CINEMA STUDIO28

2015-01-22

苏州河





アップリンクにしょっちゅう通ってるせいか、もうすぐ公開されるロウ・イエ「二重生活」の予告篇を何度も観るうちに、すっかり観たくなってきた。長らく見逃してきた監督なので、隙間の時間を見つけて過去作をDVDで観ている。


「ふたりの人魚」、色数の少ない上海、物憂げな手持ちカメラ、男のモノローグ。
消え入りそうにか細い女が「私が消えたら、死ぬまで探して。人魚になった私を。」なんて台詞が違和感なく馴染む世界で、
観ている間は気持ち良かった。
ジョウ・シュンの身体の線の細さ、所在なさが役柄に似合っている。
ファンタジーだなぁ。ロマンチックな男の人が作った恋愛映画だなぁ。と思いながら観終わった。


「サッドティー」に描かれるのも、「ふたりの人魚」に描かれるのも、恋愛という同じ名前の感情なのが面白い。最近、野太い女ばかり出てくる映画ばかり観ており、世の中の映画はこんなのばっかり?と思ってたけど、単に自分がそういうのを選んでいただけ。映画も女も振り幅は大きい。


ジャ・ジャンク―のドキュメンタリーを観た時、中国は依然として映画監督には厳しい環境なのだなぁと思ったけど、ロウ・イエも天安門事件を描いて5年も映画製作禁止をくらっていたらしい。それでもゲリラ撮影で、正当に作っていればまた検閲で引っかかるだろう映画を作ったって、しぶとくていいなぁ。


「二重生活」、こちらのイベント素晴らしい。明日、本郷で。



刈間文俊さん、お名前に見覚えが・・と思ったら、何年も前、東大・駒場キャンパスで開催された「映画と〈敵〉――中国語圏映画における日本軍の表象」 というシンポジウムに誘っていただいて聴きに行ったとき、後半、客席からの発言で混乱した会場を、「ここは政治的な討議の場ではなく、学術的研究成果の交換の場である」とおさめて、「映画においては、そこに何が映っているのか?を虚心に見つめたい」 とおっしゃったのに胸を打たれた。司会をされていた野崎歓さんも謙虚に場をまとめておられたのが印象に残っている。


近所ということもあって是非行きたいけど、時間が合わなくて残念。別の日に、ロウ・イエの話を聴きに行く予定。