土曜、いつぶりかわからないほど久しぶりに庭園美術館へ。今、映画館に通ってるぐらいの頻度で美術館に通ってた時期があって、その頃、庭園美術館、とても好きだったな、と思い出しながら。リニューアルした庭園美術館は新館が近代的になり展示スペースもあった。
特に調べずに行ったら「ガレの庭」という展示の初日だった。これって先週、ふらっと行っていたら何もやってなかったってことだよな…くわばらくわばら…。エミール・ガレは自宅の広大な庭に何千種と植物を植え、植物学者としての顔もあり、花や虫への興味と詳しさがそのままデザインに活きている。とても柔軟な人だったようで、ジャポニスムが流行れば日本の植物を庭に植え、伊万里焼そっくりの陶器をデザインしたり。でもそのままそっくりは嫌だから、一面だけデルフト焼っぽく西洋の風景が描かれていたり。日本の影響を受けて西洋でつくられた陶器やガラスの作品が、西洋に影響を受けて日本で建てられた館に並ぶ、庭園美術館ならではの展示で、思いつきで来たのに堪能…。
去年、文化服装博物館に、文化学園のコレクションから、それを着た人がはっきりわかっている着物、洋服、小物類の展示を観に行った時、朝香宮様の際立った洒落者っぷりに驚いた。旅のトランクに入ってる香水瓶や小物のひとつひとつにモノグラムが入ってたりする。庭園美術館の凝りっぷりから考えるに、お家だけではなく着るものにもこだわりはあったのだろうな、と思っていたけど、こんな人だったとは…洋服ってその人を想像以上に物語るものですね。と、Google先生にさらに詳細を尋ねてみたら「パリの皇族モダニズム」という書籍を発見した。庭園美術館の家主、朝香宮様が20年代、パリに何年か暮らした時、あれこれの買い物の領収書を綴ったものが、どのような経緯で巷に流れたのか、古物商が持っていたのを何年か前、庭園美術館が買い戻したらしい。「領収書が明かす生活と経済感覚」というサブタイトルどおり、レストランや仕立屋の領収書から生活を推測したり、当時の庶民の物価水準と照らし合わせてみたり、という内容なのだけど、その内容が質量ともに尋常ではないことが面白い。到着した日に高級レストランに牡蠣を食べに、翌日にはオスマン通りのヴォワザンに三揃えを誂えに、馬術道具はエルメスで。異国生活にウキウキの様子が伝わってくるお買い物っぷり、1枚のドレスが庶民の生活費の何百倍もしたりもして、その頃東京は震災で.と考えると物議を醸し出しそうな内容ではあるのだけども(だから慌てて買い戻したのかしら…)対価を払う人がいてこそ文化は存続し、今こうやって私が庭園美術館を楽しんだりもできる、とも考えもしたり、興味深い研究を紹介した本なのだった。
そして朝香宮様は鳩彦さま、というお名前らしく、鳩さまと心の中で呼びながら読み進めていたのだけど、鳩さま、ルビッチ映画に出てきそうなお見た目である。ルビッチ・アメリカ時代じゃなく、ドイツ時代の…例えば「思ひ出」の、あの俳優みたいな…。
あ、「思ひ出」はローマの休日の男女反転版のような物語で、王子様の物語なのだった。ルビッチ顔、というより王子顔、ということなのかもしれない。