CINEMA STUDIO28

2015-03-08

The lesson

 
 
シネマート六本木で。東京国際映画祭アンコール上映会のラストは、ブルガリア映画「ザ・レッスン/授業の代償」。学校の先生が銀行強盗をするまでの経緯が丁寧に描かれる。実際に、ブルガリアで学校の先生が銀行強盗をした事件が数年前に起き、新聞で事件を知った監督が想像を膨らませたフィクションなのだとか。
 
 
 
 
あらすじ程度は頭に入っていたので、冒頭、「私は財布を盗まれました」と黒板に英語で書くシーンから始まってドキドキ。ラストも黒板のチョーク音で終わったけど、何を書いたかは映されず暗転した。
 
 
去年、映画祭のコンペでは「紙の月」とこの映画が、世間的には堅いイメージの職業に就く女性が犯罪に手を染める物語で共通しているとし、そんなこと想定してなかったのにカブってしまった!ということだったけど、両方観てみても、似てるのは設定の部分だけで随分違う物語だな、と思った。「ザ・レッスン」、教師が銀行強盗するのは家賃を支払わないと強制立ち退きにあう追い詰められ方で、その対処法として教師は無私な動きを見せる。その意味では「紙の月」とは欲望のベクトルは真逆。
 
 
ただ、どちらの映画も主人公の抜き差しならない悩み…「ザ・レッスン」は金銭問題、「紙の月」は空虚感と贈与欲求にそれぞれの夫がまるで助け舟を出してくれず、脅威の鈍感力を発揮するところは共通していた。「ザ・レッスン」、ブルガリアでは教師の報酬は低いのか翻訳の副業までしても生活は困窮してるのに、夫、働きもしない…。なのにサラ金に手を出した妻に「あいつらがどんな奴らか知ってるのか!内臓までとられるんだぞ!」と感情的に騒ぐシーン、ちゅうかお前も働けよ!と冷たい目で画面を眺めてしまった。その後のトークで、映画祭のティーチインで夫の存在について質問した際は、主演女優が「あれは私の実際の夫で、ブルガリアでは私よりずっと有名な俳優なのよ!」と答えたきりで、何故、夫が働かず、妻も愛想を尽かさないのか、という疑問については答えがなかったらしい。
 
 
しかし2本の映画、主人公はどちらも先を読む能力はやや欠如しているものの、ひとつひとつの決断は己の幸せを求めて最上の選択をしたと信じ込んでいるに違いなく、ボタンのかけあわせひとつで人生は大きく狂うのね…くわばらくわばら…と思った。
 
 
上映後のトークでは「紙の月」の吉田大八監督が登壇され、矢田部プログラミングディレクターに「似た映画選びやがって…」と事あるごとにつっかかる的ジョークが楽しかった。観客のみなさんで、両方観た方から感想を…というフリには「そんな怖いことやめましょうよー」とおっしゃっていたのがお茶目だった。
 
 
私の貧困なイメージではブルガリアといえばヨーグルト程度のイメージしかないのだけど、学校の食堂のような場所で、教師が買う瓶に入った白い飲み物…飲むヨーグルト…?おお、ブルガリア!それ、飲みたい!と思ったのだった。