CINEMA STUDIO28

2015-02-19

Cours du soir

 
 

土曜から、早稲田松竹でジャック・タチ!長篇2本&短篇3本のプログラム、豪華だな。全部、去年観たのでパスするけど、これきっと観終わる頃には、耳までTATI液ひたひた。

 


 
 
去年のジャック・タチ映画祭、せっせとイメージフォーラムに通い、都合がつかなかったのは流れた先の下高井戸シネマまで追いかけた。8月、夏の休暇前日に観た「ぼくの伯父さんの休暇」、まさにタイムリーで、いつもはヴァカンス映画でヴァカンス気分に浸った後、そうはいってもトーキョーにいる私、明日はお仕事です。って一気に現実に引き戻されるけど、この日ばかりは、あなたのヴァカンス楽しそうね?でも私も明日からヴァカンスですが?って高揚感開放感。
 
 
そして併映の「ぼくの伯父さんの授業」が、とんでもなく面白かった。
 
 
タイトルロールの背景は近代的なビル、なにやら授業が行われているらしい。入ってきた先生はジャック・タチ。神妙な顔つきで教えるのは・・・階段ボケについて。こう、ステップを上がりながら、つまづいてコケる。という一連の動作をいかにスムーズかつ効果的にキメるか。完璧な階段ボケの実現にあたっては、どの足から始め、何段目でどういう動作をして・・と秘訣は山ほどあって、気をつけないと、そもそもコケられない。もしくはコケすぎて惨事を招く。という良からぬ結果に至るのである。と、説く。
 
 
 
 
 
次に、柱ボケ。ぼんやり歩いていたら、柱にぶつかったよ。という一連の動作をいかに、わざとらしさを排除し効果的にキメるか。柱まで距離がある時は助走段階から準備し、かつ「そこに柱があるなんて、知らなかったよまったく」の表情を保たねばならない。あらかじめぶつかることを前提に歩くなんてもってのほか。タチ先生が手本を示し、生徒たちが次々に練習。
 
 
 
 
 
 
 
生徒たちはみんな、ジャケットを着た紳士たち。原題「Cours du soir」、そう、これは夜の学校なのだ。仕事を終えた後、学習意欲の高い紳士たちが夜な夜な集まる場所。何のために・・?という疑問は野暮というもの。
 
 
 
 
 
 
関西人の幼少の記憶として、クラスでおちゃらけた男子に先生がが言う「お前なんか行ける学校あらへん。吉本行け」という常套句はDNAに刷り込まれてるレベルで、はたして吉本ではどんな教育が?と想像してみたときに、案外、タチ先生の夜の授業みたいなのかしらね。そう考えると、チャーリー浜先生や、坂田利夫先生によるこんな授業が、夜な夜な大阪で開かれているのかも。
 
 
ジャック・タチ映画祭、すべてのプログラムを観たけれど、長篇では「パラ―ド」、短篇ではこの「ぼくの伯父さんの授業」が記憶に残ってる。芸人としてのタチを観られたことが幸せだった。関西人の血が騒いだ。