台風到来の予感さざめく中、庭園美術館へ。
こどもとファッションの展示、相変わらず会期ギリギリで。展示に加え、旧朝香宮邸のアールデコ建築を楽しむこと、何度訪れても庭園美術館の愉しみの筆頭だけど、今日は書斎の棚に陶器のペンギンの置物を発見。鳩さま(朝香宮鳩彦王)、ルビッチ映画にハーバート・マーシャルやメルヴィン・ダグラスと並んで登場しても違和感のない優雅さをお持ちであるだけでもう十分に魅力的なのに、ペンギンまでお好きでいらしたのですか!鳩さまのペンギンは3羽並んだ高級感あふれるペンギンであった。
こどもとファッションの展示はこちら、
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/160716-0831_children.html
ある年齢に達した子供が、それまで着ていた洋服を着なくなり、大人の仲間入りをする、例えばコルセットなしでのびのび動いていた身体が、3歳頃に達するとコルセット着用し小さな大人として扱われるようになる等、かつては(展示の中で最も古いのは19世紀後半だったかな)子供と大人の服飾が明確に区分されていたのが、やがて大人の服飾の機能性が追求され始め、子供の服飾の機能性の高さが逆に大人の服飾に取り入れられ始めるなど、相互影響の関係にある…という冒頭の展示から惹きこまれ、やがて日本でも子供の洋装化が裕福な家庭から順番に始まり浸透してゆく。子供の服飾は、親の欲望の投影でもあることを表現する現代美術は、みんな白襟のワンピースを着ていて、白襟が親が子供に求める(押し付ける?)無垢さの象徴のようで息苦しくも興味深かった。単に年代順に服飾を並べて説明するのではなく、絵画や児童雑誌も交えた多様な切り口で見応えがあった。
特に!ポール・ポワレの一角。ポワレが主宰したデザイン学校によるジャポニスムの影響を受けた大胆な柄(朝顔や橘)のチュニックにプリーツスカートのコーディネートなんて、そのまま大人サイズにして今年のトレンドとして売り出せそう。そしてポワレ自身の妻・息子・娘のための洋服が、さすがに目を瞠る美しさ。特に長女・ロジーヌのための儚く薄い麻の洗礼服。生まれ変わったらポワレの長女になりたい…。
それらの洋服は1910年代のものが多く、ポワレの多様な活動を考えるに、映画衣装を担当したりしていたのでは。と調べてみたら、あった!マルセル・レルビエ監督「人でなしの女」、1923年、衣装はポワレ!ポワレの洋服が人間に着られて動いてるところ観たいよ…と、さらに調べてみれば、去年メゾンエルメスで上映されていた。見逃した…。
http://www.maisonhermes.jp/ginza/movie/archives/11918/
舞台セットも奇抜で、写真を見る限り、1920年代の過剰さを煮詰めて出来上がったような映画という印象で、反射的にルビッチ「山猫リュシカ(1921年/ドイツ)」を思い出した。
「山猫リュシカ」を観ている間、噎せ返る過剰さに驚愕し、自分はいったい何を観ているのだろうと足元がぐらついたものだけど、「人でなしの女」も似た感想に至るのだろうか。次にどこかでかかることがあれば逃さず馳せ参じなければ。
こどもとファッションの展示は、8月31日まで。図録が完売しており、残念。