CINEMA STUDIO28

2015-05-12

The Lubitsch touch! / favorite images

 
 
ルビッチの感想を書く気になれないのは、振り返りたくない、終わってほしくないという抵抗の表れだろうか…。
 
 
断片的に振り返ると、古い映画を観る時の密かな楽しみとして、あ、合成してる!って明らかにわかるシーンを、合成楽しいなぁ!と、ニヤニヤしながら眺めるのが好きで、あの古典的な技法はスクリーン・プロセスと呼ばれるものだろうか。車中シーンでよく用いられるけど、「青髭八人目の妻」ではフレンチ・リヴィエラの海のシーンの合成っぷりを観ることがあの映画を観る理由の何割かを占める。女に近づくために、ゲイリー・クーパーが水上スキーのような道具で近づいてくる合成、撮影風景を想像しながらニヤニヤ。ささやかすぎる楽しみ…。
 
 
 
 
そして本人からの注文が多いのか、スター女優の出る映画にありがちなこととして、女優にライトを当てすぎるがゆえに、相手役の俳優が女優に近づくシーンで、俳優の顔の一部にもライトが当たり、女優は燦然と輝き、俳優は月の満ち欠けのような写りになる…のを観るのも好き。
 
 
「天使」のディートリッヒにおいては徹底して強いライトが当たっており、ディートリッヒ特有の頬の窪み、アーチ形の眉など顔の陰影をドラマティックに強調するのだけど、ライトの強さゆえにつけ睫毛の影がくっきり目の下に出てて、どんな場面でもまず、睫毛の影を確認してから演技を堪能する、という順番で観ていた。
 
 
現実世界にこんな風景はないし、こんな影のできる人はいないけれど、輝かしい存在を輝かしく撮ろうとする心意気が、生身の人間をスターに仕立て、時間が経った現在でもその輝きを享受できる、と考えると、映画は虚構。虚構最高!と、いつも思う。