中国にいた時、あきらかに日本とは違う山の形など眺めて、あの山の頂上には300歳ぐらいの仙人が暮らしてる。って言われたら、きっと信じるね、私。と思っていて、今でも本当にいるんじゃないかと心のどこかで思ってるのだけど、マノエル・ド・オリヴェイラが106歳で亡くなったと聞いて、人間って必ずいつか死ぬって本当なんだなぁと変な感慨が生まれた。神様が特別な薬をふりかけたから死なない人なのだと思っていたし、むしろ老人の姿をした妖精か何かでは?と疑ってもいた。訃報に、とても寂しい気持ちでいる。
どの映画をいつ観たのか定かではないけど、全部映画館で観て、フィルモグラフィは制覇していないのでこれから出会うオリヴェイラ映画もまだまだある。なにしろ106年の堂々たる人生なのだから。
「アブラハム渓谷」は 確かユーロスペースで観て、到着してみるとロビーが人でごった返しており、座れるのかしらとハラハラしているとギリギリ、普段は座らないような隅っこの席に座れて、長い映画なのに立ち見もぎっしりの盛況だった。不実な女の一生を映した物語が最後まで到達した時、場内に満ちた陶酔の空気は今でも忘れられない。
「家路」だったか「家宝」だったか記憶が曖昧だけど、ポルトガル流ファムファタール物語も良かったな。「ブロンド少女は過激に美しく」といい、フランスやイタリアのファムファタールと印象が違って、骨も眉もヒールもがっしりと太さがあった。
ポカーンと呆気にとられるようなことが起きた時、心の中で、オリヴェイラの「永遠の語らい」の最後のマルコヴィッチの表情的ポカーンだわ!と形容して自分を落ち着かせているここ数年、この細かすぎる比喩が誰にでも伝わるようにもっとあの映画が観られるべきだと思ってる。
お気に入りのキュートなダンス映像、メモしておく。なんとオリヴェイラらしい映像なのだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=NDFDpXITOoA
去年観た「家族の灯り」の感想はこちら。こんな映画をつくる人が、もういないなんて。
http://cinemastudio28.blogspot.jp/2014/03/gebo-et-l.html
ポルトガルでは2日間、喪に服して半旗掲揚。出身のポルトでは3日間。 テレビはすべてオリヴェイラ追悼特集とのこと。