CINEMA STUDIO28

2013-12-16

Gravity

 
 
六本木ヒルズで「ゼロ・グラビティ」を観た。なんという映画!地球上の全生命体よ、今すぐ3Dメガネかけてこの映画を観よ!
 
 
 
 
TOHOシネマズDAYだったから1300円で観てしまったけど、サンドラ・ブロックのグレーのタンクトップに万札折り畳んでおひねり滑り込ませたい。映画のデジタル化を嘆き、フィルムの古い映画の画面の傷やバチバチ音を愛し、「本作品は制作から長い年月が経っておりますのでお見苦しいところお聞き苦しいところがありますがどうぞご了承ください」って場内アナウンスに「そんなぁ。謝らなくていいよぅ(むしろ萌えてるよぅ)」と思う程度にフィルム原理主義者だけど、人間の顔以外はほぼ人工的に作られた「ゼロ・グラビティ」、映画創世記の観客がリュミエール兄弟の「列車の到着」に腰を抜かしたように、誰も観たことのないような世界を観客の前に出現させるために汗した製作者たちの熱意を堪能せずして、21世紀の現在を生きる人類が廃るわ。
 
 
とにかく大画面で!3Dで!東京国際映画祭でいくつか作品を六本木ヒルズのスクリーン7で観て、素晴らしい環境だと思ったのでヒルズで。前方の席だと視界に前方の人類の頭部が映りこむことなく、大スクリーンと自分という環境で観られるから好き。でもやっぱり遠出してでもIMAXで観るべきだなぁ。二度目観るならIMAXにしよう。
 
※ここから先は映画の内容にかなり触れます。

↑撮影風景。メイキングあったら是非観たい
 
 
・宇宙でさっき撮ってきたような映像が素晴らしい。酸素の薄さを感じる臨場感。遊園地のアトラクションに乗ってるみたいな体感の映画だから、90分少しという短さがとても効いている。
 
 
・映像美はもちろんのこと、物語がシンプルなことがとても良い。ほぼ1人の女性の喪失と獲得しか描いてない。変に再現映像を挟むこともなく、あくまで「宇宙で起こっていること」だけを撮る英断。何を撮るかより、何を撮らないかこそセンスだよなぁ。
 
 
・サンドラ・ブロックっていい女優なんだなぁ。大画面を数十分ひとりで支配できる女優なんてめったにいない。キャスティングはアンジェリーナ・ジョリー→マリオン・コルティヤール→スカーレット・ヨハンソン→ブレイク・ライブリー(何故?絶対無理だと思う)→ナタリー・ポートマンが検討された後にサンドラ・ブロックに決まったらしいけど、有名女優なら誰でもいいのか?って顔ぶれである。「君と歩く世界」が良かったので敢えて選ぶならマリオン・コルティヤールかな?と思うけど、サンドラ・ブロックのあの年齢、あの身体、あの髪型、あの表情は余人に代え難い。しかも演じてるときは我々が観ている宇宙なんて何も見えない状態であれを演じてるのね。やまだくんサンドラさんにオスカー3つやっとくれと言いたい。
 
 
・ジョージ・クルーニーはこの先数年私の「上司にしたいハリウッド俳優ランキング」上位を占め続けるだろう。酸素の都合でセリフがとても限られた数しかないのに、余計なことばかり言ってるようでひとりの女性が宇宙でサバイバルするのに必要なメンタル/フィジカル双方の教えを少ないセリフですっかり伝えていた。
 
 
・ビリー・ワイルダーは映画冒頭のショットに伏線をたっぷり張って、きっちり回収して終わる脚本を書く人だったけど、この映画もそのようにたとえば飛行船を浮遊する物体などにその後の展開の鍵が潜んでいる。後に火事を引き起こす配線はサンドラ・ブロックが通り過ぎた時から火花を散らしていた。あと、中国の宇宙船に卓球ラケットが飛んでるのには笑った。
 
 
・中国にはどんな困った人が乗ってくるかわからないんだから、宇宙船内はせめて中国語/英語の二ヶ国語表記にしなさいと伝えたい。そしてロシアに迷惑かけられたアメリカが中国に助けられるという流れの物語でもあるね・・。
 
 
・エンドロールはキャストの少なさとスタッフの多さのコントラストが見物!何気にヒューストンの管制塔の声が「アポロ13」のエド・ハリス。
 
 
・哀しみを抱えた女が宇宙で一度死に、海に落ちて、羊水に浸り、生き返る。サンドラ・ブロックがもう若くはなく、しかし覚悟で凛とした、動くたびに太ももにぴぴっと筋が入る、鍛えていないとああはならない身体でそんな女を演じている。突入する前「10分後もし焼け死んでいたとしても、これは最高の旅だった」ってセリフ、たまらない。久しぶりの重力を感じて陸に立ち上がるラストショットは後光が射していた。喪失なくして獲得なし。此処から永久の場所で起こった出来事が平坦な地上で酸素を吸いながら淡々と生きる私の心を打つなんて、そんな離れ業も、映画にはできるんだなぁ。
 
 
 
 
 
 
サンドラ・ブロックが話しかけてた、地上にいる犬と赤ちゃんがいる場所。は、こんな場所だったみたい。我々は声だけ知ってる相手について、本当に何も知らない。