CINEMA STUDIO28

2015-02-14

Attila Marcel

 
 
ギンレイホールで。他の映画の整理券を早い時間にとりにいった後、ちょうどよく時間が合ったので「ぼくを探しに」を観た…ことをもう、忘れていたよ…。1週間前のことなのに。その後に観た映画が記憶を上書きしてしまった。フランス映画。「アメリ」のプロデューサー、「ベルヴィル・ランデヴー」のシルヴァン・ショメが実写で監督。この名前だけでもう、ちょっと不思議だけどロマンティックで、洋服やインテリアも凝ってて、癖があるけど愛すべき人々が出てくる映画なのだろうな。と想像できて、そしてそのとおりの映画だった。それが故の安心感というのを求める人には良い映画なのだろうけど、想像を超えるところが何もないのはいかがなものよ…と思ってるうちにエンドロール。小さい時の出来事が理由で言葉を発せられなくなったピアニストの男が、同じ建物に住むマダム・プルーストのつくるマドレーヌとお茶を飲むと一瞬だけ過去にトリップできて(プルースト!)、繰り返すうちに自分の過去を知る。という物語。マダム・プルーストの部屋、部屋内菜園、部屋の中に土を持ち込み栽培してる自由すぎる感じで、温室みたい。
 
 
物語の本筋とはそれたところで、観る価値があったと思ったのは、亡くなったベルナデッド・ラフォンが出ていること。フランス版のWikipediaによると、映画においてはこれが遺作だったらしい。そしてフランス版ならではの詳しさでざっとみてみると映画だけでも膨大な出演作。亡くなる寸前まで映画に求められた、フランス映画史を体現する女優さんだったのね。トリュフォーにユスターシュ、ヌーヴェルヴァーグの頃の映画はもちろん、最近のものに至るまでベルナデッド・ラフォンの名前を見つけるとそれだけで観たくなり、観てみると確かに外見は年齢を重ねたものの、独特のセリフまわしは昔から変わらず、あの声と話し方を聴けるだけで嬉しい人だった。
 
 
エレーヌ・ヴァンサンと2人、主人公の伯母さん役で、ダンス教室を切り盛りしている。この2人のファッションが双子みたいにお揃いで、かといって完全に同じではなく、着る人にあわせて変化があって楽しかった。コート、同じ生地だけど、ベルナデッド・ラフォンはシングル、エレーヌ・ヴァンサンはダブルで。
 
 
 
 
ダンス教室ではブラック・ドレスを。1人はカシュクール、1人はシャツワンピースのような合わせで、アクセサリーで変化をつけて。
 
 
 
チェリーの酒漬けをしょっちゅう食べる。伯母さん2人の好物のようで、 砂浜を歩きながら食べるシーンが目に焼きついている。嬉しそうに口いっぱいに頬張るあのショットが、私にとってのラスト・ベルナデッド・ラフォンになった。