターでの展示は最終日に無事駆け込めて、観終わってからずっと小津監督のこと考えてしまうから、マイペースに自分なりの小津特集を敢行しよう。
 
 
鎌倉文学館での展示、もうすぐ終わってしまうけど是非観たいと思ってる。そしてようやく映画のこと考えられるほどに日常に意識が戻ってきた。よかったよかった。最後に映画館に行ったのいつだっけ…。