CINEMA STUDIO28

2014-12-30

Conte d'hiver

 
 
年末に向かうこの時期、同じ時期を描いたエリック・ロメール「冬物語」を観たくなるけど、タイミングよく映画館にかかる奇跡は起こらないし、ロメールのほとんどはレンタルもされていない。Blu-rayが発売されてるのは知ってるけど、所有嫌いとしては何か…別の方法…もしや?とリサーチしてみたら文京区図書館がDVDを所蔵していた。今年の灯台もと暗しランキングBest3に入る出来事。本当に何でもある図書館。引っ越せる気がしない…。
 
 
借りに行って驚き。ジップロックに入った状態で貸し出された…。確かに中身は見えるし安いし丈夫だし使わない手はないね。ロメール、四季の物語は全部あり、他に「海辺のポーリーヌ」「緑の光線」遺作の「アストレとセラドン」があることを記録しておく。
 
 
「冬物語」、12月14日から12月31日まで、パリとパリ近郊。つまらないミスで愛する人とはぐれてしまった主人公・フェリシーの物語。
 
 
映画を観る時、物語を立ち上がらせるためのロジックのようなものに興味があって、そのロジックのようなものに監督ならではの手つきが感じられる人が好きで、物語そのものにはあまり興味がないのだと思う。特定の俳優の熱狂的なファンというわけでもなく、俯瞰しながら画面を眺めているので、登場人物に強く感情移入ということは滅多にない。感情移入というわけではないけども、「冬物語」のフェリシーという主人公は、本当に自分そっくりだな、と観るたびに思う。これまで観てきた映画のほぼ全てにヒロインがいたとして、何千人ものヒロインからたったひとり、フェリシーにだけそう思ったのだから、N値としてはじゅうぶんのはず。
 
 
フェリシー、頭で考えることと身体で考えることの比率だったり、決断に至るまでの行動の積み上げ方、自分なりの結論に至った後の行動のすばやさ、振り返らなさ…他人にはきっと伝わりづらいだろうそういうことが、自分を見てるみたい。そんな主人公に、大晦日の日に極上の奇跡をもたらしてくれる「冬物語」1本だけで、ロメール、我が心の映画人殿堂入りは早々に決定というところ。
 
 
シェークスピア「冬物語」が下敷きにあり、キリスト教思想も、ロメールの物語に頻繁に登場する「パスカルの賭け」についても、この物語を理解するための、まだ詳しくない要素についてもっと知りたい。似てる!と強く感じるものの、説明しづらいフェリシーという女性について、もっと知るために。
 
 
この発言。まるで自分!
 
 
 
人生4度目ほどの今回の鑑賞においては、フェリシーが男性に対してかける物言いにぎょっとした。「あなたは相手じゃないの。きっと前世は兄弟だったのね。もしかして飼ってる犬か猫だったのかも」…。確かにフェリシーは私そっくりだけど、私はこんなことは言ってないはず。無意識のうちに言ってませんように…。