CINEMA STUDIO28

2015-02-10

Niagara




シネマヴェーラの映画史上の名作特集で、マリリン・モンロー主演「ナイアガラ」を観ること、楽しみにしていたのに体調を崩した。最後にスクリーンでマリリンを観たのはいつのことだったっけ・・・。生命エネルギー、夏の盛りが100だとすると、この時期は10~20をウロウロしてる感じ。寒いの苦手じゃないけど、年も明け、立春も過ぎ、何度も心の切り替えをしているのに、気温がいっこうに上がらないところが、中途半端で気持ち悪いのだと思う。気持ち悪いと言われましても。って、気温のほうも思ってるだろうけど。


「ナイアガラ」のあらすじも読んでいたし、次にいつ観られるかわからなかったので、不本意ながらDVDで観てみた。1952年撮影、1953年公開。マリリンのフィルモグラフィーの中では前半の映画か。モンロー・ウォークを披露した映画としても有名で、マリリンの後姿がよく映される。


ナイアガラに旧婚旅行に来た夫婦は滝を一望できる場所にあるロッジに着くと、退室しているはずの前の宿泊客が退室していなかった。前の宿泊客は夫婦で、夫がジョゼフ・コットン、妻がマリリン・モンロー。戦争後遺症で心が安定しない夫の具合が悪いらしい。なんら関係ない夫婦の楽しいはずの休暇はマリリン夫婦のいざこざに巻き込まれていく・・。


マリリン・モンローが人気女優としての地位を確立したのがいつかわからないけど(「紳士は金髪がお好き」あたり?)、フィルモグラフィの後半はマリリンがマリリンであることに重きをおいた役が多く、まださほど有名ではなかったはずの前半のほうが、女優としての素が見えるようで好きなものが多い。脇役で登場する「イヴの総て」も良かったし、「ノックは無用」は、その後の人生を知ってしまっているだけに、どこまで演技か境界線が見えなくてドキドキするのが、映画の内容と合っていた。「ナイアガラ」も「ノックは無用」の系譜にあるような映画で、サスペンスとしての筋書き以上に不安定なマリリンがスリリング。






マリリン初のカラー映画だそうで、今まで白と黒のグラデーションだけで見せていたマリリンの色づきを見せたかったのか、どんな場面で唇が赤い。そんなフルメイクで寝るとシーツとか汚れるでしょ?という現実生活の垢の感じさせなさ加減がいい。映画は虚構。






寝るときもフルメイクなのは古い映画ではよくあることとして、シャワー浴びてもフルメイク。にはさすがに笑った。どれだけ強靭な成分の口紅なの。映画の終盤、夫がマリリンのリップスティックを拾い上げるシーンがあって、ケースがキラキラとデコラティブなものだった。どこのメーカーのものだったのだろう。






衣装はメイクほどカラフルではなかったけど、滝を間近に見に行くときの防水服、男性は黒っぽい色だけど、女性が鮮やかな黄色で、便宜上、すっぽりフードもかぶって、日本の小学生の雨の日の登校風景みたい。この写真、スクリーンテストなのか、こんな恰好でマリリンの表情が虚ろなのがうすら怖い。






宿のパーティーシーンが不穏さをはらんでいて素晴らしい。アウトドアに行くような服装が似合う観光名所のはずで、まわりの宿泊客は着飾ったとしてもコットンのドレスを着る程度なのに、ピンクのドレスでパキパキに着飾って現れるマリリン、異形の存在すぎて周囲から浮く。その場にいる男どもがみんなマリリンに視線をやり、もうひとつの夫婦の、夫が妻に「きみもあんな服を着てみろよ」と言ったのに、妻が「あんな服を着るためには、13歳から準備が必要なの」と答えたの、いいセリフだった。



人が亡くなり、マリリンは物語の途中で退場し、残り3分の1は大自然サバイバルもののような、別の映画のようになっていく。サスペンスとしては物足りないところが多々あるものの、つまらないけどマリリンを観られたから満足。というだけの映画でもない。ロケ地になっているナイアガラの滝の地形の面白さ、滝を観に行った人たちが危険な思いをする場面もあって、あんな有名観光地なのに危険対策の脇が甘いな・・など行ったことのない場所を、映画を通じて旅する。という魅力もあった。


そして最後の場面まで観たとき、あ、この映画、前に観たことあったわ・・・と、ようやく気づいたのであった。よくあることだよ・・。