ルビッチ途中休憩中の今朝、久しぶりにゆっくり眠ったように思う。なにしろシネマヴェーラは日を追うごとに混んできているので、私もどんどん早起きになり、昨日なんて到着してみたらまだ開館してなかった…。
ゴロゴロしながら、映画を観て気になったことを「ルビッチ・タッチ」の本を開いて確認する。詳細なフィルモグラフィーが末尾に載っているのが嬉しい。脚本や美術、衣装についても名前が載っている。
私にとってルビッチの愉しみの何割かは、衣装を観ることで占められているのだけど、本篇のほうは衣装についての言及が少なくて残念。ルビッチがいかにして創られたか、を考える時に、ベルリンの仕立屋の息子。という生まれ育ちが興味深いと以前から思っていて、衣装は専門のスタッフが担当しているにせよ、全体のトーンをコントロールするのは監督なのだから、女優陣の眩い衣装はもちろん、俳優陣のスーツ、シャツ、襟の高さや形がいかにキャラクターを説明し、1㎜襟の高さが違うだけで印象はずいぶん変わってしまうのだ。ということを、知ってる人の手つきだわ…と思っていたのだけど、本を読んでいるとルビッチは家業の手伝いをしても仕立てに関しては足を引っ張るばかりで、すぐに帳簿係にまわされた、という記述があって笑ってしまった。そうだったのか…!でも、環境が人をつくるという意味では、仕立屋の息子・ルビッチはやはり興味深い。私の中では、鈴木清順監督が日本橋の呉服屋の息子、というのに似た納得感がある。
それにしても。女優陣の衣装、まるでこの世に素材は2種類しか存在しません。シルクとファーだけです。とでも主張しているかのよう。これまで観た中ではディートリッヒ主演「天使」の衣装がとりわけ素晴らしかった記憶があるのだけど、書籍によると衣装はトラヴィス・バントン!ディートリッヒと組んで「嘆きの天使」などなど、おそらく誰もが思い浮かべるディートリッヒのイメージはトラヴィス・バントンが創ったのだろうな、と強力なタッグを組んだ人。「天使」は今回の特集上映の最終クールでかかるので、目を開いてすみずみまで観なければ。