CINEMA STUDIO28

2015-05-16

1966 / HK

 
 
Blogは自分の領域なのでメモがわりに何も考えずに書くけど、連載の原稿はその映画館の歴史や閉館理由、映画についても可能な限り下調べする。「花様年華」、あれから映画館でも何度か観て、そのうちの1回はパリだったと記憶しているのだけど、ちょっと記憶が遠かったので、公開当時・2001年のキネマ旬報を借りて、主演2人や監督のインタビューを読んだ。写真を撮り忘れたまま返却してしまったけど、表紙はチャイナドレスではないマギー・チャンで、若かった。とても興味深い記事など発見したのでメモ。
 
 
監督だったか、トニー・レオンの言葉だったか忘れたのだけど、面白いな、と思ったのでノートに記録したこと。あの物語は62年〜66年の香港とその周辺を舞台にしており(ラストはアンコール・ワットで終わる)、監督自身、上海出身で5歳で香港に移住したらしいので、物語の起点は、幼少期の監督が観た香港の景色。そして66年は中国大陸で文化大革命が始まった年で、いわく「大陸から来た者たちが、香港人として生きねばならぬと悟った年」とのこと。
 
 
同時にこの頃、食生活にも大きな変化があって、それは日本がもたらした画期的な発明、インスタントラーメンと電気炊飯器。電気炊飯器は映画の中に登場していた。映画の中ではマギー・チャンが屋台に麺を買いに行く場面があったけど、それもきっとノスタルジックな風景でインスタントラーメンが普及する前夜の日常の行動だったということかな。
 
 
タイトルにもなっている「花様年華」は映画の中で流れる歌の名前で、ラジオから流れるのだけど、曲を紹介するアナウンサーも、既にリタイアした当時のアナウンサーを探し出して昔の番組を再現してもらったのだとか。そう考えると、香気漂う男女の物語、だけではなく、60年代香港の再現にも力を入れた、人の背景にきっちり「あの頃」を描いた物語なのだな。
 
 
下調べ中ずっと、借りてきたナット・キング・コールのあの歌が入ったアルバムを聴きながら机に向かってたのだけど、書き終わって最後に読み返すとき、ふとまたあの歌をかけてみたら、あの歌は映画を彩ってはいたけど、自分の文章には違和感があった。ということも、なかなか興味深い体験だった。