CINEMA STUDIO28

2015-09-18

交響曲第四番

 
 
夏に会った遠くの友人が贈ってくれた私のイニシャルのチャームは、1920年代の書体。いろんな年代の映画を観ると、やはり年代ごとに特徴はあるもので(特に女性のファッションに)、私は1920年代と50年代が好き。苦手なのは70年代以降。
 
 
同じ映画を観たとしても、その人の職業や生まれ育ちによって視点は大きく違うから、自分の目が及ばなかった範囲の視点からの感想を聞くと興奮する、という話を、この友人にした時に、そういえばユートピアノっていう映画が…と、友人の口から出てきたので驚いた。パンフレットやチラシを整理して挟んでるファイルからごそごそパンフレットを探して見せてみると、そうそう!なんで知ってるの…?とお互い驚いた。
 
 
佐々木昭一郎「四季・ユートピアノ」はNHKで放映されたテレビ用映画で、NHKアーカイブにはあるらしいものの、再放送を気長に待つか、アーカイブに行くか(という方法がよくわからないのだけども)しか観る方法がないことで半ば伝説のようになっている。私は何年か前にユーロスペースであった「佐々木昭一郎というジャンル」という特集に通った時に観て、パンフレットもこの時に買ったもの。友人はテレビで偶然観て、強く記憶に残っているらしい。
 
 
砂浜で音叉を拾った少女が、家族との別れも経て、やがて調律師として自立していく。少女と音の関わりを心象の断片を繋ぐような映像で見せる、物語というより散文詩のような映画だった。
 
 
知ってるだけで驚いたのに、この映画が友人にとってとても大切な、心の拠り所にするような映画で、だから映画に流れるマーラーの交響曲第四番も、大切な一曲になった。ということを知った。友人はピアニスト。私の周りでもとりわけ古い、最古の部類に入る長い長い友人だけど、私はまだ一部しか知らないのだなぁ、と思った。そして観ている間、音がひっかかりはしたけれど、私の眼にはやっぱり映像の断片ばかり残っていたので、そうか、あれはマーラーだったのか。と、いう発見。