雪の日に、アンスティテュ・フランセで。アントナン・ベレジャトコ監督(難しい名前!)2013年のフランス映画「7月14日の娘」を観る。フランスの今をときめく?俳優、ヴァンサン・マケーニュが出演しており、上映後には来日した本人によるティーチインがあった。上映前にも挨拶に登壇し、外は雪が降ってるけど、映画の中は夏だよ!と言い残して上映が始まった。
7月14日は巴里祭、革命記念日。大統領などなどが登場するセレモニーがあり、空を軍事飛行機が曲芸飛行した跡にトリコロールの煙が残り、夜は花火。労働の日々とヴァカンスの境目の一日でもあり、祭が終わると一斉にヴァカンス先への民族大移動が始まる。冒頭、映し出されたセレモニーの映像は現実の映像を繋いだもので、サルコジ前大統領が写っていた。くすんだ色調の画面ながら、これは現代なのか?しかし続く物語に登場する人々のファッションはレトロっぽくもあり、冒頭から混乱させられる。
7月14日、勤務先のルーブル美術館で出会った男女が、周りを巻き込んでヴァカンスに向かうも、経済危機のフランスではヴァカンスは贅沢品で道は空いている。政府は突然、ヴァカンスを1ヶ月短縮することを決定し、7月14日の娘たちはなかなか海にたどり着けない。
物語はあってないようなものだった。始まってすぐに、これは「地下鉄のザジ」みたいだし、ゴダールの「ウィークエンド」みたいと気づいたら、辻褄なんて合わなくても良いと気楽に画面を眺められた。特にゴダールへのオマージュはたっぷり捧げられており、シャンゼリゼで記念品を売る女の子はジーン・セバーグみたいだし、ラストは気狂いピエロみたい。ゴダールの可愛らしい部分を抽出したみいたいな映画だった。
主演女優は行き当たりばったりに生きており、しかしそれが可愛く、
ヴァンサン・マケーニュはあられもない格好で車を運転する。途中、お医者さん?だったっけな、ものすごくキャラの濃いおじさんの家に立ち寄ったあたりのクレイジーな場面は何度も観たい。ドタバタした喜劇的な装飾を剥がしていくと、ボーイミーツガールのピュアなラブストーリーが芯に残る可愛らしい映画だった。日本語字幕もついたことだし、なかなか笑えて楽しかったから、真夏に上映されたら楽しそうだけど、果たして公開されるのかな・・。もしソフト化されるようなことがあったら、金曜など頭が疲れた夜に、部屋で流しっぱなしにして、ちらちら横目で見ながら時々画面の中の馬鹿騒ぎと目があってはクスクス笑う夜はきっととても楽しそう。