CINEMA STUDIO28

2016-04-23

写真展 映画館

 
 
映画館に行く余裕はないけど、展示&トークは1回きりなのでこちらへ。
 
 
 
 
北から南まで津々浦々の映画館。2007年から映画館を撮影する旅に出始めたとのことで、当時は現役でも現在はもう閉館してしまってる映画館は多い。モノクロ、フィルム撮影ということで誤解していたけど、閉館した映画館ばかりではなく現役、もしくは開館に立ち会った映画館(元町映画館)や、新しめの映画館(広島の八丁座など)もあった。
 
 
「映画館と観客の文化史」では、欧米の初期の映画館の前身はヴォードヴィルショーの劇場が多かったと書かれていたのだけど、日本でも同じで芝居小屋から映画館に転換したところが多く、その面影を思い切り残した趣のある映画館が成人映画館だったりして驚き。それから京都、千本日活は「五番町夕霧楼」の舞台になったかつて遊郭だった一角にあって、千本日活は五番町の花街組合事務所の跡地に建っているというのが興味深い。古地図など好きな人なら詳しいのだろうけど、繁華街って昔から脈々と繁華街だし、映画館ってそんな界隈に建っていて、だからかつての新橋、浅草のように名画座の隣に成人映画館が併設されていたりするのよね。千本日活、行ったことないけど、現役なんだなぁ…。
 
 
トークの際の質疑応答で、巡った映画館で映画を観ているのか?との問いには、時間が合えば観ているけど旅程もタイトなので観ていないこともある。映画を観ることより映画館を撮ることが目的、と答えていたし、写真家でもあり映写技師でもある中馬聰さんは、映画自体もちろん好きなのだろうけど、映画館、映写室、フィルムによりざぶざぶと愛情と執着を抱いている印象だった。シネコン否定派の人からの質問には、快適だからシネコンによく行くしシネコンで観るのも好き、但しシネコンで観たことが印象に残るかと言えばそれは違う、と答えていた。
 
 
何より、こういった昔ながらの映画館を撮ることで、レトロ、ノスタルジックを好むように思われがちだが、むしろそれは避けたいと思っていること。写真を観てレトロ、ノスタルジックという感情を抱くのは観ている人であって、自分は写す対象にそれを求めているわけではない。という、きっぱりした言葉。昔ながらの映画館の写真を観る→ノスタルジックな気持ちになる→撮った写真家もそんな気持ちで撮ったのだろう、と推測するのは単純だけど、そうではない、というのを聞けて良かった。
 
 
 
 
 
一部、撮影可能エリアがあって、これは浅草中映・名画座の並び。時間表や番組表はフィルムセンターのスタッフの方が閉館に際して引き取り所蔵したものだとか。「彼氏と彼女の憧れの大スターに銀幕で再会しよう‼︎」って、言いたいことはわかるけどその日本語は正しいのだろうか、と思うフレーズながら、‼︎が斜めになってるだけで途端に漂う昭和っぽさよ。斜めになってるだけなのに…。
 
 
この写真の手前にミラノ座のカップルシートが置いてあり、ミラノ座の椅子に座って浅草を背景に写真を撮ることもできますよ、とのこと。それぞれ現役の頃は不可能だった、新宿と浅草の時空を超えたコラボレーション。この間まで座っていたミラノ座やシネパトスの座席は再会してみると、あなたそんな顔でしたっけ?という顔をしており、実用目的で座るための椅子だったから、まじまじ見たことなんてなかった。映画館でたくさん並んでいた座席が1つずつ取り出され、展示品として置かれているのを観て、ああ、ミラノ座やシネパトスでこれに座って映画を観る日々はもう過ぎ去ったんだな、と思った。
 
 
会期は7月までと長く、違う切り口のトークイベントもまたあるので、何度も通うつもり。