指折り楽しみにしてた「アメリカン・ハッスル」、初日の昨日早速観たかったけど仕事で無理だったので2日めに。監督や俳優陣がプロモーション来日できなかったお詫びに公開初日1000円の粋なサービスだったもよう。いろんな賞にノミネートされてる話題作だけど、公開はシネコンの小さめのスクリーンなのが意外。観る人を選びそうだからかな。
70年代後半、おとり捜査でアメリカを揺るがしたらしいアブスキャム事件がベースになっているほぼ実話とのこと。カジノ建設を巡る政治家の汚職を捜査するために、FBIと天才詐欺師がタッグを組み、騙し騙されのめくるめく物語。同じく事実は小説より奇なりシリーズの「アルゴ」みたいなスカッと感を想像してたら、ちょっと予想外の感触だったのは正義がどこにもない設定だったからかな。
「ザ・ファイター」しかり「世界にひとつのプレイブック」しかり、デヴィッド・O・ラッセルの映画はいつも物語どうこうよりも俳優が記憶に残る。スター俳優ばかりながら、他の監督の映画では見られない表情ばかり見られるのだから。以下、俳優についてメモ。
・ブラッドリー・クーパーもエイミー・アダムスも、どの監督と組んだとしても彼らが出てるだけで観たくなる大好きな俳優だけど、この映画ではクリスチャン・ベイル、そしてジェニファー・ローレンスの印象のほうが強かった。特にエイミー・アダムスは期待に比べて観終わった後の印象薄さが意外なほど。
・髪型はバーコードでメタボ体型に変身したクリスチャン・ベイル、妻がジェニファー・ローレンス、愛人がエイミー・アダムスって私の理想を体現したような男。そんな男に私はなりたい。2人とも美しいのだけど、美しさが後回しになるぐらいまず濃いキャラクターが先に立つ女ども。そんな女2人に執着されるクリスチャン・ベールの役どころは、外見のハンデを補って余りある魅力的な男であった。かっこよくても自分のことしか考えてなさそうなブラッドリー・クーパーよりだいたいの女性はクリスチャン・ベイルのほうが好きなんじゃないかしらん。
・一瞬だけ登場するデニーロは、出演時間の短さに反比例する半端ない存在感で物語の漬物石みたいな機能を果たしていた。座ってるだけで漂う重厚感、「世界にひとつのプレイブック」でのボンクラ父さんとは真逆すぎた。
・そしてこんな濃い俳優陣の中にあって一際目立つジェニファー・ローレンス。もうどう考えても大好きなので贔屓目で見てしまうのはしょうがないとして、完全に周りを喰ってた。登場人物みんなまともな選択ができない困った大人揃いだけど、ジェニファー演じる詐欺師の若妻、情緒不安定ながらなんだかんだ誰よりも逞しく生きていきそうな野太さも漂わせ、役を完全に自分に引き寄せた彼女が画面に映るだけで物語に奥行きが生まれてた。まだ若いのにどう生きたらそんな演技できるのかまるでわからない女優、日本代表・芦田愛菜ちゃん、世界代表・ジェニファー・ローレンス。ジェニファーはきっと憑依型なのだと予想する。対してエイミー・アダムスは役作りに努力の跡が見えて、それも良かった。
・詐欺師と愛人の出会い、愛人がつけてたデューク・エリントンの顔写真使ったブレスレットに目をつけた詐欺師が、それをネタに話しかけ、一緒にデューク・エリントンのレコード聴いて親密になるってのが、デューク・エリントン好きな私にはツボ。70年代にはそんな出会い方もあったのね?全編通じて音楽が見事。70年代ファッションはあまり好きじゃないけど、エイミー・アダムス着こなすセクシーなドレス…DVFのラップドレスもあったな!…は、とても素敵。
・オスカーは主演俳優、女優、助演俳優、女優にノミネートされており、そろそろエイミー・アダムスに獲ってほしいけど、個人的にはこの映画より去年の「ザ・マスター」での彼女のほうが好きだった。ジェニファー・ローレンスは去年主演でオスカー獲った「世界にひとつのプレイブック」より助演ノミネートされた「アメリカン・ハッスル」の演技のほうが見事だと思ったので2年連続で獲ったら嬉しいな。30〜40年後、ジェニファーがオスカーノミネート15回目です。みたいなメリル・ストリープを軽々と超えた女優になった暁には、彼女が最初にオスカー獲ったときはディオールのドレス着て階段でコケたのよってドヤ顔で語る面倒くさい映画ファンになっている予定。
会話量が多く緊張しながら展開を追う必要があった分、もう一度観ると新たな発見が多そうなので名画座にまわった頃にまた観たい!
気さくすぎる天才女優。この貫禄で23歳…。