最初は怖気付いてたジャン=ルイ・トランティニャン
メゾンエルメスで。今月のプログラムは1962年、ディーノ・リージ監督のイタリア映画「追い越し野郎」。初めて観た。これ滅多に映画館にかからないのでは…。そしてここ1年ほどのメゾンエルメスの映画プログラムで、私はこれは一番面白くて、エルメス、ありがとう!と外に出たのだけど、いつも混んでるのにこういう映画に限ってガラガラに空いてるのは何故。
猛スピードでオープンカーを運転する男(ブルーノ/ヴィットリオ・ガスマン)偶然目が合った法学生(ロベルト/ジャン=ルイ・トランティニャン)の部屋で電話を借り、ついでにシャワーも借りた後、礼に酒でも奢るぜ、と車に乗せ珍道中が始まる。
静と動、陰と陽、女に対しても物陰から見てるだけ派とすれ違う女すべてに声をかける派、とにかく対照的な性格の2人の男がひとつ車に乗る。
海辺で露出度高い女たちに囲まれてもこんな表情…
しかしやがて時間の経過とともに2人はお互いを知り始める。ブルーノにしてもただのお調子者ではなく止まると死んでしまう種類の男の悲哀も感じさせ、動物的勘でロベルトの親戚一家の隠された人間関係もあっという間に暴く鋭さを見せ、ブルーノはロベルトをけしかけながらも弟のように扱い、ロベルトはブルーノに心を開き始める。
ほら、ロベルトもこんな表情に…ロベルトも笑うってことあるのだね
このような映画において、およそ男2人は2人で1人、1人の人間の2つの側面をデフォルメしてそれぞれに分担させているのだろうな、と思いながら観た。イタリアでは大ヒット、「イージー・ライダー」はこの映画の影響を受けているとか。あっさりした結末はヌーヴェルヴァーグの香りがし、一晩違う人間と一緒にいたぐらいで人はそんなに簡単に変われるものではない、ということかしら。ジャン=ルイ・トランティニャンがイタリア語を話すのも、こんな役を演じるの初めて観た。ま、他の映画でもさほど陽を感じさせる人ではなかったけれど。
7割は男2人が映ってる画面に花を添えるカトリーヌ・スパーク!ブルーノの娘役なのだけど、ブルーノの妻役の女優も、いかにもイタリア女優、という骨格を持つ美しい人だった。ディーノ・リージ監督の映画、もっと観たいのだけど、 イタリア映画をじっと観る機会の少ない私がただ見逃してるだけなのだろうか。