CINEMA STUDIO28

2016-04-20

ローリング

 
 
観た映画のメモ。「ローリング」を観た頃はまだ桜も咲いてなかったな…(遠い目)。
 
 
 
 
水戸を舞台にした、元教師・権藤と、権藤が東京から連れて帰ってきたキャバクラ嬢・みはり、権藤の教え子・貫一の三角関係の顛末。権藤は女子更衣室を盗撮し職を追われた、2016年日本・週刊誌の吊り広告で頻繁に見かける言い回しを用いるとゲスの極み教師と呼びたい男。彼が中心に据えられ、役者の魅力のせいなのかさほど嫌悪感を誘う描かれ方ではなかったけど、こういう、ダメな俺ですみません、えへへ。的人物が苦手でしょうがないので私は嫌悪しながら観た。
 
 
若き教え子・貫一が、権藤に不相応に可愛いキャバクラ嬢・みはりを一瞬で奪い、権藤はまた負の方向へと回転していく。若い2人が可愛くて、貫一に対しては登場の瞬間からさっさと寝盗っちまえ、と応援する気になるし、みはりちゃんに対しては後ろは振り返らずに行くが良い、未来は少なくとも今よりは明るいぞ!という気になる。貫一を三浦貴大が演じており、佇まい以上に声がいい。黙っているより話しているほうがいい男。
 
 
そして、みはりちゃん。「ローリング」は、みはりちゃんの不思議な聖性に支えられた物語だった。柳英里紗が演じていなければ、この映画は観ていられないものになったかもしれない。みはりちゃんはきっと頭からつま先まで国道沿いのしまむらで買ったものを身につけてる。ぴらぴらの化繊で露出度は高い。トレンドもブランドも知らないし、上質で丁寧な暮らしなんて考えたこともない。身体の70%はコンビニごはんでできている。そんなみはりちゃんが他の誰より、芸能人になった地元の同級生の女より、みはりちゃんのほうが断然可愛い。生っぽくて安上がりな、地方都市の天使として描かれる。
 
 
若い2人が水戸に見切りをつけ東京に行くことにして、みはりちゃんは権藤に別れの挨拶に来る。権藤なんてほっといて無言で出て行けばいいのに、そこで挨拶に来るのが天使というもので、権藤の負の回転力にずるずる巻き込まれていく。考えてみれば一度は水戸を離れた権藤も水戸に戻り、貫一もまた水戸を出ない。みはりちゃんは男たちにだけ見える天使だから、男たちが水戸を出ない限り水戸にいる。水戸から東京なんてたいして離れていないのに、東京じゃなくても出て行く場所はあるだろうに、水戸から出ない、出られない人たちの物語だった。水戸の磁場が強いのではない。彼らがただ出て行かないのだ。
 
 
ああ、みはりちゃん。頭だって悪くないはずなのに、優しさゆえに男たちの公共物と化し、哀しみの方向へ回転していくなんて、ちょっとモンローみたい。「ローリング」、権藤に苛立つので二度と観たくないけど、みはりちゃんに何度も会いたい葛藤とともに、時々思い出すことになるだろう。