CINEMA STUDIO28

2014-01-17

Before sunset

 
 
復習、間に合った。「Before sunset」無事に見終わり。昨夜、ウィーンで出会った23歳という設定のふたりを見た眼で今夜、パリで再開した32歳の2人を見ると、9年という年月は、顔にあった薄く柔らかな脂肪を奪い去り、頬骨を目立たせ、目の窪みの位置や額の皺の位置を示すのにじゅうぶんだったのだな、と思い知らされる。そして自分も同じだけ年をとっているのだ。「Before sunset」の公開当時、私は東京に住んでいて、確か恵比寿ガーデンシネマで観た記憶があるけど、映画館ももうなくなってしまったし、その後、東京パリ東京と移動して何度も引越しをし、仕事も変わり、あの頃周りにいた人たちもほとんど今はおらず、あの頃着ていた洋服もほとんど今は持っていない。長い年月というのは、人の生活をすっかり変えてしまうものだな。映画の中でも、現実でも。
 
 
「Before sunset」観た後、はたしてジェシーは飛行機に乗ったのか?乗らなかったのか?を何人かと話した記憶がある。みんな「乗ったと思う。彼にはアメリカに家庭があるのだし」と言って「きっと、乗らずにパリに残ったと思う」と言ったのは私だけだった。当時の私が今より多少ロマンティックだったとして、今観たらどう思うかな?と考えながら観終わり、やっぱり今の私も、ジェシーは飛行機に乗らないのだろうな、と思った。
 
 
これはきっと願望まじりのロマンティックな観測などではなく、2人の行動を冷静に観察した私なりの結論。特にジェシーの言動は、このような発言で、このような表情の男であれば、きっと「運命の相手」にこだわって、現実を捨てるであろうと思わせるにじゅうぶんだと思ったのだ。そしてセリーヌの側にも付け入る弱みはおおいにあった。最後にたどり着くセリーヌの部屋は彼女らしい生活感に溢れており、ジェシーにこの部屋で一緒に暮らす自分、キッチンでカモミールティーを作りながら踊るセリーヌを眺める日々を妄想するにうってつけすぎる環境だった。そんな夢の中にいるような時間を経て、うまく現実との折り合いをつけられるような男には見えなかったのだ。
 
 
 
 
明日から公開される3作目「Before midnight」について情報をとりすぎないように注意しつつも、漏れ伝わるあらすじによると、2人は結婚したのかどうかわからないけどとにかく一緒に暮らしており、子供も産まれたらしい。 次の舞台はギリシャとのこと。もうきっと会うこともない、前作公開後にあーだこーだ話した人々の目をじっと覗き込んで「ほらね、飛行機にはきっと乗らないって言ったでしょ?」って、したり顔で言い放ちたい気分。仕事の帰りに映画館に寄って明日のチケット、しっかり確保。
 
 
Bon week-end!