CINEMA STUDIO28

2015-12-26

初日 / 最高殊勲夫人

 
 
本日の映画/映画館。このところ夜の外出の頻度を減らしているせいか、映画館、久しぶりのような気がする。若尾文子映画祭、アンコール上映初日。夏、何度通ったかわからない角川シネマ新宿、4階に着くと人でごった返し熱気がすごい。それもそうよね、若尾文子さんの舞台挨拶があるんですもの!
 
 
 
 
 
舞台挨拶から「最高殊勲夫人」上映の回。さらっと挨拶するだけかと思えば、夏に出たインタビュー本(まだ読んでないけど評判が良いので楽しみ)の著者でもある共同通信の方と、若尾文子さんの対談形式で時間もたっぷり。最前列端っこの席に座っていたので、私の右30cmのところを通過して登壇された若尾文子さんは着物姿。聞き手がきっちり話を受けて繋げる方だったのでトークの内容も大充実。こういうのって聞き手の力量こそ大事よね…と思う。
 
・「最高殊勲夫人」の演出はセリフをとにかく早く言うことを求められた。
 
・「今観てみると、私の顔はなんだか若くって間が抜けてるわね」
 
・(川口浩さんとは共演が多く)「おぼっちゃん役が多いけど、さっぱりしててセリフもしっかりしてて。当時は朝から晩まで撮影で、たまに早く終わると私が車を運転して川崎敬三さんや浩さんを乗せ、銀座まで行って喫茶室でお茶を飲んだりして。リフレッシュだった。みんな同じ気持ちなのか、同じ喫茶室に岸恵子さんもいらしたりして」
 
・「とにかく朝から晩まで。撮影が伸びると撮影所の床で寝転がったりして。高いところに足場を組んで照明さんがその上にいたけど、照明さんも疲れてるから、明け方に照明さんが上から落ちてきたりして」
 
・(車の運転が好きで)「いろいろな車に乗ったけれど、どれも黒川(紀章さん)が買ってくれてたのですけど、60歳を最後に運転をやめることにして、最後に乗りたい車に乗ることにして、ロンドンでかっこいい男の人が乗っているのをよく見かけていたので、ベントレーにした。どうしようかしら、と思ったけど、届いちゃったから乗ることにして、でも大きな車で…三越劇場なんて駐車場に入らなかったりしてねぇ…」
 
・(大映映画は)「永田雅一さん(大映社長)が制作の映画は制作費が高い。そうじゃない映画もたくさんある」
 
・(最近の日本映画は)「若い人向けの題材が多く、私に演じられる役があるのかしら。フランスなんだかと老婦人、といった感じで私ぐらいの年齢の人が出てくるけど、日本の映画だとお婆ちゃん、だけですから」
 
・(お正月は)「同じマンションに石井ふく子さんや奈良岡朋子さんが住んでいらして、毎年石井さんからお誘いがある。今年はどうかしら?と思っていたらお誘いいただいたので、京マチ子さんも一緒にお雑煮を食べに伺います」
 
 
そして最後に会場に挨拶を、と促され「良いお年をお迎えください」と、あの声でおっしゃったので、なんだか良い年を迎えられるような気がする…!「最高殊勲夫人」の前の回、「しとやかな獣」上映後の回の記事がこちら
 
 
 
そして始まった「最高殊勲夫人」は1959年、増村保造監督のロマコメ。それぞれ兄、姉が2組続けて結婚したから、3組目にはならないぞ!と、川口浩と若尾文子が結婚しない宣言をするのだけど、お互い実は好きだから最後には…という結婚式で始まり結婚式で終わる映画。とにかく2人がこの上なくキュートで大大大好きな映画、もう何度目だろうか。今日は若尾さんのお話を聞いた直後だったので、冒頭の「制作」から注視していたのだけど…永田雅一じゃなかった。制作費、高くないんだなぁ。でもそれほど制作費かからなさそうな映画ではある。
 
 
2人がどんどん素直になっていく過程が可愛くてニヤニヤ見守ることに加えて、当時の東京の会社員・OL生活が細かく記録されているのがとっても楽しい。川口浩の月給は2万円弱。秘書の若尾文子は8000円。ランチは100円。文子パパ(宮口精二!)が勤める冴えない会社は新橋にあって、丸の内に憧れてる。その会社ではランチタイムにOLがメザシを焼いて食べてた。昼休みは屋上でバドミントンなどして体を動かす。夜はトンカツ、ビール、スキャンダルという名前のバー、ロカビリー喫茶。会社の重役が浮気しようとして旅行先は鬼怒川温泉、熱海。定年した文子パパは別の会社に嘱託で勤めることになって、人手が足りなくてしょうがないテレビ業界。これからはテレビ時代ですからな!OLの楽しみは昼休みにお汁粉やあんみつを食べること、関心は優秀な男子社員と結婚できるかどうか。2人の恋の成り行きを見守る他に、これだけのディティールが同時にわっと目に飛び込んできてどれもこれも興味深いから目がとっても忙しい。スクリーンで見ているからなおさら細部までしっかり見えて。
 
 
はぁ、何度目か忘れるほどの「最高殊勲夫人」今回もしっかり面白かった。デジタルリマスターの美しさはいまいちよくわからんなかったけど、つやつやの若尾文子と川口浩をスクリーンで観ることができてやっぱり感無量だった。