CINEMA STUDIO28

2016-10-18

日曜日、新文芸坐にて



映画祭はゴタゴタしているけど、映画の秋は確実に深まっており、あちこちで特集上映や豪華なゲストを招く企画があって目移り。日曜は、新文芸坐でこちらの特集を。牧瀬里穂主演の「ターン」と中村勘三郎・柄本明がやじきたを演じる「やじきた道中 てれすこ」の2本立て。「ターン」に中村勘太郎が出ていて、親子つながりの番組。


2本楽しく観ながらも、映画は正直どうでも良かったのだけど(すみません…)、この特集、ゲストが異例の豪華さで、日曜のトークゲストは監督、進行役に脚本家、そして小泉今日子さん…!キョンキョンが新文芸坐に?あの斜め向かいにド派手なヌード劇場のある新文芸坐?と、実物が登場するまで半信半疑。インパクトとしては去年の目黒シネマに宮沢りえさん、に匹敵するものがあった。そして本当に登場…わぁわぁ!


亡くなられた中村勘三郎さんの活き活きした弥次さんが映されており、映画が残されていくことの素晴らしさについてしんみりと語り、登場前に映写室からスクリーンをちらっと観て、弥次さんが亡くなった妻子と夢の中で再会する場面で感極まって泣いてしまった、と小泉さんは話していた。「やじきた道中 てれすこ」は川島雄三作品の録音も担当していた伝説の録音技師や、照明技師も日本映画界のレジェンドが集結しているそうで「とってもダンディでお洒落だった」と思い出話。「てれすこ」で幼くして親に女郎屋に売られ男を騙して脱出を試みる花魁の役を演じた小泉さんは、共演者の豪華さに緊張したけれど「ポップでいこう」と引き受けたとのこと。確かに、時代劇なのだけど、ハリウッド・クラシックのスクリューボールコメディのヒロインのような軽さがあって粋な女だった。押し掛けてきた男たちを前に啖呵を切る場面は富士山の麓で撮ったらしく、撮影中は、富士山をバックに啖呵を切る小泉今日子…!と現場は盛り上がったとか。これ撮ってる間、きっとすごく楽しかったんだろうなぁ…!という空気がそのまま真空パックされた映画だった。




私は文章を書く人としての小泉今日子さんのファンで、本も大切にしてる。かつての原宿を綴った「黄色いマンション 黒い猫」は、欲しいな…でも読んでない本たくさんあるし…と考えていたところ、打ち合わせに向かうため原宿の裏通りを歩いていたら、マンションの前に紐でくくられ捨てられていた本の一番上に、新品同然のこの本があって、!!!!!こんな、いかにもキョンキョンが昔住んでた黄色いマンションがありそうな場所で出会うなんて運命だ、遠慮なくいただきなさいってことだな!と、紐の隙間から本を抜き、紐を結び直してその場を去った。以来、うちの本棚にある。


艶のあるメイクに後ろでひとつにまとめた髪、ラインの綺麗な膝丈のベージュのワンピース、アクセサリーは繊細で、足元は黒エナメルにメタリックなヒールの15cmはあろうかというハイヒール。ふぁぁぁぁ!と、老若男女みんなが恋しちゃうような魅力がありつつも(新文芸坐の満席の観客はみんな目がハートマークだったはず)、飲み屋で隣あわせたら気さくに話を弾ませてくれそうな雰囲気もあり、装いはもちろん、声や話し方がとっても素敵だった。好きな人と手を繋いだ後は電車の吊り革触りたくないッ!気分のように、キョンキョンの声を耳いっぱいに貯めた私は、なるべく他の音をシャットアウトして、帰宅してしばらく著作をパラパラ読んだ。あの声で脳内再生しながら。