CINEMA STUDIO28

2015-11-23

TIFF2015 / スリー・オブ・アス

 
 
東京国際映画祭の記録。6本目はコンペからフランス映画「スリー・オブ・アス」。作品解説はこちら。
 
 
 
イラン南部に暮らす大家族で育つ主人公・イバットはやがて反政府運動に興味を持ちリーダー格として投獄される。出所して出会った女性と結婚、子供が生まれ、やがてイランを離れフランスに亡命する。監督・主演はケイロンというフランスで人気のスタンダップ・コメディアンで、これが監督第1作。主人公イバットはケイロンの父で、ケイロンが父を演じる。これは家族の物語で、政治的背景から国を越えた移民の物語でもある。
 
 
本国フランスでの公開が間近に迫っているとのことで、コンペにしては珍しく誰も来日しなかったかわりに、上映前にケイロンからのビデオメッセージが上映された。iPhone画面を見ながら日本語に翻訳された言葉を日本語で懸命に読むケイロン…始まる前から笑いを誘って、まずは掴みはOK!という期待で映画が始まる。
 
 
コメディアンとしてのケイロンの芸風は、ネガティブなこともシニカルな笑いに変換する、というものらしく、政治への風刺も含まれるらしいのだけど、両親の歴史はあまりに重く、笑いに変換するのは難しいから映画にした、ということらしい。国を越えるまでの過酷さ、特に越境の山の場面や、中間地の市場の片隅の公衆電話からイランに残る両親に無言の電話をかける場面の美しさ。パリに着いてから現地化していくまでの過程も丁寧に描かれており、笑いもあって音楽もテンポよく…なのだけど、何があっても家族3人笑っていれば乗り越えられるよね、というメッセージのウェルメイドにまとまりすぎのきらいがあり、東京国際のコンペより、フランス映画祭のオープニングが似合いそうな映画だと思った。後半は自分たち家族以外に、家族が関わることになる移住した一帯の様々な社会問題を網羅しようとしすぎて散漫になった印象。