CINEMA STUDIO28

2015-08-27

東京おにぎり娘

 
 
若尾文子映画祭、8本目。「東京おにぎり娘」って、タイトル…適当につけたでしょ…?って詰め寄りたくなるよ。ロビーに貼られたポスターのコピー「にぎって頂だい恋の味!私は今が喰べざかり!」というのもなんとも…と、心でクスクス笑いながら座席へ。
 
 
あらすじを引用。
 
「ちゃきちゃきの江戸っ子であるまり子(若尾文子)は、閑古鳥が鳴いていた父親(中村鴈治郎)のテーラーをおにぎり屋に改装し、繁盛させることに成功。だが、BFたちとの恋のほうはイマイチで…。若尾のナレーションで始まる導入部分もチャーミングで必見!」親同士が結婚させようと仕組んでる仲良し同級生に川口浩、おにぎり屋の常連になる怪しい社長に伊藤雄之助、ダンサー役に叶順子。監督は田中重雄、1961年、大映のカラー映画。
 
 
わたくしの若尾文子映画祭も折り返しを過ぎたのに、何かがまだ始まっていない気がする…何かしら…?と考えてみると、川口浩の出る映画を1本も観ていなかったのだった。大映好きの理由の3割は川口浩を観られるからなのに…あかんあかん、なんでもええわ、浩はんの出てはるん観なあかん、と中村鴈治郎口調で呟きつつ始まった「東京おにぎり娘」、61年当時の新橋の風景から始まり、若尾文子のナレーションで、あたしは新橋生まれ新橋育ち、新橋のこっち側で…と、家までの道案内。お盆前の時期、新橋に何度か食事に行ったので、景色の変わらないところ・変わったところがくっきり見えて楽しい。新橋以外にも、おばさんのお店のある新宿や、おにぎり屋の開店前に食器類を買いに出かけた銀座と思われる街など、ロケが多い映画らしく、当時の東京のあちこちが映る。
 
 
川口浩はというと、新宿で音楽の仕事をしている(劇場勤務だったかな)男・五郎さん。おばさん達が仕組んだ結婚話、どうしようか…と、2人で話し合い、より好きになったほうがプロポーズするのはどう?と世にも可愛らしい取り決めが行われる。「きっと五郎さんね」「いやぁ、まりちゃんだよ」など、そちらのまり子さん、川口浩といちゃいちゃして、結構なことですわね…(嫉妬)。
 
 
おにぎり屋を開店したら繁盛し、まり子を狙う怪しい社長・伊藤雄之助などが常連として訪れるのだけど、かなり面白気持ち悪い役で出てくる度に笑える。そして中村鴈治郎が仕立て屋の役のため、おじさんに仕立ててもらったやつ、と周りの男たちがスーツやジャケットを着ているのだけど、川口浩、サイズが合ってないような…。もしくは肩に合わせると身ごろがだぶつく体型なのかもしれない。川口浩にばかり注目し、身ごろのだぶつきまで気にする私…。
 
 
「最高殊勲夫人」のように、文子といえば浩、ロマコメのセオリーどおり、憎まれ口をたたき合いながらも最後は結ばれるのだと思っていた。思わぬほろ苦さに驚きながらも、ほろ苦い結末が映画に深みを与えてもいる。「東京おにぎり娘」なんてタイトルからは思いもよらない、親子の世代交代の話でもあるし、仕立て屋から既製服に移る時期の話でもあり、さまざまな過渡期を描いた映画。ああ、慕ってくれる男はたくさんいるのに、好きな1人とはうまくいかないんだね…まり子って名前の女は、どうか幸せにしてやっとくれよ…。