3月?4月?イメージフォーラムで。エドワード・ヤン「恐怖分子」公開にあわせて「光陰的故事」も上映された。1982年の台湾映画、4人の若手監督がそれぞれ1話ずつ担当したオムニバス映画。一話ごとに60年代→80年代と過去から現代に近づき、主人公も小学生、中学生、大学生、若夫婦と年を重ねる。2007年、東京国際映画祭でのエドワード・ヤン監督追悼上映で初めて観た以来の観賞。
第1話「小恐竜」(監督:タオ・ドゥーツェン)、小学生の男の子の学校・家庭生活。60年代の台北の風景なのか、物語の舞台になったエリアが郊外なのか、高層ビルがなく、のどかでレトロな家庭風景。母親の着ているチャイナドレスが、ざらっとした木綿ぽい素材で生活感を漂わせながらチャイナドレスの色気もあって素敵。友達が北京でああいうのを仕立てたと話していたので、私も仕立てたい。映画の感想になってないけど・・。
第2話「指望」(監督:エドワード・ヤン)、中学生の女の子。遊び人らしきお姉さんがいる。母子家庭なのか、家の中に女しかいない。家計のため、離れの部屋を大学生の下宿として貸しているらしく、そこを爽やかな大学生男性が借りることになり、女系家族のバランスが崩れていく。画面の中心に少女をとらえたアップのショットから物語は始まり、同級生だけど女の子のほうが背が高くて、男の子は小さくて、衣服もぶかぶかで自転車に乗れなくて練習しているのだけど、そのうち少年はあっという間に背が伸びて、声も変わるのだろう。
第3話「飛蛙」(監督:クー・イーチェン)、大学生の男性。寮のような場所にみんなで住んでいて、大学対抗?のような謎のスポーツの勝利に向けて燃えている。最後のスローモーションといい、すっごく変な映画観た!って2007年観た時に思って、今回もやっぱり、すっごく変な映画観た!って思った。
第4話「報上名来」(監督:チャン・イー)、団地のような建物に引っ越してきたばかりの若夫婦。共働きで、妻が先に家を出て、夫は新聞を取りに玄関まで行くのだけど、オートロックっぽい扉が閉まってしまい、パンツ一丁で路上に放り出される。建物の壁面をよじ登るパンツ一丁の男のイメージが脳裏にこびりつき、今回「光陰的故事」を再見する前、どんな映画だったっけ・・って遠い記憶をたぐり寄せてみた時、第3話のすっごく変なラストシーンと、第4話のパンツ一丁でうろたえる男のイメージが真っ先に思い浮かんだ。私の脳は変なイメージほど深く記憶に定着するのだろうか。
4つ並べて観てみると、確かにエドワード・ヤンの第2話が圧倒的に完成度が高いのだけど、残り3作の荒削りながら台湾の都市生活者や、ノスタルジックな少年時代を扱った作品もそれぞれに見どころがあって楽しいオムニバス。エドワード・ヤン「指望」は制服を着た少年少女、小柄な少年・・・などの登場人物や撮影のトーンに、その後のクーリンチェ少年殺人事件に繋がる芽を感じさせるところもあって、改めてクーリンチェを観たくなった。「恐怖分子」リバイバルの次は、クーリンチェリバイバルの奇跡、願わずにはいられない。