東京国際映画祭の記録、11本目…?カウントがもはや曖昧。写真はヒルズで撮ったものだけど、私は新宿で観た、コンペから「モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ」。作品解説はこちら。メキシコ映画。
去年のコンペでかかったのを、今は亡きシネマート六本木のアンコール上映で観た「ザ・レッスン」のような、社会的立場の弱い人物が些細なきっかけで転落しそうになり、もがく。というような物語だと事前に読んでいたので、「ザ・レッスン」をとても楽しんで観たから楽しみにしていたのだけど、この映画は今ひとつ乗り切れなかった。「ザ・レッスン」はよくできた映画なのだな。
診療中の夫が重篤になり、主治医や保険会社に迫る物語なのだけど、私のメキシコ映画経験値(ゼロに近い)ゆえ彼らの生活水準を読みきれていないのか、いやいやそれはメキシコゆえの、ということもなく世界普遍的な家庭の描写だったでしょ、と思ったり、とにかく彼らが困窮している、という映画的説明が弱く、そのせいで要求がエスカレートして暴走していく過程も、ただのモンスター級クレーマーにしか見えなかった。タイトルにあるモンスターってあの奥さんのことかしら…と思っていたら、頭ばかり多くて誰も責任をとろうとしない社会や大企業のことを指している(と何かで読んだ)らしく、は?クレーマーに絡まれた不運な人たちにしか見えなかったのだけど?と思ったりもして。つきあわされる息子くんがひどく気の毒に見え、最後に「次は…銀行かな」と母親がジョークのように言うセリフがまったく笑えず、メキシコの銀行の人々、気をつけて!としか思えなかった。
というのは、私は何かを見落としたのだろうか。そしてコンペでは、は?と思うような映画でも、その後のQ&Aで背景を知って補足されるケースもあるけど、新宿会場だったからかそれもなし。タイ映画「スナップ」を観た時、映画の中の疑問が、Q&Aで驚きの解決に至り、映画祭体験の醍醐味だけど、多くの場合、映画は映画単独で観られるものなので、ちょっと反則的鑑賞だったかな、とも思った。この映画は私の中で永遠に、モンスターはどっちやねん映画として記憶される…。