「映画館と観客の文化史」(加藤幹郎著/中公新書)は、この切り口からの文献を初めて読んだ私には、抱いてた微かな疑問の謎が解けたり、目から鱗のトリビア満載で、取り上げられてた映画館のうち、現存するものには是非行きたくなったし、古い映像資料も観られるものは観たくなった。いくつかメモ。
Davis Coneというアメリカの画家。この上に貼ったSTRANDの画像もそうなのだけど、写真ではなくてハイパーリアリスティックな絵なのだ。アメリカ中を旅して、30年代の中小規模のアール・デコ風映画館を描き続けている人とのこと。加藤幹郎氏の絵についての解釈は本に書かれているのだけど、それはそれとして私は、シネコンでもなく豪華絢爛なピクチュア・パレスでもなく、この規模の映画館を敢えて選んで描くのは、一番失われる可能性が高い映画館だからではないだろうか、と思った。よく通っていたけど、もう存在しないミニシアターや名画座の写真を、どうしてちゃんと撮っておかなかったのだろう、と私が悔やんでいるのと同じ理由で。
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LAのエジプシャン・シアターは何故、エジプト風なのだろう。と漠然と考えていたのだけど、建設当時の1922年は「ツタンカーメン王墓の劇的発掘以来、欧米を中心に古代エジプト様式を模したピクチュア・パレスの建設が流行」したことが理由らしい。え?そんな理由で?ってポカーンとした。じゃあもしかして、ロンドンのハロッズも同じ理由?と思ったのだけど、ハロッズはツタンカーメン王墓発掘以前に建てられており、エジプト様式の内装は90年代後半、エジプト人がオーナーになった際に手掛けたものとのこと。
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映画館以外にも、映画が立ち上がる場所について説明されており、例えば紹介されていたのは1940年代に流行したサウンディーズという音楽映画が流れるジュークボックス。レストラン、ナイトクラブやホテルのロビーに設置され、10セント投入すると、だいたいの場合カーテンが開く場面から始まり、デューク・エリントンやカウント・ベイシーが登場し1曲披露してくれるのだとか。フィルムリールは週に1、2度交換されるから、新曲がすみやかに覗き込む観客に提供されたらしい。UCLAのフィルム・アーカイヴなどに大量に残っていて観ることができるとのこと。
http://www.youtube.com/watch?v=i2oJUlpm6uI&sns=em
Youtubeにもいくつか。これはsoundiesを解説する動画。じっくり観たい。
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このBlog、過去の投稿に貼っていた写真のリンクに不具合があり、うまく表示されない…。コツコツ直していくけど、直せるかなぁ…。