CINEMA STUDIO28

2015-12-29

What's up, Doc?

 
 
ピーター・ボグダノヴィッチの新作を観るので、ボグダノヴィッチ予習。ボグダノヴィッチ本人は、わりと最近、カサヴェテス「オープニング・ナイト」に映ってるのを見かけた。最後の最後、舞台の幕が大喝采で降りて、アフターパーティーでジーナ・ローランズに寄っていき挨拶する男たちのうちのひとり。「ピーター・ボグダノヴィッチだよ」という紹介のセリフもある。
 
 
What's up,Doc?は「おかしなおかしな大追跡」というタイトル、1972年の映画。スクリューボールコメディなのだけど、スピードはさほど速くない。画面の隅々まで眼を光らせて、じんわりクスクス笑う種類の喜劇。最近思ったのだけど、映画のジャンルで一番好きなのってコメディだわ。ルビッチだってコメディだものね。湿っぽいのが嫌いなのでメロドラマとか勘弁して(メロメロしはじめるとすぐ、そっちはそっちで勝手にやっとくれ、という気分になるので映画を観る意味なし)って感じだし、関西人だからというところもあるのかもしれない。
 
 
「おかしなおかしな大追跡」、本のページを1枚ずつめくっていくオープニングがとっても洒落てて、年の瀬に今年一番洒落てるオープニング大賞きた!と興奮。物語は、チェックの布地と革のコンビネーションの鞄を持つ4人の男女、鞄の中身はそれぞれ大金や極秘書類、やんごとなき中身だから、鞄を奪おうとする悪党たちに狙われホテルを舞台に繰り広げられる追いかけっこ。物語はクスクスしてるうちに順当に着地するのだけど、特筆すべきはヒロイン、バーブラ・ストライサンドのキラキラっぷり!「追憶」でしか観たことなかったけど、こんなキラキラの人なのか!ライアン・オニールに近づくべく悪巧みする表情がいちいちキュート。
 
 
悪いこと考えてまっせ…
 
 
バスタオル1枚で悪巧み。バーブラ、「追憶」の時とずいぶん表情違うし、活き活きした表情はコメディにこそ似合う。調子良さそうに見えて実はクレバーな役、目の底に知性があっていいのだよなあ。もっと綺麗な女優さんはたくさんいるのだろうけど、バーブラのこの輝きには誰も勝てぬよ。という気分にだんだんなってくる不思議な吸引力。
 
 
 
 
私の知り合いの女性2人を足して割ったような顔立ちだな、と思いながら観ていたのだけど、バーブラ以外にもいかにも60年代後半〜70年代始めのファッションやインテリアが楽しく、ライアン・オニールは常に変な表情(主に困り顔)なので気がつかないけど最後、ふと観ると整った美しい顔で、そして「ある愛の詩」のセリフ、あの世界映画史に残るだろうメロメロした決め台詞をセルフパロディでコケにして最高であった。
 
 
ボグダノヴィッチはといえば、特典映像でついていたオリジナル予告篇で演出風景が映っていたのだけど、バーブラとライアンの2人の場面を演出するのに、バーブラ役になりきって演技指導している姿が真剣なほど滑稽さが増し、ボグダノヴィッチ自身も彼の映画のように、観ているだけでクスクスしてしまう動きの人であるなぁ、と思ったのだった。