CINEMA STUDIO28

2015-09-19

マザー

 
 
昨日の続き。ユーロスペースでの「佐々木昭一郎というジャンル」という特集上映は、「四季・ユートピアノ」以外にも「マザー」「さすらい」「夢の島少女」と合計4本が上映された。確か1週間ほど、夜遅くからのみの上映で、チケットは映画館のカウンターではなく、チケットぴあで入手する方式だったと思うのだけど、連日満員だった。佐々木昭一郎監督の登壇もあったと記憶している。どうして観ようと思ったのかを忘れたけど、少し何か心にひっかかるものがあって、さっと観に行ったものが、誰かの記憶と手を繋ぐことがあるから、不思議だな。
 
 
4本のうち、「四季・ユートピアノ」に並び、「マザー」も印象に残った。1969年に撮られ1971年に放映されたテレビドラマ。56分。
 
 
「神戸を舞台に母親を知らない少年と国籍の違う様々な人々との即興の出会いから、孤独な少年の心の中の母親像を詩的に綴る。ドラマともドキュメンタリーとも区別がつかない演出は放送当時大きな話題となった。ロベルト・ロッセリーニも絶賛したとされる、佐々木の映像初演出作品にして傑作と名高い一作。」
 
 
少年が街を歩き世界と出会う。母親に手を引かれているはずの年齢の子供が、たった一人で。その姿を眺めていると、どこかしら死の匂いがたちこめてくることに戸惑った。4本の映像に映った誰よりも少年は、生まれてからの時間は短く、生の極みであるはずなのに。
 
 
「佐々木昭一郎というジャンル」とは見事な特集名で、それについて考える時、「マザー」に漂った死の匂いについて、今でも時々考えることがある。