CINEMA STUDIO28

2015-06-08

That uncertain feeling

 
 
ルビッチ祭の記憶が、幸せだった・・・(遠い目)という感じで消えゆきつつあるので、思い出せる範囲で記録しておく。次にいつまた観られるのかわからないものばかりだし、忘れていくのはなんとももったいない。
 
 
特集上映の初日、ルビッチ活動第1本目は「淑女大特急」で幕開け。1941年、アメリカで撮ったモノクロ、トーキー。原因不明のしゃっくりに悩まされ精神科医を訪ねた奥様、夫婦関係に原因ありでは?と診断される。保険会社の重役である夫との暮らしは何不自由ないけど、しゃっくりの原因は夫…と信じて疑わない妻は、病院で知り合った神経質そうなピアニストに惹かれ…。というお得意の三角関係。
 
 
妻はマール・オベロンというちょっとエキゾチックな女優。夫はルビッチ常連のメルヴィン・ダグラス。ピアニストはバージェス・メレディスという俳優…なのかな。
 
妻とピアニスト
 
自宅のベッドにいる妻
 
 
 
ルビッチ映画の楽しみの大半を占める衣装の快楽は存分に発揮されており、マール・オベロンがくるくる着替える40年代モードが見もの。胸元がぱっくり開いた大胆なカッティングの衣装も多く、和装の裃のようなシルエットのトップスに、黒っぽいオーガンジーがかかった一着、不思議なデザインで目を惹いた。
 
 
物語としては他愛もなく、ルビッチ活動導入の肩慣らし的鑑賞として最適な1本。ちょっと小さく綺麗にまとまりすぎていて、ルビッチの映画群の中では見落とされてしまいそう。マール・オベロン、メルヴィン・ダグラスの夫婦は良いのだけど、ピアニスト役の俳優に華が足りず、三角関係の結末が容易に見えてしまうのが原因か。女1、男2の三角関係の場合、男2人はタイプは違うけど、どちらも選べないほど魅力的…という配役じゃないと、そりゃメルヴィン・ダグラス一択でしょ?って観てる誰もが思ってしまうのでは。その点、「天使」にしろ「生活の設計」にしろ、考えてみれば見事な配役なのだなぁ。
 
 
ルビッチ自身の「当初女大学」のリメイクらしく、そちらを観ていないので観たいし、影響が明らかに見てとれるという小津の「淑女は何を忘れたか」も遠い記憶の彼方にぼんやりとあるので観直してみたい。
 
 
 
 
マール・オベロンという女優、初めて観たのだけど、エキゾチック…と思えば、イギリスとインドのハーフなのだとか。その事実をひた隠しにした、というエピソードも興味深い。