東京に弱い雨が降る中を、シネマヴェーラに「雨に唄えば」を観に行く。前に観たのもシネマヴェーラだった。5~6年も経つと、断片的に覚えてはいるものの、筋書きはすっかり忘れていて初めての映画みたい。これは「アメリカの夜」のような、映画作りを撮る映画だったのね。トーキー移行初期の映画作りのドタバタを描いた物語だから、サイレントやトーキー初期の映画がたくさんかかる「映画史上の名作」特集でかかると、感慨ひとしお。
歌と踊りの素晴らしさは言わずもがな、「雨に唄えば」の筋書きを忘れるほどの年月の間、「ロシュフォールの恋人たち」を何度も観たので、ピカッ!というフラッシュ音が聴こえてきそうな笑顔を観ただけで、おお!ジーン・ケリー!と興奮。「ロシュフォールの恋人たち」でも、楽譜を拾ってあげて顔を上げたジーン・ケリーのピカッ!のショットがあったような・・。タップダンスもアステアの洗練と違って、ジーン・ケリーはアメリカの良心とでも呼びたくなるヘルシーな明るさがある。白い歯!.....どっちかというとアステアのほうが好きだけど.....ジーン・ケリーと一緒にいると、疲れたときピカッ!に負けてしまいそうだし(妄想).....
記憶からすっかり抜け落ちていた助演陣の見事なこと。ドナルド・オコナーの顔芸。「Make'em laugh」、身体能力に驚愕。
そして悪声の我が儘女優を演じるジーン・ヘイゲン。後半ますます憎まれ役になっていくけど、踊りや歌頼りではなく、「雨に唄えば」がしっかり物語として成立しているのは、ほとんどこの人のおかげでは・・?と思うほどの演技。映画の中でデビー・レイノルズが拭き替える声は、ジーン・ヘイゲンの声とのこと。美声で歌も上手く、あの悪声は全部演技なのね。アカデミー賞では「雨に唄えば」は作品賞、監督賞さらにはジーン・ケリーすら主演男優賞にもノミネートされなかった中、ジーン・ヘイゲンは獲れなかったものの助演女優賞にノミネートされてる。
総天然色と呼びたいカラフルな映画、暗い冬の夜に観るのもまたいいもの。映画そのものが圧倒的な生の肯定に満ち溢れていて、スクリーンが明るいビームを放ってるみたいで、観終わると細胞がざわざわ活性した。元気の出ないときに観るとよさそう。物欲の弱い私だけど、「雨に唄えば」、ブルーレイ買おうかな・・。