CINEMA STUDIO28

2016-02-21

Cinema studio28 award 2015 / Best H.K.

映画ベスト、最後は2015 Best H.K.!H.K.って?って野暮な質問ですね。川口浩に決まってるでしょ!2015年は大規模な若尾文子映画祭が開催され、短い期間で何本も大映映画を観たので、若尾文子だけではなく、大映俳優陣とは、もはやクラスメート気分。大映に短期留学したみたい。映画黄金期とはいえ、ある映画では恋人同士だった2人が、別の映画ではドロドロ反目しあってたりして、それが同じ年の公開だったりして、製作陣も俳優陣も混乱しなかったのかなぁ。
 
 
 
 
川口浩に関して我がオールタイムベストは、「最高殊勲夫人」、オムニバスの一篇だけど「女経」で、「くちづけ」「おとうと」など代表作からはちょっと外れていると思われ、軽やかなシティボーイとしての川口浩が好きなのよね。若尾文子映画祭では、これらの映画はパスして未見のものを中心に観た。未知なる川口浩。
 

改めてカウントしてみると、観た中で川口浩出演作は5本。もっと観ればよかったな…でも川口浩映画祭ではないものね…。
 
・東京おにぎり娘(1961年)
 
これだけレビューを書いておる。
 
若尾文子演じる主人公が、まりこっていう名前で、川口浩演じる五郎さんとは幼馴染、親同士も結婚しちゃいなさいよ、とけしかけるのだけど、より好きになったほうが結婚を申し込みましょう。など言ってる間に、五郎さんが他の相手に恋してしまうという、まりこ的にほろ苦い物語。川口浩に関係ないけど、その後で観た「濡れた二人」でも主人公の名前、まりこだったのだけど、獣と人間の成分半々ぐらいの北大路欣也(この映画は珍品。異様にギラついた北大路欣也だけでも観る価値はある)と…ああ…という展開で、気持ちが揺れる情緒不安定なまりこ。まりこが幸せになれない映画を2本観て、大映のプロデューサーか誰か、まりこって名前の女にこっぴどくフラれたとか、高いもの買わされた挙句に逃げられたとか何か恨みでもあるんでしょうか。まりこって名前の女はだいたい勝気だから(まりこ調べ)、もしかして…。
 
・家庭の事情(1962年)
 
定年を迎えたパパが、退職金を4姉妹にきっちり4分割して渡し、これで子育ては終了!と宣言する物語。男に貢ごうとする女、商売を始めんとする女、姉妹にもいろいろいるけど、最後には昭和っぽくみんな落ち着き先が見つかって丸くおさまったね!というホームドラマ。すでに記憶の遠くにあるのだけど、川口浩の印象が薄い。群像劇で出番が少なかったせいか。田宮二郎が田宮二郎らしさを発揮していてそちらの印象で上書きされている。
 
・女は抵抗する(1960年)
 
ロカビリーブームを背景に、敏腕女性プロモーター(若尾文子)が男社会でお仕事頑張ります、な物語で、川口浩は彼女を支えるジャズバンドのリーダーだったかな。映画自体の印象が薄いのだけど、女性ファンが紙テープ投げまくって歌手たちの身体に身動きとれなくなるぐらい絡みつくロカビリー喫茶の描写が何度か登場して強烈であった。
 
・閉店時間(1962年)
 
若尾文子、野添ひとみ、江波杏子のデパートガール3人組のそれぞれの青春。若尾文子が自立した女性で、川口浩演じる男尊女卑思想の社員と対立しながらも最後は…という物語。川口浩が途中までなかなかイヤなやつなのだけど、改心する過程が唐突気味で、え?もう変わっちゃったの?って拍子抜け。
 
・美貌に罪あり(1959年)
 
増村保造の映画、これは初見。若尾文子映画祭で観た中でもかなりの掘り出し物。あらすじだけ読むと、農家暮らしに嫌気がさした若尾文子がスチュワーデスを目指すお仕事青春ものに思えるのだけど、観てみると、昔から続く日本の家長制度が解体され近代化していく流れを、ひとつの家族の個々の決断になぞらえて描く、見ごたえたっぷりのドラマであった。美貌に罪あり、というタイトルが謎。杉村春子の存在感が見事すぎて他の出演陣が霞むほどで、川口浩の印象が薄い。若尾文子の実家の近くに住んでる幼馴染だったかな。山本富士子が踊りの師匠で勝新太郎と踊る場面があり、大映絶頂期のお金かかってそうな前衛的な舞台美術で謎のモダン日本舞踊を踊る…という奇妙な味わいの場面もあるし、野添ひとみも絶品。あまり上映されない印象だけど、これはまた是非とも観たいな。って、川口浩のこと何も語っていない…。
 
 
以上の中から2015Best H.K.は…(ドロドロドロドロドロ)…「東京おにぎり娘」!他の印象が薄いので消去法的に気弱に決定。まりこが幸せになれないのが気になるけど、川口浩に「まりちゃん!」って呼んでもらってしばらくの間は幸せであった。親同士が結婚させたがってるけど私たちは当分しないんだから設定は「最高殊勲夫人」と同じだけど、あちらはロマコメの定石に従い世にも可愛く成婚していた。新橋でおにぎり屋を営むまりこさんに伝えたいのは、相手は川口浩よ?わかってんの?もったいぶらずにさっさとつかまえなさい!ということである。2016年もまだ観ぬ川口浩との出会いを期待し、長々と続けたCinema studio28 award、発表終了。