CINEMA STUDIO28

2015-09-17

窓の向こうの景色

 
 
映画はとても要素の多い芸術・娯楽なので、ひとときにすべてを捉えることが難しい。私は視覚で観るほうなので、目に映るものばかり集中して観て、音がまるで聴こえていないことはよくある。書く人なら言葉を、音楽の人はやはり音に注意して観ていたりして、同じ映画を観た後に、私の注意の及ばなかった範囲のことを指摘されると、新鮮で興奮する。ああ、その人には世界はそのように見えているのだなぁ、と。
 
 
 
 
「小早川家の秋」上映後のトークで、美術監督の種田陽平さんの感想は当たり前なのだけど映画の美術の人の目線で、ああ、美術の目線で観ると小津はそう見えるのか、と新鮮だった。例えば小津映画で室内が撮られるとき、窓の向こうに空が映ることはないのだとか。確かに、窓…というより日本家屋なので障子の向こうは絵のように塗り込められていて、空が映ることはなかった。空が映るときはもっと気前よく映る。そう言われてみると、また最初から順番に小津のフィルモグラフィーを追って、窓の向こうの景色ばかり確認するように観たいと思えてくる。