CINEMA STUDIO28

2015-11-16

TIFF2015 / 地雷と少年兵

 
 
東京国際映画祭の記録。1日4本の日!の1本目はコンペから「地雷と少年兵」。朝イチの上映がこれって…と気が重かったのだけど、眠気なんて見事に吹き飛び…。デンマーク・ドイツ合作、監督はデンマーク人。
 
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終戦直後、デンマークの海岸沿いに埋められた無数の地雷の撤去作業に、敗残ドイツ軍の少年兵が動員される。憎きナチ兵ではあるが、戦闘を知らない無垢な少年たちを前に、指揮官の心情は揺れる。憎しみの中、人間に良心は存在するか? 残酷なサスペンスの中で展開する感動のドラマ」

 
戦争が終わる日、というのはあるけれど、終わったその日に全ての後始末が終わるわけではない。そしていろんな国の映画を観ていると、隣り合う国には必ず敵対感情が芽生えるのだな、と思う。日本は言わずもがな、「ライアンの娘」を観るとアイルランドの人々はイギリスが嫌い、という描写だったし、距離が近づくと愛も生まれれば憎しみも生まれるのだなぁ…「近い」って…。デンマークに縁もなかったのでその国の人々が隣の国にどんな気持ちを抱いてるか考えたこともなかったけど、監督によると、隣国とは奇妙な関係、特にこの映画の舞台になったような湾岸部では。若い世代は乗り越えているが、デンマーク人のパーティーにドイツ人が混じるとイヤな思いをしたりすることもある、とのこと。
 
 
少年兵たちはほぼアマチュアで、キャスティング担当の女性が学校や街で探してきてもらい、ストーリーに興味を持ってもらうために、少年全員に脚本全部を読んでもらったとのこと。フィクションだが実話をもとにしており、これまであまり語られてこなかった史実で、お墓や病院に断片的なメモは残っているが、まとまった資料はないのとこと。戦争を経験した世代の人々はサイレントジェネレーションと呼ばれている、多くを話さない世代であることも背景にあるらしい。
 
 
海岸に埋められた地雷を少年兵たちがひとつひとつ手作業で除去していく。海、浜辺、少年兵、軍曹。シンプルでささやかな映画だからこその緊張感に満ちており、少年兵が1人消えていくたびに(本当に跡形なく消える)、この映画が早く終わりますように、彼らが家に帰って母親の作った料理を食べたり、年齢にふさわしい可愛らしい恋をしますように。と祈らずにいられなかった。デンマークの鬼軍曹が厳格であらねばならない立場と少年兵への増していく愛着の間に苦悩の表情を浮かべることや、走っていくふわふわの犬、迷い込んだ少女、爆発の場面で思わず、あ!と声をあげたことなど、映画の断片が私から離れない。
 
 
 
 
Q&Aは左からプロデューサー、俳優(鬼軍曹)、監督。監督は、映画はどうしても自国にとって良いストーリーにフォーカスしがちだけど、ダークサイドも見せたいと思った。目には目をという行動は誰にとっても良い効果はない。誰もが、自分がこう扱って欲しいという方法で他人に接するべき、と話していた。そして鬼軍曹の素顔は明るそうなナイスキャラだったので役柄とのギャップに驚き。俳優って素晴らしい。この映画は映画祭直前に配給が決定したそうで、公開されたらまた観たい。この後もコンペをたくさん観た私は、グランプリはこの映画だと確信していたのだけど違った。主演俳優賞は鬼軍曹と少年兵の1人がダブル受賞。私の中ではコンペで一番素晴らしいと思ったので、グランプリ上映で、スクリーン7で観たかったな。