CINEMA STUDIO28

2016-02-23

さよなら、人類

 
 
 
ギンレイホールで。ロイ・アンダーソン「さよなら、人類」を観る。スウェーデン映画。
 
 
 
 
2014年の東京国際映画祭でかかった時は「実存を省みる枝の上の鳩」というタイトルで、これは原題の直訳。その年の映画祭では「破裂するドリアンの河の記憶」と並び、長く意味ありげなタイトルシリーズとして頭の隅に残っていたから、タイトルは重要。映画祭もロードショーで見逃したので、ギンレイでかかってくれて良かった。
 
シュールなジャック・タチという評判を聞いており、冒頭20分ほどは、なるほどね、ふむふむ。と観た。場所はあちこち変わるのに、壁の色がずっと同じトーンで、スウェーデンにはあの色の壁が多いのね。と思っていたら、全部セットらしい。ワンシーン・ワンカットで撮った39のシーンからなる。
 
 
吸血鬼の牙、笑い袋、歯抜けおやじマスク、今時どこで売れるの?という面白グッズの営業マン2人を中心に、市井の人々、馬、国王が登場、時勢も過去・現在・未来が交錯する群像劇。強烈なセクハラフラメンコ女性インストラクターが、彼女が中心ではない場面で、お気に入り男性とレストランで食事してるのが画面の隅にチラチラ映ってて、むしろそちらが気になるわ!(やがて泣き始め・・正式にフラれたのかな)画面全体見逃せない!と緊張して眺めているうちに疲れ、最後10分ほど眠った。肝心なところで・・・。
 
 
馬に乗った国王がカフェに登場する2度目の場面、戦争に負け、男たちは戦死し、女たちは泣いているのだ。と理解したあたりから、観る目も変わった。営業マン2人、高圧的な男、すぐ泣く弱い男の関係も、親密なようで微妙な力学が働いており、抑圧と非抑圧が描かれているのだな、と最後のほうに半分眠りながら理解して、そう考えると、この映画のほとんどは絵画のようなトーンで感情を打ち消しながら、抑圧と非抑圧の歴史と現在が描かれていたようにも思う。
 
 
酒代が払えないなら、キスで払って!の、ロッタの酒場の場面が好きだけど、あれも抑圧(ロッタ)/非抑圧(酒のためにキスしなければならない兵士たち)の構図だったのだろうか、と考えると、無邪気に好きとも言っておられぬ、スウェーデンの歴史も調べたくなるなど、何かしらもっと深読みをしたくなる映画だった。