小津安二郎記念・蓼科高原映画祭。映画祭について調べているうちにこの本の存在を知った。
小津監督は「東京物語」を撮った後、脚本を書く場所を、茅ヶ崎館から蓼科に移し、そこは小津映画に脚本で参加している野田高梧さんの山荘で、2人で篭り、亡くなるまでの映画は蓼科で書かれた。山荘には「蓼科日記」という日記帳が置かれ、訪ねてきた人は何か書くべし。というルールがあったとのこと。この本は、その日記を書籍化したもの。全文ではなくピックアップされている。
2013年に2500部限定で発売されたこの本、完売して今は高値がついているのだけど、どこかに妥当な金額でないかしら…と、しぶといリサーチをし続けていたら、あっさりお膝元の松竹のオンラインにあった。狐につままれた気分で注文し、届くまでなんとなく疑いの念を募らせていたのだけど…実は在庫がなかった。と後から連絡が来るのではないか、と…あっさり届き、原節子さんのポストカード3枚と、松竹の発売してるDVDリストの冊子のおまけもついて…松竹、ありがとう!
昭和32年(1957年)の9月25日、蓼科、朝は兎に角陽が当たったものの、やがてまた曇る。朝はソーメン、昼過ぎに客人来る、うとうとして、ラヂオで相撲を聞く。夜はホワイトシチウにキシメンを入れて食ふ。よろし。
…などという1日だったらしい。ホワイトシチューにキシメンって。小津監督、すき焼きにカレー粉入れたり、なかなか食の冒険家であるのう。
それから58年後の9月25日、蓼科。曇り。茅野駅の東口から西口へ渡る歩道橋を渡らんとして、ふと見上げると、かっこいい月。十五夜の前日に、私は初めて蓼科に足を踏み入れた。