CINEMA STUDIO28

2016-09-30

滑り込み試写室



慌ただしい今週を、金曜にはさっと切り上げて映画観に行くんだ…と呪文を繰り返し乗り切り、映画は五臓六腑に染み渡った…(放心)。


銀座・東映本社の試写室で10月公開の「少女」を。湊かなえ原作、三島有紀子監督。去年、蓼科の映画祭で三島監督の「繕い裁つ人」を観て、これから物語が始まる、というところで終わってしまった印象を持ったのだけど、「少女」もそんな印象だったな…。もっと容赦ない映画が好きよ。



http://www.shoujo.jp/



10月、楽しみにしている西川美和監督「永い言い訳」、明日はNHKのSWITCHインタビューに出演されるようで楽しみにしているのだけど、対談場所が茅ヶ崎館!去年泊まった、小津安二郎監督ゆかりの宿。監督の背後の風景から察するに、私が夕食を食べた大広間が映るみたい。それも楽しみ。


http://www4.nhk.or.jp/switch-int/x/2016-10-01/31/27109/2037127/

2016-09-29

秋のはじめの読書



今週、移動中ずっと読んでいた宮本輝「錦繍」読了。かつて読んだのはどれほど前だっただろうか。時間潰しに入った本屋の棚でふと目にとまり、開いてみて冒頭の一文を読み、確かに自分はずいぶん前にこの文章を読んだ、と思い出して買って、積んだまま一年は経過している。


「前略
蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すらできないことでした。」


かつて夫婦だった男女が別れ、偶然再会し、手紙のやり取りが始まる。あとがきに書かれていたように、昭和60年頃、電話の普及が、手紙を旧時代の通信道具の位置に追いやった頃の物語。


「そして、だからこそ、作者、宮本輝氏の狙いがそこに定められたのではないだろうか。もしも電話の普及が手紙の多くを無用のものとしているのだとしたら、にもかかわらず書かれねばならぬ手紙とは、おそらく他のいかなる手段によっても取ってかわられることの出来ない、最も本質的な手紙であるに違いないからだ。ひとりの女が、ひとりの男に向けて、書くことによってだけ辛うじて伝え得る悔恨を、哀惜を、思慕を綴ったような便りが、手紙の中の手紙でなくてなんであろうか。」



往復書簡であるからして、そんな手紙の中の手紙を書くのは女だけではない。返事を送る男も書く。綴られる内容の激しさに依らず、書いている最中の二人は、水を打ったように冷んやりとした孤独の淵にきっと位置しており、私が書簡文学を好きなこと、手紙を書くことが好きな理由もそこにあるように思う。


今年舞台を観た後に読んだ井上靖「猟銃」も書簡文学で、あちらは映画化されていた。「錦繍」が映画化されたという話は聞かないし、知りうる限りされていないはずで、残念なような、ホッとするような。舞台化はされているようで、余貴美子、鹿賀丈史が主演とか。二人とも達者な演技なのだろうけど…小説のイメージより少し年を重ねすぎてやいないだろうか。40前後の俳優が向くだろうし、そのくらいの年齢であることに意味がある物語だと思う。

2016-09-28

豊作



食事をした人に、シン・ゴジラの話をしたら、それは観たくて観ていないけれど、「怒り」は観た。物語云々よりも、よくぞこれだけ主役級の俳優を揃えたね!と感嘆する映画だった、という話だったので、俄然観たくなっている。広瀬すずちゃんも好きだし。



http://www.ikari-movie.com/


今年、映画についての話題の大半は邦画。邦画はいつだって面白い、観るものをちゃんと選べば。と、邦画なんてつまらない、と言う人にこれまで反論してきたけれど、今年は確かに近年稀に見る豊作だと思う。

2016-09-27

新調/清朝



奈良滞在時に、お昼を食べに行った奈良ホテル。オードリー・ヘップバーンにチャップリン、格式あるホテルらしい華々しい宿泊客。館内あちこちに歴史を語る写真や道具類があり、メインダイニング前にあったこちらに目を奪われた。愛新覚羅溥儀の来館時に新調。


清朝最後の皇帝。ベルトルッチ「ラスト・エンペラー」の、あの人。反射的に去年の夏の北京を思い出した。




紫禁城(故宮)には、いろんな人を連れてこれまで10回ほど行っているので、去年の訪問時はパスした。なにぶん広いので、隅々まで観て回るには時間がかかる。しかし、北京に来たからには故宮を眺めておきたい欲求はあり、夕食の約束をした友達に、せっかくだから、景山で夕陽を観てからレストランに向かう、とメッセージして景山に登る。


景山は故宮の真北にある小高い丘のような山で、面白いのは人工の山ということ。風水の背山面水の思想に従うべく、故宮に悪い気が流れるのを防ぐため、故宮の背である真北に人工の山を作ったとか。山といっても50メートルに満たないけれど、頂上にある万春亭からは故宮を一望できる。




こんなふうに。北京の空が烟っているのは、曇天だからではなく、空気が悪いせい。中国政府が協力し、何週間も故宮でロケして撮られた「ラスト・エンペラー」は、現実の街や人間を使って、史実といえどもあくまで虚構の物語を創り上げる、「現実が含まれた嘘」である映画らしい映画で、故宮を歩いてそこにあった生活に思いを馳せる時、脳内で繰り広げられる妄想で、主人公を演じてくれるのはやっぱりジョン・ローン。しかしこれほど大掛かりに、真に迫るべくセットではなく実際の故宮で撮ったのに、どの登場人物も皆、子役に至るまで、英語を話すことにおおいに違和感を覚えた。そこまで真に迫るなら、なぜ中国語を選ばなかったのかしら。演出上の問題?セールスを意識して?




と、頂上から故宮を見下ろしながら、考えるのもやはり映画のことで。烟る北京に陽が落ちるのを見届けて、山を降りた。

2016-09-26

ラインナップ



昨年の東京国際映画祭期間中の月。メインの六本木以外に会場はあちこちあるけど(これまで新宿、日本橋に行った)なるべく六本木で観よう。別会場だと、映画祭気分ゼロだから。なら国際映画祭がこれぞ奈良!という景色を映画の合間に堪能できたように、急いで上映に向かう中、ふっと目を向ければ東京タワーが視界に入るのが東京国際の密かな楽しみ。



ラインナップ発表、ライブ配信は見るの無理で、録画が配信されているfacebookをチェック。公式も更新された。





今年もやっぱりコンペ中心に観ることになりそう。コンペのプレゼンはスケジュールが出てから、チケット発売までに改めてじっくり観て情報収集。



ホン・サンス新作きた!



去年の「今は正しくあの時は間違い」、スクリーン7(ヒルズで一番大きなスクリーン)でホン・サンスを観られる日が来るなんて…と、わざわざ休みを取って観に行ったけど、配給が決まらないのか未だに公開されていないから観ておいて良かった。今年も大きなスクリーンで観られますように…。この作品紹介ページ、ジャンルのところ「アクション」になってるの、間違いよね?ホン・サンスのアクション!と妄想しただけで笑ってしまう。痴情のもつれがアクションに発展する…とか…?



海外の映画祭ではロカルノの結果をチェックしがちなのだけど、話題になっていたような記憶があるこの映画も気になる。



「牯嶺街少年殺人事件」、いち早く観たい気持ちはもちろんあるけど、来年ロードショー公開されるので他のとバッティングしそうなら映画祭では見送ろうかな。会場の熱気が凄そう。



コンペ、ルイス・クーの映画がある。ルイス・クー来日しないかな!



すでに名の知れた監督の最新作は、配給もつきがちなので、あまり製作国や監督名に縛られず、あらすじを読んでちょっと興味を持った程度の動機で観ると、新しく面白い映画を発見しやすい、というこれまでの傾向。しかし去年そうやって見送ったフレデリック・ワイズマン「ジャクソン・ハイツ」は配給されていないジレンマ。日本映画スプラッシュも毎年気になってるけど、日本映画を一番観やすいのは東京だし、と見送りがちだけど、実際公開される頃には見逃してしまう…。



そして映画祭が終わる頃には充実感と同時に、ああ、この世の観たい映画を観尽くすことなんて到底無理なのだわ…しおしお…という哀しみに襲われるの。と鉄道好きの友人に打ち明けると「わかる…この世のすべての電車に乗ることはできないし、すべての駅に降り立つこともない、って哀しみに自分も襲われる」と理解してもらえた。持つべきものはマイワールドを深堀りしがちな友であることよ。



ともあれ、チケット発売のその日まで、勝負勘を研ぎ澄ませて選ぶのみ。そして映画以外のあれこれを速やかに片付け、体調を万全に整える!

2016-09-25

2016/9/25





電化製品が同時に寿命を迎えたり、化粧品が同時になくなったり、新たに揃えるコストがかさむ…という話はよくあることとして、靴も賞味期限が同時に到来しがち…なのは私だけだろうか。オフィシャルに秋になり、靴がない。秋の服にサンダル履いて季節折衷な姿で一度買ってみたかった銀座の老舗に入店し、長く続く店には理由があるのね…としみじみする接客力を見せつけられ、一年中履けそうなベーシックなパンプスと、目が離せなくなってしまったルビッチ女優の如き雰囲気を漂わせるパンプスを購入。心躍る秋の入り口。



「シン・ゴジラ」を観に行った友人に感想を聞く。友人は鉄道好きで、007を一緒に観た時、007シリーズは電車を破壊しがちで胸が痛む、と言っていたのを思い出したから「シン・ゴジラ」についてはどうなのだろう、と。「無人在来線爆弾、電車を武器に使うな!という感じ?」と聞いたら、「いや、電車まじ有能!という感じ」とのこと。007は電車の破壊が何の役にも立っていないから胸が痛むのであって、「シン・ゴジラ」では大いに役に立っている、という線引きらしい。確かに007の破壊は映画のエンタメ度向上に寄与するのみだった。「ただ、JR東海とJR東日本は仲が悪いから、東日本の在来線と東海道新幹線があんな協力体制整えられる気がしない」と捕捉があって何かに愛の深い人ならではの映画の見方、興味深すぎる…。仲違いを乗り越えずにはいられないほど、非常時ってことね、ゴジラ。



明日は東京国際映画祭のラインナップ発表があるようで、楽しみ。

2016-09-24

2016/9/24



慌ただしくしていて、観た映画についてじっくり書けるような時間を確保できないでいる。


久しぶりにたっぷりした時間、関西に滞在してみて、朝出かけて映画を観て夜遅く帰宅するって、学生時代の生活みたい、と日々思っていた。


これまで国内外のいろんな街に通ったり暮らしたり関係を結び、どの街も合うところ、合わないところはありながら、振り返ってみればどの街も好き。おそらく、どの街にも素敵な映画館があって、浮き沈みのある日々の時間を、映画館に身を浸すことで自分を保てていた/いるのだと思う。


元町映画館に行ってみたい、というシンプルな理由で神戸に行って、「小さな映画館だから早くチケット買わないと満席になるのでは」という東京が植え付けた習慣に従い勇み足で買い求めたら、整理番号1番だった。前のめりすぎる。東京の速度で神戸を歩くのは違うのだ、と、ひとまず学習した。

2016-09-23

Cinema memo :あれこれ



昨夜は疲れが噴き出し、ドロドロと眠って起き、ヨレヨレと仕事に行き、帰宅して奈良から送った荷物を受け取って中身を整理し、徐々に日常に戻ってきた。



なら国際映画祭コンペ&学生映画のグランプリ、ゴールデンSHIKA賞、KOJIKA賞のトロフィーの素敵さを見て!木でできてると思うのだけど、受け取るフィルムメーカー達も遠い街からはるばる奈良に来て鹿に遭遇しない日はなかった…。と思ってるはず。今回の私のベストSHIKAメモリーは、真っ暗な春日大社の参道を歩いてる時、ふっと視界に登場した鹿のシルエット。公園に佇む牧歌的な鹿イメージとは違って、夜の静寂をすっと横切るような神話的登場だった。


東京に戻ると、東京国際映画祭のラインナップが徐々に解明しはじめ、「牯嶺街少年殺人事件」のリバイバルには胸躍る。どの会場でかかってもチケットは争奪戦になるだろう。少し待てば来年には全国の映画館に順次かかるようなのだけど。


http://natalie.mu/eiga/news/202519



それから、去年偶然見つけて行ってみた「海に浮かぶ映画館」は今年もあるようで、ラインナップが発表された。去年アンケートの「今後、何をかけてほしいですか?」の欄に、咄嗟に思いつかなくて、船だから…「アタラント号」かな、と捻りのないことを書いたのだけど、



http://umi-theater.jimdo.com/


酒井耕監督・濱口竜介監督の「なみのおと」!どこかでかからないかなあと思っていた1本、タイトルからして船で観るのにぴったりでは?


http://silentvoice.jp/naminooto/


トロフィーといい、リバイバルといい、ラインナップといい、自分たちの場所と映画を結びつけて、ああでもないこうでもないと思い巡らせ、形にしてみせてくれる、その過程が尊くて、享受する側も悦びに満たされます。

2016-09-22

SHIKA/KOJIKA



なら国際映画祭、最終日。


クロージング上映で深田晃司監督「淵に立つ」を観て、筒井真理子さん…!!!!!と感極まったので、上映前の監督と筒井真理子さんの舞台挨拶、振り返ってみると贅沢だった。


http://fuchi-movie.com/


その後、映画祭の各賞発表セレモニーを続けて。コンペも学生映画のほうも1プログラムずつしか観られなかったのだけど、私が観たものがコンペでも学生映画部門でもグランプリ(それぞれゴールデンSHIKA賞、ゴールデンKOJIKA賞。鹿&子鹿…)を受賞していて、私の勘の鋭さよ…と悦に入りかけたのだけど、わかりやすく観たいと思わせるものがわかりやすく受賞したということなのかもしれない。


結果はこちらに。
http://eiga.com/news/20160922/15/


移動時間が長かったせいか、気圧のせいか、東京に戻るとひどい頭痛でくらくらしている。

2016-09-21

汽笛



なら国際映画祭を今日はお休みして、神戸へ遠征。


奈良からだと梅田に出て乗り換えて…と面倒で遠く感じていたのだけど、近鉄と阪神の相互乗り入れで気がつけば身近になっていた。とは言え、関西にいた頃に乗り入れが始まっていたら、もっと頻繁に神戸に行ったか?と考えてみても、きっと行かなかったのだろうな。地理的な距離というより、関西って文化的な分断がそこここにあるように思う。


ずいぶん久しぶりに神戸を歩いてみて、街がコンパクトで少し歩くだけで商店街から海に出たり、はたまた山もあり、奈良や京都の盆地では味わえない開放感があって、普段とは違う町に来たな、と思う。映画「ハッピーアワー」では、神戸の街も登場人物のように主要な役割を担っていて、あの映画を通して、近いようで遠い神戸への憧れをしばらく募らせていた。


海辺を少し歩き、写真を撮って立ち去ろうとすると、スーツケースを転がす純さんを乗せたような、フェリーの汽笛が背中から追いかけてきた。


http://hh.fictive.jp/ja/

2016-09-20

台風一過



なら国際映画祭、引き続き参加中。


映画祭が好きで、地元開催という愛着もある、ということを差し引いても、なかなかユニークな映画祭だと思うのだけど、いまいち魅力がうまく伝わっていない気がするのは何故だ。会場から会場へ移動するついでに世界遺産観光もできちゃうなんて、他にない魅力だと思うのだけど。


など、毎日、!!!と思いながら参加しているので、観た映画の感想を落ち着いて書くテンションではないのだけど、台風一過、春日大社での奉納上映に参加して、映画を観た後、真っ暗な境内を白装束の方に引導していただいて、本殿まで歩いている時の写真だけ貼って、おやすみなさい!明日は映画祭はひと休み、ちょっと遠出の予定。

2016-09-19

なら国際映画祭/オープニング



なら国際映画祭、オープニング続き。河瀬直美監督の挨拶。


同郷なのに!と意外がられるのだけど、河瀬監督の映画、ほとんどちゃんと観たことなく、長らく縁がない。挨拶を聞きながら、ほとんど初めて監督をちゃんと視界に捉えたな…と、ヴィクトル・エリセのエピソードなど盛り込んだ内容ながら、途中から空がどんどん暗くなることに見惚れてしまって、挨拶が頭に入っていない。縁がないってこういうことなのかしら。


その後の知事の挨拶は、阿倍仲麻呂の和歌を盛り込んだいかにも奈良らしい内容だったのだけど、その頃まさに空がドラマティックすぎて、知事の話は耳に残らず。空よ!奈良はスピリチュアルな場所で…と連呼されていたように思うのだけど、スピリチュアルって単語は公の場所で公人が使うと違和感しか残らないのは何故かしら。日本語で他にもっと相応しい言葉があるのではないか。と、空を眺めながら考えていた。




上映作品紹介の頃には、空もこんな色に!野外上映に強い憧れがあって、なら国際映画祭に来てみたいと思った理由も、オープニングが野外ということもあった。私の席からは見えなかったけど、春日野園地は東大寺に隣接しているので、席によっては大仏殿の屋根も見えるはず。




みなさんで鏡割りの図。ゲストが豪華。斎藤工さん目当てのマダムの熱気よ。メジャーな俳優の影響力って凄い…。藤竜也さんの登場時も黄色い声があがって、長い間活躍してる俳優は違うね!という貫禄。私が嬉しかったのは三上博史さん。今回はコンペの審査委員長を務めるらしく、即興でコメントを考えたというシンプルな挨拶が謙虚な映画愛に溢れていた。しばらく前に三上博史さんが「アナザースカイ」でローマを訪れる回を観て、チネチッタ(撮影所)を訪れたり、閉館する映画館に住み着いて抵抗する人と語り合ったり、憧れの俳優テレンス・スタンプに会いに行ったり…と、訪れる先の珍しさや、映画の中の人である三上博史さんの情熱が伝わる、映画好きとして見ごたえのある回で、あれを観て以来、素敵な俳優さんなのだな!と思っている。



オープニングの様子はこちらに
http://eiga.com/news/20160917/18/


照明が消え、いよいよ映画の上映が始まった。

2016-09-18

猿沢池畔



オープニングの続きを書きたいのだけど、長くなりそうなので後日にまわすとして、なら国際映画祭2日目。


冷静にプログラムを眺めると、想像以上に規模の大きな映画祭で、コンペも気になるのだけど、同時進行している別のプログラムも気になる…しばし考え、今日は学生映画とカンヌ短編特集に絞る。


映画祭でハシゴして観る時の常として、映画と映画の間に手持ち無沙汰な時間が生まれがち、ということがあって、喫茶店を探して入るほどの時間でもないけど、ちょっと気分転換もしたい。と、ふらふら歩いていると、そこは猿沢池畔。同じ時期に音楽のイベントも奈良で開催されているようで、小さなライブ会場の前にあるデイリーヤマザキの店先でドリップコーヒーが売られていたので買う。コーヒーを手に池の周りをちょっと歩き、ベンチが見えたので座る。


ぼんやり、ずずずず…とコーヒーを啜りながら、景色を目に馴染ませていると、ちょっと動くと興福寺の五重塔が見えて、柳の木と映画祭ののぼりが同時に視界に入り、もう…奈良!としか言えない景色が眼前にあって、ちょっとした隙間時間にこんな場所にいられるなんて、100円で最高の喫茶店にいるみたい、と思う。


奈良市は映画館が閉館し、県庁所在地なのに映画館が1館もない、全国的にも珍しい状況に陥っているのだという。小さい頃に両親と行った映画館ももはや存在しない。県庁所在地に映画館のない唯一の県という説と、いやいや山口市もないよという説もある。どちらにしろ残念な現状で、なら国際映画祭は映画祭期間以外にも定期的にシネマテークとして様々な場所で映画をかける試みを続けているようなのだけど、映画祭が始まってみて考えることに、映画を普段、見慣れていない人々だから、わかりやすい話題の映画を、ということではなく、何本か観てみるとずいぶん攻めのラインナップ、東京国際映画祭やフィルメックスに映画環境的に恵まれた東京の映画好きが滅多にかからない珍しい映画を観に行くような、そんなラインナップと並べても遜色ない、いかにも観客を選びそうな癖のあるラインナップであることに、私は静かに感動している。動員にどう影響するのかはわからないけど、今日観た学生映画も、カンヌ短編特集も、老若男女の観客でほぼ満席だったことも素晴らしい。


http://nara-iff.jp/2016/

2016-09-17

なら国際映画祭



ワープ!奈良に到着。近鉄奈良駅から東へ東へ歩くにつれ、鹿の数が増えていく現象。


東京にいると次々と映画はやってくるしイベントも多く、気がつけば何ヶ月も東京…はおろか山手線内側から出ていないということもしばしば。はっ!遠くに観に行けば旅行と映画を両立できるのでは!と、去年は北京、京都、長野で映画を観て、とっても楽しかった。年に一度は飛行機乗って映画を観に行く(今年はこれは無理そう…)、年に一度は行ったことのない映画祭に行ってみるなんてことができたらいいなぁ…と考え、今年は地元・なら国際映画祭に初めて行ってみることに。奈良出身・在住の河瀬直美監督を中心に始まり、隔年開催で今年で第4回とのこと。



http://nara-iff.jp/2016/


オープニングの会場…パンフレットでチェックすると、イラストマップの緑緑したところ、市街地ではなく山の中腹。駅から徒歩20分!春日大社と東大寺の中間あたりにある春日野園地という場所。イベントでよく使われるけど、何もない日はほーんとに何もない原っぱで、見渡す限り人間より鹿が多かったり、人が少なくて安全だからなのかバンビちゃんもいたりして、これぞ奈良!という時の止まったようなとても美しい場所なのです。




受付を済ませ、パンフレットなどを受け取ると、いざ会場へ。




台風近づく中、どの天気予報を見ても雨雨雨で心配していたのだけど、晴れ間が見えた!考えてみれば、これまで映画を観た場所の中で、最も広く、最も歴史が深い場所だったかもしれない。続く!

2016-09-16

packing

 
 
夏が過ぎた頃に夏休みを消化するのが好きで、明日から6連休!台風と待ち合わせっぽいのが気になるけど、西へ移動。
 
 
移動のお供に今週観て素敵だった「言の葉の庭」の小説版を調達。キラキラした表紙は、今年使い始めたばかりなのにもはや味わい深いPostalcoのブックカバーで完全包囲。単なる映画のノベライズではなく、2人の続きも描かれてるらしくて、楽しみ!

 

2016-09-15

お月見箱



中秋の名月。


夏に行った松江は城下町らしく和菓子屋があちこちにあり、風流堂という店で買ったお干菓子、お月見に食べるべくテーブルに置いていたのだけど、さっき帰宅して箱を開け、きゃああ!というテンションには至ったものの、夜遅いしまだまだやることあるし賞味期限だいぶ先だし、と理性が勝って箱を閉じ、大人ってつまんないな!と思ってるところです。


http://www.furyudo.jp/




しかし!一足お先に、黒沢清監督の「ダゲレオタイプの女」、監督と主演のタハール・ラヒムの舞台挨拶つきで観てきた、佳き月夜であった。月を見るの忘れてたけど帰り道、月の下を渋谷から表参道まで歩いた。


良かったなぁぁ…(余韻)
http://www.bitters.co.jp/dagereo/

2016-09-14

Lost in translation



twitterのタグをまとめた、こちらとっても興味深い。
#女性映画が日本に来るとこうなる


http://togetter.com/li/1024317


取り上げられている「Easy A」が日本に来ると「小悪魔はなぜモテる?」になっちゃった件、エマ・ストーンって「ヘルプ」といい、良い映画にばかり出てるのに邦題で損してるの多いような…。「Easy A」の原題は「緋文字(The Scarlet Letter)」由来だったような記憶。とってもいい青春映画なので邦題にメゲずに観て!っていろんな人に言った記憶が。


まとめでは、日本女性はこういうタイトルじゃないと観ないんだろ?ゆるふわ!って失礼しちゃうわ的な視点でいろいろ書かれてるけど、ネーミングが苦手な私は、じゃあどんなタイトルだったら満足するのさ?という代案が思いつかないので、逆に、酷い邦題つけられたね!って理由で埋もれてしまった隠れた傑作を発掘することに秘かな悦びを感じているのだよ。




キャストも豪華だし、傑作なのに「ラブ・アゲイン」なんてタイトルつけられたせいで、ひっそり公開されてあっという間に終わり、名画座で発掘したこちらも、




原題は素敵なのよね。でも「ラブ・アゲイン」、別に間違ってない。ラブ・アゲインな物語だったもの。原題の素敵さを日本語にうまく置き換えられないだけで。エマ・ストーンはこれにも出てる…!


ヌーヴェルヴァーグの頃は粋なタイトル多かったね、という話もあるが、例えば、




あまりにも有名なトリュフォーのこちら。「突然炎のごとく」って情緒不安定で衝動的なジャンヌ・モローを強調した邦題のように思えるけど、この邦題のせいなのか、まるでジャンヌ・モローが男2人を振り回すファムファタールの代表のように扱われていることが、私はとっても気に入らない。あの女の一体どこがファムファタールなの?




原題はシンプルに「JULES ET JIM」。ジュールとジム。そう、男2人の物語。男2人がイチャイチャする映画だよなぁ、ジャンヌ・モロー、男2人の間でキャッチボールされてるだけだよって、観るたびに思う。ほら、本国のポスター?ジャンヌ・モロー、間抜けな表情してるじゃないの…。



と、あれこれ書いたけれども、最近一番ギョッとしたのは、




イーサン・ホークがチェット・ベイカーを演じるこちら。去年映画祭で一足お先に観て、言わずもがなのタイトルと映像のお似合い具合に痺れていたのだけど、




邦題がまさかの直訳!いや、確かにそうなんやけども…ゴニョゴニョ…。これだったら「ボーン・トゥー・ビー・ブルー」ってカタカナにしただけか!って方がむしろ好ましかったのでは。


言語はどうしてもその国固有のあれこれを含んでいるので、文句を言い出したらキリがなく、日本映画だって、えー!そんな英題になるの!キー!って紹介され方してるのいっぱいあると思うから、目くじらたててもしょうがない。は!このトピック、ネタとして楽しいね!と、酷い邦題を与えられちまった映画から傑作を発掘する、砂金採りのような作業をコツコツ続けるまで。まとめを眺めていると、邦題で躊躇した「Wild」や「Begin again」など、やっぱ素敵そうだな、観てみようと思うもの、いくつもリストアップした。

2016-09-13

言の葉の庭

This summary is not available. Please click here to view the post.

2016-09-12

2016/9/12




昨日書いた、「7年目の浮気」のマリリンのパジャマ姿。探してみたら画像を発見。しばらくデスクトップはこの写真にしておこう。


体のラインが露わで、シースルーにレース、足元はもちろん踵の高さの違うハイヒール。マリリンといえばすぐ想起されるようなグラマラスな衣装より、素朴な普段着の方が美しく見える。




家で一心不乱に読書中?のこの写真など。読書中の写真が多い人。




プライベートなスナップなのか、撮影なのか不明だけど、電話をかけるモノトーン・マリリンも素敵。


ずっと屋内にいて18時頃、外に出ると薄暗かった。今週の予報はずっと雨。もう後戻りも出来ず、秋がやってきた。オフィシャルに。

2016-09-11

The seven year itch



マリリン・モンロー、ようこそ我が部屋へ!明るいマリリンを観たくなったので久しぶりに「七年目の浮気」を再見。


NYに住む編集者が、妻子がヴァカンスに出かけ、自由の身を謳歌する。上階にマリリンが短期滞在しており、心の羽根を伸ばす男は、マリリンとの情事を妄想し…。結婚生活も七年目に入るとムズムズするよね、という物語。




久々の独身気分を味わってる中、こんな若き娘が登場したら矢も楯もたまらず…私も妄想が過ぎるほうなので、わかる、わかるよ…と男の肩にポンと手を置きたくなるもの。




マリリンにばかり心奪われがちだけど、相手役のトム・イーウェルに今日初めて意識が向き、男性目線で語られる物語で、登場時間の長さからもトム・イーウェルこそ主役。いかにも!なハンサム俳優なら、普通の男の巨大な妄想という物語にうまくはまらなかったはずで、トム・イーウェルのキャスティング、ぴったり。


DVDで観たので映像特典をチェックしてみると、制作にまつわる30分ほどのドキュメンタリーが収録され、この映画がいかに当時のハリウッドの検閲と闘ったかという興味深い内容だった。55年公開、制作は54年。「ティファニーで朝食を」よりまだ5年前の話。もともとはブロードウェイの舞台版「七年目の浮気」が先にあり、そちらはもっとあからさまに不倫を描く物語だったのが、映画化にあたっては当時の映画検閲基準ヘイズ・コードに抵触するという理由で脚本は大幅にカットを余儀なくされ、最終的には不倫は描かれず、あくまで不倫願望のある男の妄想に留まったという経緯があるらしい。ヘイズ・コードに加えカトリック教会も目を光らせており、教会が気に入らなければカトリック教徒を観客として取り込めないこともあって、ダブルのしめつけにビリー・ワイルダーも製作陣も憤慨しながらも従わざるを得なかった、ということらしい。


そのため本来撮るはずだった物語ではなくなったけど、マリリンの魅力がそんな経緯を凌駕するもので、興行は成功し、マリリンは大女優の仲間入り。ただし有名な地下鉄の風でスカートがめくれるシーンの撮影を目にした当時の夫ジョー・ディマジオが大激怒し、撮影中に離婚に至ったというスキャンダラスな話題も映画の興行を後押ししたという皮肉さ。スクリーンテストの写真を幾つか目にしたけど、映画の朗らかさからは想像もつかない情緒不安定な表情を浮かべるマリリンがいて、いたたまれない気持ちになった。


ドキュメンタリーにはビリー・ワイルダーのインタビューも短いながら収録され、動くビリー・ワイルダー、初めて見たかもしれない。マリリンの演技について「それはもう…さんざん苦労させられた。なだめすかして、セリフを引き出して…だが編集してみると、まったく自然だ。彼女の魅力だけがスクリーンに残った」と答えている。


キャメロン・クロウがビリー・ワイルダーにインタビューした分厚い本を所有しているのだけど、その中でも何度か、マリリンの演出に手こずったエピソードは登場する。鬱状態のため集中力が極端になく、セリフを忘れ、ただし何十回とテイクを繰り返すうちに奇跡のように、他の誰にも演じられないような素晴らしい演技が生まれるのだ、と。出来上がった映画は、いわば奇跡の連続で、だからマリリンから目が離せなくなるのだろう。





撮影中、エリオット・アーウィットが撮ったというこのマリリンの可愛さよ!有名な衣装ももちろんながら、一瞬だけ映る、膝上丈のワンピース型のコットンのパジャマ姿、マリリンのイノセンスの結晶みたい。

2016-09-10

LINE LIVE



夕方から身体を休めるために寝転んでいて、LINE LIVEで「君の名は。」の新海誠監督の特集番組があったので視聴。


絵コンテの段階で音楽も声もある程度、かたち作る制作スタイルとのことで、俳優が声を入れる前の、監督と奥様が声を入れたバージョンのものが流れた。新海誠監督、いい声。しかもムーミンの岸田今日子のように声色を変えて様々な役柄に対応可能。器用な人…。




特集番組が終わった後、過去作の「秒速5センチメートル」が引き続きLINE LIVEで放映され、調べてみると1時間ほどの中篇とのことで、そのまま視聴。


かつて一緒にいた転校生の男女がまた転校で離れることになり、第1部はふたりの手紙のやりとりから始まる。この映画がいつの映画なのか知らずに観ていたので、手紙やガラケー、登場する小道具が今じゃもう使われなさそうなものばかりで懐かしみを感じていたら、2007年の映画だった。確かにその頃はそんな生活だったかな。「君の名は。」の2016年の高校生たちはスマホを使い倒していた。私は手紙を書くことが好きなので、手紙が出てくる映画も好きで、最後まで観終わっても、第1部が好きだった。


山崎まさよしの曲が終始流れ、終盤は映画と音楽の関係が反転して、音楽のために映画がある状態になっており、そんな映画があまり好きではないこともあって(せっかく映画なのにもったいない、と思ってしまう)ちょっと残念だな、と思い、「君の名は。」の音楽の使い方でも同様に思ったのだけど、きっと監督の個性なのだろう。実写のような精緻な背景、気象現象、宇宙、すれ違う男女…まだ2本しか観ていないながら共通項が多く、小津といえば最後に娘が嫁ぐ…とか、ルビッチといえば三角関係…のような、自分の主題が強くある人なのかな、と思った。


しかし今週は「君の名は。」と「秒速5センチメートル」で私の脆弱なセンチメンタル、エモーショナル受容キャパシティを遥かに超えてしまったので、新海作品をさらに溯って観るとしたら、しばらくブランクを要する。今は口直しにヤクザ映画を欲している。

2016-09-09

Carol



重陽の節句生まれだから陽子さん、という友達がいる。生まれた日や季節に因んだ名前、美しいな。



間に合う時間までに仕事が終われば行くことに決めていた、ギンレイホールでの「キャロル」、奇跡的に終わったので飯田橋に向かうと、金曜夜とはいえ、平日夜に意外なほどの行列だった。


公開時に一度観て、その後原作も読み、すっかり堪能した「キャロル」だけれど、映画の2度目もまた素晴らしかった。物語はしっかり把握しているので、衣装や音楽、ふたりの表情、細部を眺め、どれもどれも見事。


テレーズは自分の道を見つける途上にある若い女性で、質素な部屋、質素な身なり、身の丈にあった暮らしは、着飾るより却って彼女を際立たせていた。彼女なりに着飾った時より、部屋で作業をしている時の、黒のトップスにデニム、チェックのシャツにデニム、ソックスにスニーカーという装いに目を奪われた。デニムが作業着だった時代の、ストレッチなど無縁なぶかっとしたシルエットに華奢な身体が泳ぐ。





一方、総てを手に入れながらも、そんな自分がしっくりこないキャロルは、彼女の身分に似合った隙のない装いながら、ホテルの電話ボックスで焦って電話をかける時、大きなイヤリングを外したのか、受話器を下ろし、イヤリングをつけ直す仕草に不意に気づいて、何故か印象に残った。あの大きさのイヤリングでは受話器にうまく耳をつけられない。ということに加えて、隙のない彼女が一瞬見せた隙だったからかもしれない。


初見では、ラストシーンが唐突で説明不足のように思えたけれど、視線で始まった物語が、再び視線で終わったことを理解し、満足。丁寧につくられたお酒をほんのひと口飲んだ後のような余韻。


http://carol-movie.com/

2016-09-08

Un Chien Andalou




数ヶ月前から右目の上瞼裏にしこりができ、傷みはなく、なくなるだろうと思っていたのに、なくならないから昼休み、眼科に行った。霰粒腫というものらしく、放置し続けると徐々に小さくなるので放置するか、切るかどちらかの選択らしい。見た目にちょっと影響してるので切るしかないかな…と思いつつ、目…切る…となると、「アンダルシアの犬」しか連想できず怯える。リュミエール兄弟「列車の到着」や、エイゼンシュテイン「戦艦ポチョムキン」と並び、映画の世界にずぶずぶ足を踏み入れた頃、誰もが一度は観るであろうブニュエルのアレである。


激しく妄想する私を余所に、先生は「予約は要らない」「手術は5分で終わる」「でもしばらく眼帯だね」と続け、気軽なのかそうじゃないのかさっぱりわからない緩急のついた回答に心が定まらず、しばらく先に持ち越した。



この間観た「ロブスター」の目の手術のシーンも、暗い妄想に拍車をかけてしまっているから、映画の見過ぎも考えもの。





気にかけているのは、手術怖い以上に、片目じゃしばらく不自由そうだから、映画観る予定が少なそうな週に手術しよう、ということ。映画の秋、次から次へと映画は押し寄せてくる…。

2016-09-07

Today’s theater



本日の映画/映画館。この夏の映画・ツートップ、本日は右側を、六本木ヒルズで。



物語に翻弄され、主人公たちと一緒にずいぶん遠くまで旅させられるのだけど、ふと、とってもシンプルなことを描く物語なのだな。と気づく頃には、移動距離の分だけ胸に迫る。「君の名は。」は今のところそんな感触。「インターステラー」を好きな理由と少し似てる。



私が暮らす街も働く街もよく映画を観に行く街も「シン・ゴジラ」にはほとんど登場しなかったけど、新宿、四谷、表参道、六本木…「君の名は。」の東京は、私の生活圏内が描かれていて、東京って改めて美しい街だな、と見惚れた。



前情報なしで観ていたので、青年の声が神木くんということしか知らず、エンドロールであの人の声は長澤まさみだったのか…と知り、スクリーンに向かって巻き戻しボタンを押しかけた。俺のまさみ…


東京の映画館の中でも、とりわけ好きなヒルズの7番スクリーンで観られて幸せ。スクリーンが大きく、音響が良く、座席の傾斜が絶妙でどこに座ってもラクに観られるの。ロングランするのだろうけど、大きな画面で観られる今のうちにどうぞ。今日のところは、そんな感じで。


http://www.kiminona.com/index.html

2016-09-06

“When it's hot like this, you know what I do? ”



残暑厳しき折、帰宅してポストを開けたら、モンローのポストカードが!


これは陽のマリリン。「お熱いのがお好き」や「紳士は金髪がお好き」方面の。最近、マリリン映画といえば「ノックは無用」や「ナイアガラ」など、陰のマリリンばかり観ていたのでなおさら、明るいマリリン、やっぱり可愛いなー。


「7年目の浮気」のセリフ…

When it’s hot like this,you know what I do??
I keep my undies in the Ice Box!

こうも暑いと、どうするかわかる…?
下着を冷蔵庫に入れるのよ!



って今にも言いそうなマリリン。お送りいただきありがとうございました。


2016-09-05

autumn 2016



残暑厳しいながら、もう心は夏服にあらず、新しい洋服が欲しくなる。ちょっといいな、と思ってるジャガードのワンピース、あの靴を履いて、パールをあわせ、メイクは濃いめ。など考えていると、それはポーラ・ネグリではないのか、と思い至る。



ポーラ・ネグリ、サイレント時代の女優。彼女を知ったのはルビッチ「山猫リュシカ(1921)」で、人間と山猫の合いの子のようなワイルドな格好だったから、あれこれ他の映画の画像を眺めて、20年代の女っぷりにうっとり。





wikipediaをチェックすると、


特に1926年、ルドルフ・ヴァレンティノが亡くなった後の彼女の振る舞いはメディアの注目となった。彼女はヴァレンティノと結婚する約束をしていたと明かし、彼の棺が列車でニューヨークからロサンゼルスまで運ばれるのについてゆき、列車が止まる度に写真家のためにポーズを取った。葬式では何度も失神、彼女の名前が綴られた大きなフラワー・アレンジメントをヴァレンティノの墓の上に置くように用意した。しかし多くのヴァレンティノの友人は、二人は結婚する予定などなかったと主張し、彼女の振る舞いは単なる売名行為だと非難した。


と、なかなか香ばしくて面白い。そして「サンセット大通り」の主役をビリー・ワイルダーからオファーされて断ったエピソードも知る。こういった、誰々にオファーしたが断られ…という制作エピソードを知ると、そのバージョンも観てみたかったな、と叶わぬことを思う。ポーラ・ネグリ版のサンセット大通りも観てみたかった。




画像で見るだけで、映画は「山猫リュシカ」しか観ていないので、ワイルドな格好をしていないポーラ・ネグリ映画にスクリーンで出会うチャンスがいつかありますように。