12月、iPad miniの容量を確保する必要に迫られ、カメラロールにあった大量の写真をクラウドに移した。移しては消されていく過去に見た風景。デジタル一眼、コンパクトデジタルカメラ、古い2つ折り携帯のカメラ、iPhoneは3代目だったかな。いろんなカメラで撮った写真を見て思う。写真は、ちゃんとしたカメラで撮るに限る。いくらiPhoneが便利であろうとカメラの性能が向上しようと、画質は雲泥の差。並べてみると一目瞭然。
パリで撮った映画館の写真が少なくて残念。東京に戻ってからはデジタル一眼の持ち歩きも億劫になり、もうなくなってしまった映画館の外観を撮ったのはいいものの、携帯写真クオリティなのが惜しい。映画館に通うことがかなりの頻度で日常に組み込まれている生活を送っているくせに、好きなものの写真をちゃんと撮らない過去の自分がもどかしい。観光名所なんてもっといいカメラで一生懸命撮る人がごまんといるのだから、そちらに任せておけばいい。エッフェル塔は私が死んでもずっと建ってるだろうけど、浅草中映はもう存在しない。
反省し、カメラを毎日持ち歩くことにした。「レディ・イヴ」の上映を待つシネマヴェーラ渋谷のロビー。「映画史上の名作」特集で上映される古い映画のチラシやスチルが飾ってある。「ニノチカ」のパンフレットなのか、貼ってあった淀川長治さんの文章、面白かった。おしゃべりみたいにまとまりがなく、ひとしきり好き放題書いた後の最後の一文が製作は・・誰々・・。といった、それは文中に書くのでは?という説明文章だったのが可笑しい。最後に思い出したのかしら、これは仕事として書いてるんだって。そんな写真には写っていないことも、目の記憶力が強めの私は、写真を見れば思い出せる。
2年ほど前に買ったまま使わず放置していたRICOH GR(DIGIRALⅣ)を引っ張り出し、再セッティング。たまに持ち出す程度の使い方では名機と呼ばれる理由がよくわからなかったのだけど、毎日使ってみるとじわじわわかってきた。さっと取り出せて目の延長みたいに使えるのに、写りがいい。変な甘さがなくて寡黙な男みたいな写真になるのもいい。単焦点の制約があることで、撮り方の工夫をするようになるのもいい。ペンや財布のように、毎日使う道具として設計されているのだな、これは。けど、ほんの時々、ズームが欲しい時もあって、GRのような写りで、大きくも重くもなく、大げさじゃないズームがついてるものを物色している。つるっとした質感や、クラシック風の見た目じゃなくて、ずっしりカメラ!なデザインの。ズームを使いたいのはだいたい映画祭の時だから、フランス映画祭までに好みの一台が見つかるといいな。