CINEMA STUDIO28

2016-11-05

TIFF2016 / シェッド・スキン・パパ




忘れないうちに、東京国際映画祭で観た映画について。1本目はコンペから、中国・香港合作(という言葉の違和感)「シェッド・スキン・パパ」。原作は日本の佃典彦「ぬけがら」だそうで、Q&Aにも登壇しておられた。ロイ・シートウは演劇の世界の人だそうで、映画はこれが第1作とのこと。私の目当てはジョニー・トー監督作品常連のルイス・クー(現在、香港で最も稼ぐ俳優なのだそうだ)とフランシス・ンが共演し、来日すること!


あらすじはこちらに
http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=25



父親がどんどん脱皮し、蝉の抜け殻の人間バージョンみたいなのが周りにどんどんたまっていくという奇想天外なアイディアは原作がそもそも面白いのだろうな。脱皮するたびに若返る父親に対し、息子は現在進行形で生きていて、脱皮前は痴呆気味でもはや会話もままならなかった父親の、若い頃の姿が目の前にどんどん現れ、友達のように一緒に行動するうちに、父親の半生、家族の歴史、そして香港の現在から過去が、時系列を遡り物語られていく。ルイス・クーは終始、受けの演技で、これはフランシス・ンの映画なのだと思った。若返っていく父親は、その年齢の頃に流行った服装や髪型をしており、香港の人々が観たら懐かしくてしょうがない映画なのだろうな。


「大陸から夢を求めて香港に到着した人々が奮闘し根を張るまで」という物語は香港映画のひとつのジャンルで、ピーター・チャン「ラヴソング」がその筆頭として、ジョニー・トー「スリ」も少しその要素があって、「シェッド・スキン・パパ」は、日本の原作に、そのようなとても香港らしい味が加えられた映画だと思った。



映画祭のコンペで観るというより、俳優のファンの人々が、今は亡きシネマート六本木の片隅で観るのが似合いそうだったな。などという私のボンヤリした感想は、上映後登壇したルイス・クーの謎めいたデザインのスーツの印象によって上書き保存された。よく動く子役の少年が一緒に登壇していたけど、フランシス・ンの実の息子だとか。フランシス・ンが役作りということなのか、撮影前にルイス・クーの父親と食事したと言っていたのも、素敵なエピソード。


映画祭の公式チャンネルがあるのね。記者会見の様子はこちら。ルイス・クー、あのスーツ着てる!部屋に「野良犬」「自転車泥棒」「ゴッドファーザー」のポスターが貼ってあった理由についても監督が語ってる。純粋に好みの映画で、黒澤明も大好き。「自転車泥棒」は特に「シェッド・スキン・パパ」と同じく親子の情の物語だから、とのこと。




俳優のことばかり書いたけど、ママ役の若い女優さん、満島ひかりっぽさもあって可愛い人だった。