CINEMA STUDIO28

2015-04-20

Hangman's house

 
 
金曜夜のこと。LAから出張で東京に来ているお友達と、POSTALCOで待ち合わせして(POSTALCOのお店はひとつしかないし、狭いので迷わないだろうという意味で待ち合わせスポット…)、アップリンクへ。
 
 
サイレント映画ピアニスト柳下美恵さんの伴奏つきのピアノdeシネマという月に一度のイベント。4月はジョン・フォード「血涙の志士」。血涙と書いてけつるいと読む。1928年のサイレント映画。
 
 
詳細はこちら(結末に触れています)
 
 
ジョン・フォードの映画、ずいぶん昔に観た以来で記憶の遠くにしかなかったのだけど、この映画については、物語そのものは、いくつかの強いシーンの印象に上書きされ、伝わりづらい奥にあった。観終わるとほとんど筋書きを覚えていないのだけど、競走馬の走るシーンや屋敷の火事のシーンの迫力はとても良かった。馬以外に犬の表情も良くて、人間より動物に愛情がある監督なのでは…と思いながら観ていた。柳下美恵さんのピアノは映画の間は静かに映画に寄り添っていて、観終わると、あれ、どんな音楽だったっけって思い出せないほどさりげなく、私にとっての心地よい映画音楽のあり方だな、といつも思う。
 
 
「ピアノdeシネマ」のイベントは毎月違う映画がかかるけれど、「エリンの食卓」という短い映画を必ずピアノ伴奏つきで同時上映することになっているらしい。樫原辰郎監督による現代日本のサイレント映画で5分の超短篇。こちらは柳下さんではなく、別の若手のピアニスト女性が登場し演奏された。一度、通しで上映した後、柳下さんとピアニスト女性の掛け合いがあり、映画はラブロマンスともホラーともとれる玉虫色の印象で、ピアニストも映像の印象を受けながら演奏するので弾いてる人が映画をどう捉えたかによって演奏が変わる。掛け合いの中で実はこういう映画なのよ…と種明かしをした後、そのような映画だと知った上で二度目の上映があり、二度目の伴奏は一度目とはまるで違う、心地よい不協和音が響く不穏な音楽で、ピアニストが一瞬で感覚を切り替え即興で演奏を変化させた鋭さと技術に感心した。2種類聴けて、とてもラッキー。
 
 
「エリンの食卓」はクリス・マルケル「ラ・ジュテ」のような写真のような静止画を繋いだ映像で、エリンという名前は詳しい人がいればすぐにわかる小説へのオマージュらしい。会場に詳しい方がいらして、その場で説明していらしたのだけど、失念してしまった。何でもパッと答える人のいる、東京の観客って…と、しみじみ。
 
 
 
 
行けるかどうか不明だけど、来月のデブ君シリーズも、6月のセシル・B・デミルも気になる!