身動きとれぬ時期だけど、そういう時ほど妄想は広がるもので、遠方の友人から早くも夏の予定について打診があったので、あちらこちらの土地に思いを巡らしている。うまくいけば、小津的ツアーを敢行することになりそうで、それまでの時間、小津スタディに励もうと思う。
私は同行しない旅程だけど、教えてもらった尾道の料亭旅館・竹村家は、「東京物語」撮影時、監督、俳優たちが宿泊した場所で、撮影にも使われたとか。写真を見る限り、完全に映画の世界だなぁ。当時、松竹の脚本家・柳井隆雄のいとこが経営していたらしく、映画撮影に協力的だったことが縁が生まれた理由だとか。
じゃらんを見ていると、部屋別に、小津監督、原節子、香川京子が泊まった部屋、と書いてある。
いつか必ず行く場所として、やっぱり小津監督の泊まった部屋に泊まりたい!DVDが備えてあって、ゆかりの部屋で観られるらしい。
写真はパリのシネマパンテオン。ユスターシュ「ママと娼婦」を観に行ったら、別の上映室で「東京物語」がかかってて、そちらは観なかったけど、左下にポスターが小さく映ってる。 仏題はVoyage à Tokyoといって、この映画館ではなく、パリに着いたばかりの頃、部屋の近くにあった日本文化会館での小津特集で人生何回目かの「東京物語」を観た。
亡くなった夫のことを、この頃は忘れてる日も多い。私はずるいんです。と泣き出した原節子に、東山千栄子は腕時計を差し出し、原節子は受け取りながら「すみません」とさらに泣く場面、仏語の字幕は「merci」になっていたのを観て、「すみません」って、訳しにくい言葉だな、と思いながら、翻訳で零れ落ちるものはいたしかたないとしても、原節子は「ありがとう」とは言ってないぞ・・!ありがとうって言う女とすみませんって言う女じゃ、大違いじゃないか!とj声を大にして主張したくなった。
あれから「東京物語」を観ていない。小津スタディの一環として、再見しなければ。